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異世界建国記  作者: 桜木桜
第九章 第一次ポフェニア戦争と王太子
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第二百九十二話 戦後復興Ⅳ

 贅沢は敵だ。


 急に戦時中みたいなことを言いだしてどうしたのかと、思うかもしれないだろう。

 別に戦争は発生していない。

 

 ポフェニア戦争は一年前に集結したのだ。

 したんだけど……



 「いやはや、それにしてもお金がないねえ」

 「国王の妻が内職するとは、前代未聞」

 「返す言葉もございません」


 財政難に悩まされている我が国には、現状俺が自由に使えるお金は殆ど無かった。

 とにかく、復興に資金を費やさなければならないのだ。


 そんなわけで……

 極限まで王室予算を削った。


 「でもまあ、良かったじゃん。私の香水作りと香油作りが軌道に乗ってきて」

 「本当だ、ユリア様様だよ」


 俺はユリアを抱きしめた。

 ユリアは嬉しそうに笑みを浮かべた。


 王室の広大な土地を使って、花を育てて……

 それを香水・香油に加工して販売する事業がようやく軌道に乗り始めたのである。


 ユリアの作った香水と香油は匂いがとてもよく、また香油は美容にも良いと富裕層の間で評判だった。

 一応言っておくと、開発したのがユリアなだけで作っているのはユリアではない。


 多くが見習い呪術師である。

 見習い呪術師は小遣いを稼ぐことができ、我々は低賃金で雇える。

 winwinの関係だ。


 師匠から独り立ちしていない見習い呪術師は、殆どお金を稼ぐ手段がなく、生活が苦しいのだ。

 

 幸い、香水と香油は言われた手順道理に作るだけなので見習いでも作れる。


 「でもさ、なーんか、おかしくない? キリシア人商人の方が私たちより今、良い暮らししてるよね?」

 「ははは……甲斐性が無くてすみません」

 「ま、まあ……国全体としては富んでるし。ほら、国家の父って言うじゃん? 国全体を家族と考えれば、凄い甲斐性だと思うよ、うん」


 ユリアは苦笑いを浮かべる。

 そういうユリアが着ている服は全て、亜麻と羊毛で出来ていた。

 今、彼女が持っている服は全て亜麻と羊毛である。


 テトラが着ている服も同様に、亜麻と羊毛だけだ。


 絹やアラニャ・セーダ(蜘蛛の絹)の服は全て売り払ってしまったのだ。

 多少、戦費の足しにはなった。

 

 ちなみにアラニャ・セーダ(蜘蛛の絹)の宣伝はしなくていいのか?

 と思うかもしれないが、すでに多くのキリシア人の富裕層が買い求めているので宣伝の必要性はない。


 「そう言えば……バルトロの奥さん、絹の服を着てたよ」

 「何? それは許せん。バルトロに苦言を言っておこう」


 絹はダメだ。

 あれを買うたびに我が国から金や銀が流出する。


 麻とは言わないから、亜麻か羊毛を着ろ。

 

 と、言っても着る奴はいるんだけどね……


 「ねえねえ、私は?」

 「テトラの稼ぎも凄い助かってるよ。ありがとう!」

 

 俺はテトラも同様に抱きしめてやる。

 先程からずっと、こちらを羨ましそうに見ていたのだ。

 こういうところは昔から変わらない。


 うん、本当に可愛い。


 「まあ、今はユリアの方が売上は上だけど、すぐに追い越すよ」

 「やれるものならやってみれば?」

 「一々挑発するなよ……」


 俺は二人を諌める。

 テトラが新しく開発したのは……家庭用照明魔術具という代物である。

 

 簡単に説明すると、魔石を埋め込むと魔術が発動して辺りを照らしてくれるという代物だ。

 まあ、元々光を灯す魔術ならばあったのだが……今度はそれを家庭でも気軽にしようできるようにしたのだ。


 ちなみに一つ金貨十枚。

 高いなあ……

 

 とはいえ、やはり買う者好きはどこにでもいるのだろう。

 これがそこそこ売れている。


 今度、クセルクセス帝に献上しようかと考えている。

 東方なら金持ちが大勢いるし、たくさん売れるかもしれない。


 魔術は現状我が国だけの技術なので、独占販売できる。

 十数年でコピーされちゃうかもしれないけどね。

 だが、技術とは必ずパクられる運命にある。


 要するにその時までにこちらがリードしていれば良いだけの話だ。

 金になるならば、研究予算はいくらでも割くつもりだ。


 「陛下、陛下!! 私はどうですか!!」

 「おう、アリスか。お前の糸にも助かってるよ!」


 アリスが天井から降りてくる。

 俺はアリスも同様に抱きしめてあげた。ついでに頭を撫でる。


 美しい金髪がサラサラして心地よい。


 アリスは口から糸が出せる。

 アリスの糸は普通の蜘蛛糸よりも、ずっと高品質なので……かなり高く売れるのだ。


 加えてアリスが自分で編むので、人件費が掛からない。

 

 しかし気になるのはあれだけ糸を出して大丈夫なのか?

 という疑問である。


 鶴の恩返しの鶴さんは日に日に痩せていったみたいだが……

 アリスは痩せる気配がない。


 まあ子供じゃないんだから、自分の体調は自分で判断出来るだろうけど。

 

 しかし……

 まさか、金髪美女の口から出た糸で出来てるとは、着てる人達は絶対に思わないよな……


 これを公表したらどうなるんだろうか?

 唾液で気持ちが悪い、ということで価値が下がるか……もしかしたら金髪美女の口から出た糸ということで、逆に上がる可能性もある。


 まあ、下手なことはしない方が良いか。



 「ところで、アルムス。ロゼル王国の内戦はどうなってる?」

 「ほぼ、クリュウ将軍の勝ちが確定した感じだよ」


 すでにクリュウ将軍は首都を包囲している。

 クリュウ将軍率いる五万に対し、首都を守る兵は五千。


 よほどのことが無い限りクリュウ将軍が勝つだろう。


 「バルタザール将軍からは亡命の打診を受けてるよ」

 「首都を包囲されているのに、やり取りできるの?」

 「抜け道があるみたいだ。良いよな、うちも作った方が良いかもしれないな」


 あまり考えたくはないが、我が国でもそういうことが起こるかもしれない。 

 さて、目下の悩みはバルタザール将軍とロゼル王国の王子を迎え入れるか迎え入れないかだ。


 迎え入れると、ロゼル王国とは完全に敵対関係になるので……

 戦わざるを得なくなる。


 少し前までは「やってやるぜ」という感じだったのだが、やはり今は内政に集中したいという気持ちがある。

 ……だけど、戦争で国内の不満を外に向けるという手もあるんだよね。


 あまりやりたい手ではないけど。

 正直、北アデルニアが手に入ると現状の諸問題は殆ど解決する。


 今、不満を抱いている平民たちに土地を分け与えれば彼らの不満は無くなるからだ。

 加えて戦争で奴隷が得られるから……

 トリシケリア島やサルディア島の開発で奴隷の価値は急上昇中だったりする。


 もしやるんだったら、バルタザール将軍は要らないにしてもロゼル王国の王子は欲しい。

 クリュウ将軍もバルタザール将軍派を完全に駆逐したわけではなく、地方には大勢残っているのだ。

 彼らの力を借りられれば、戦争も思うようにいく。


 中々悩みどころである。


 一応、イアルたちと協議して三日以内に結論を出す予定だ。

 

 「まあ、アデルニア半島の統一はアデルニア人の悲願だからね」

 「ああ……やはり支配されて奴隷のように扱われているアデルニア人を救おう!! って声は国内でも連邦内でも大きいんだよ。正直、その声を無視するわけにはいかないんだよね」


 割と俺の人気に直結する。

 国民の人気というのは中々大切だ。


 我が国は国民=軍人なのだから、普通の国よりも国民からの支持は必須なのだ。


 「キリシア人はどうなの? 戦争は嫌がるんじゃない?」


 テトラが尋ねる。

 俺は少し考えてから……答える。

 

 「人による、って感じだな。戦争による混乱を嫌がる商人は大勢いる。だけど、統一による商圏拡大を喜ぶ商人も大勢いるんだよ。北アデルニア半島が手に入れば、北アデルニア半島は無論ガリア南部も商圏になるからな」


 ガリアは豊かな土地……

 とは言えないが、そこそこ農業も盛んだし、毛皮などの交易品もある。

 

 それに中心部や北部の情報は殆ど無い……言い変えると、フロンティアだ。

 まだ誰の縄張りでもない土地で商売をして、成り上がりたいと思う商人は大勢いるのだ。


 まあ基本的に大商人は戦争を嫌がり、中小商人は歓迎していると言ったところか。

 大商人たちは敢えて危険を冒す必要が無い。


 「ふーん……いろんな意見があるんだね、同じキリシア人でも。まあ、アデルニア人もバラバラだし、当たり前か。バラバラ、と言えばポフェニアだけど……」

 「いくら何でもその認識は酷くないか?」

 「事実じゃん。……今、どうなってる?」


 テトラの問いに……

 俺は最近上がった報告書を思い出しながら、答えた。


 「もう、ポフェニアは無視して問題ない。あの国にこちらの領土を狙うだけの野心も無ければ体力もないよ。今、ポフェニアは傭兵の反乱を鎮圧したベルシャザル・バルカが主導しているけど、あいつも今はヘクスパニアでの領土拡大に勤しんでいる」

 

 最初からそっちにしておけよ。

 と言いたい。


 そうすればあれほどの大戦争には成らなかったのだ。

 トリシケリア島の完全占領など、欲を見せるから悪い。


 まあ今は問題ないとしても、これから牙を剥く可能性がある。

  

 そんなわけで……

 ヘクスパニア北東部にあるキリシア系都市とは同盟とはいかないまでも、友好関係を結んでいる。


 常にベルシャザルの動向はその都市を通じて入ってきているし、最悪その都市で領土拡張を押し止める予定だ。


 ……ロゼル王国とポフェニアの二正面だけは避けなくちゃならないからな。

 ロゼル王国をやるなら、やはり今か。


 となると……


近いうちに短編を投稿できたら良いかな、と思ってます

女の子主人公・青銅器時代・ネット通販的能力

みたいのです

気が変わったら没になりますが

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