表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界建国記  作者: 桜木桜
第九章 第一次ポフェニア戦争と王太子
274/305

第二百七十四話 第一次ポフェニア戦争 自然休戦Ⅱ

最近、遅れるのがデフォルトになっているような……

 「ユリア……助けてぇ……もう、嫌……」

 「王様が何言ってるの……」


 そう言いながらも、ユリアは抱き付いた俺の頭を撫でてくれた。

 そんなユリアのお腹は膨らんでいた。

 俺の子供がいるのだ。


 あと、三か月程度で生まれるだろう。

 丁度、冬が明けるころ、春の予定だ。


 「正直、どっちを選択しても間違いな気がするんだよねえ……」

 「アルムスとしては、どう考えているの?」


 俺は少し考えてから、答える。


 「うーん……勝てる算段があるなら、主戦かな……イアルたちの言う通り、ポフェニアは信用できないんだよね。それに、勝てた時に得られる利益が大きすぎる。和平も……同じことの焼き増しを続けることになりそうなんだよ。俺としてはロゼル王国との本格的な戦いの前に、南は斬り伏せて安定させておきたいんだ。ただ……勝てる算段ってのが問題だな。そもそも勝てたとしても、得る物より失う物の方が多かったら最悪だし」

 「なるほどね……つまりどちらも一長一短、ってこと?」

 「そうだね」


 まあ……

 現実問題としては和平しかない、と思ってはいるのだが……


 「ねえ、アルムス……」

 「何だ?」

 「その……言い難いんだけど、さあ……」


 ユリアは頬を少し掻いてから、俺に言う。


 「ライモンドたち、和平派から……陛下を説得してくれって……そのぉ……言われてるんだよね……」

 「あいつら、ついに妊婦まで駆り出したか……」


 確かにユリアはロサイス氏族だし、俺の妻だから引き込むのは当たり前だが……

 でも、ねえ……

 普通、妊婦を政争に参加させるか?


 「まあ……私には既得権益も何も無いしさ。別に和平でも戦争でも……私個人としては、どちらもでも良いんだけど……一応、一言言えって言われたからには……ね? 付き合いもあるし……」

 「いや、良いさ……分かってるよ」


 ユリアは俺の妻だが、その前にロサイス氏族だ。

 ロサイス氏族としての立場も求められる。


 それは致し方が無い。


 「はあ……何か良い解決策は無いモノか……」


 と、俺が悩んでいると……


 「アルムス」

 「テトラか、それに……ノナも一緒か」


 テトラは新しく生まれた赤子……

 ノナを抱きながら、俺の方に歩いてきた。


 ノナは最近生まれた、俺とテトラの……娘である。

 もう妊娠は手慣れたモノで、あっさりと生まれた。妖精さんには頭が上がらないな。


 「悩んでいるところ……悪いんだけど……」

 「あ、もう良いぞ。分かった……イアルやキリシア人、アス氏族に言われたな?」


 俺が尋ねると、テトラはコクリと首を小さく縦に振った。


 イアルたちは、ユリアを動員したライモンドに対抗してテトラを駆り出したようだ。

 これで互角というわけか……


 いや、関心している場合じゃないか。


 「テトラはどう思う?」

 「特に……あまり興味はない。アルムスの決定が全て」

 

 テトラらしい解答だな……


 「ユリアも?」

 「そうなんだよねえ……ライモンドたちに頼まれると、さ。私も一応……言わなくちゃいけなくて」

 「……妊婦を駆り出す? 普通」


 テトラも妊婦を駆り出したライモンドに対しては疑問を持っているようだ。

 まあ……

 許してやって欲しい。

 あいつも必死なのだろう。


 ライモンドもイアルも……

 ロマリア王国のことを第一に考えてくれている、大事な家臣だ。


 「まあ、注意はしておくさ。両陣営にね。家庭に政争を持ち込まないでくれってね……ああ、そうだ……アリスはいるか?」

 「居ますよ」


 とう!!

 とでも言うようにアリスが天井から姿を現す。

 もういい加減、驚かない。


 「お前は何か言われたか?」

 「両派閥から、陛下に一言おっしゃってくれと言われました。……でも、陛下はお悩みのようですし。私如きの意見なんて、陛下を無駄に迷わせるだけかと思い、言いませんでした。……ユリア様やテトラ様のように、私に付き合いはないですから」

 「そうか……しかし、お前まで巻き込まれるとはな」


 アリスは俺の妾で、政治的立場はない。

 それに元奴隷だ。


 ハッキリ言って、政治的には一番遠く離れた存在だが……

 その中立さに目を付けられたようだ。


 まあ確かに、アリスがユリアかテトラに付けば家庭内では数で優るからなあ……

 

 両方とも考えるのは同じみたいだな。


 「政治というのは大変なんですねえ……陛下、もしよろしければバルカ家の首をいくつか取ってきましょうか?」

 「いや……さすがにな……お前に死なれたら俺は立ち直れないよ」


 暗殺はそう簡単に成功するものではない。

 国内ならともかく、外国に侵入して暗殺は難しいだろう。


 それに……

 殺したところで、止まるか分からん。

 余計、情勢が悪化するかもしれない。


 「ああ!!! 本当にどうしよう……もう、分からんよ……頭痛いし……」


 俺はズキズキと痛む頭を押さえる。

 俺は偏頭痛持ちじゃない。

 これは……『大王の加護』の副作用だ。


 俺の脳裏に……

 かつてマーリンが言った忠告が浮かぶ。


  『一つ、忠告するわ。その加護に頼り過ぎるのはやめなさい。『ロサイス王』と『アルムス』の区別がつかなくなるわよ?』


 ……今の俺にちゃんと区別はついているのだろうか?


 「……大丈夫?」

 「……ああ、大丈夫だ。俺は俺だしな」


 今のところ、俺の考えに変化はない。

 少なくとも、民衆依りに変わっている……ということにはなっていないだろう。


 もしそうなら、アズル・ハンノの講和案を破り捨てている。

 

 耐性が付いた……

 ということか、それとも……


 国論が二分している、というのもあるのかもしれないな。


 「で、結論はどうするの?」

 「取り敢えず、アレクシオスの意見がまだだからな……」


 ロンやソヨンたちにも意見を尋ねたが……

 彼らもバラバラだった。


 どちらかと言うと、ロンたち将軍は和平派。

 ソヨンたち呪術師は主戦派、という感じだ。


 ……軍人よりも呪術師の方が好戦的というのもどうなんだろうか?


 「アレクシオスの意見で何か変わるの?」

 「アレクシオスよりバルトロの方が信用あるなあ……私個人としては」


 テトラとユリアがアレクシオスに対する印象を言う。

 二人にとっては、付き合いの長いバルトロの方が信用できる、というのは分かる。


 あいつと俺たちは子供の頃からの付き合いだ。

 それに比べて、アレクシオスは新参だ。

 

 ……しかもポフェニア人で、今戦っている敵将全員と身内である。


 というか、凄い状況だな。

 バルカ祭りじゃないか? トリシケリア島は。


 と、そんなアホなことを考えていると……


 「国王陛下!! アレクシオス殿がご帰還されました!!」

 「よし……玉座の間に呼べ」


 さて……

 この辺りで結論を出さない、な。





 

 玉座の間。

 重臣たちが見守る中、アレクシオスは口を開いた。

 

 「正直なところを言うと、僕としてはどちらでも構いません。僕は陛下の猟犬です。陛下が狩れと言われたモノを狩ります。狩るな、と言われれば止まりましょう。……それを考慮に入れた上で……」


 アレクシオスは俺に笑みを浮かべる。


 「陛下がお求めになられている、答えを言わせて頂きます」


 答え?

 俺が求めている?


 「陛下のお考えはこうでしょう? 『ポフェニアが倒せる保障があるのであれば戦いたい、だが倒せないのであれば和平しかない』ですね?」


 ……

 その通りだ。


 「まず、ポフェニアを倒せる保障、ですが……実際のところやってみなければ勝てるかどうか分かりません。しかし……『勝つ』ことは十分に可能です。ええ、勝算は高いです」


 アレクシオスはバルトロと全く違う意見を言った。

 バルトロは相手が戦ってくれないと言ったが……


 それについて、俺がアレクシオスに聞くと……


 「陛下、それは陸上での話です。……すでにトリシケリア島での戦いは戦力のぶつけ合いから、消耗戦に移り変わっています。早い話、どちらが先に敵の補給を潰せるか。それがカギです……つまり陸上での勝敗は些細な問題でしょう」


 それはつまり……

 海戦で勝敗を決しろ、と?


 「アレクシオス、お前も分かっていると思うが……我が国の海軍力は……」

 「先入観に囚われすぎです、陛下。ポフェニアは海洋国家。だから海軍は強い。ロマリアは大陸国家、だから海軍が弱い。……というのはあまりにも印象に囚われすぎです」

 「だが……事実ポフェニアの海軍は強い。一方、我が国には海軍すらない」


 それは紛れもない事実だ。

 しかしアレクシオスは首を大きく横に振る。


 「良いですか、陛下。ポフェニアが最後に戦ったのは……ペルシス・キリシア戦争です。それ以来、ポフェニアはまともな大規模海戦を行っていません。あれは素人の集まり、つまり我が国と練度の上では変わらないのです」

 「だが船は?」

 「船は作れば良いではありませんか、陛下。すでに我が国にはポフェニアと同じ性能で、ポフェニア以上に大量の船を建造する国力があります」


 確かに……

 船は作れる、それも大量生産が可能だ。


 だけど……

 

 「ポフェニアだって同じじゃないか?」

 「陛下、ポフェニアの人口は精々百万です。我が国はどうですか? 三百万近くあります。生産力は三倍です。それに……」


 アレクシオスは付け足す。


 「船に必要不可欠の材木がポフェニアは圧倒的に不足しています。ポフェニアは少し南に下れば、大砂漠が広がっているんです。我が国ほど、緑が豊かじゃない。しかも農場を広げたり、商業用の船を作る過程で森林伐採が進んでいます……森林は国土の半分もないでしょう。一方我が国は? 七割……いえ、八割以上が森林に覆われています」


 

 それは……

 考えもしなかったな。


 確かに……造船には木が必要だ。

 ……ポフェニア、ロマリア。双方の国をよく知っていて、そして誰よりも海に詳しいアレクシオスならではの視点。


 バルトロの言葉の意味も分かる。


 「肝心の海戦ですが……僕に率いさせて貰えれば必ず勝って見せましょう。僕は陛下の猟犬です」


 ……

 なるほど、よく分かった。


 これで方針も決まったな。


 「ペルシス帝国との同盟が結べれば、開戦する。出来なければ……講和だ」


最近、少し追い込まれてましてね

いや、いろいろあるんですよ。


話は変わりますが、実は「書きたいけどなろう受けしなさそう、するような調理方法が見つからない」という小説のネタがあったんですが、最近流行りのおっさんモノとの組み合わせが良いことに気が付きました。





聖女と勇者の娘が学園に入学するけど、その娘が心配で勇者も一緒についてきて、教鞭を取るというストーリー。ちなみに聖女の方は既に死んでる。

ちなみに主人公は勇者ではなく、娘の方です。

むさいおっさんより、美少女が主人公の方が書いてて楽しいので。


娘が「私、また何かやっちゃいました?」をやるたびに、勇者や勇者の同僚で教師やってる元仲間の賢者とか、学園長とかが「やっぱり聖女の娘だな。生き写しだ」「むしろバージョンアップしてるような……」「懐かしいなあ……よく壊されたっけ。というか、あの母子はうちの学園に何か恨みでもあるのかしらね?」とか、感動で涙を流す。


ハートフルほのぼのストーリーです。


ちなみにどのあたりでなろう受けしない要素があるのかというと、ネトラレがあったり、登場人物女性キャラの最低三人に強姦された過去があったり、魔女狩り拷問シーンがあったり、梅毒だったり、麻薬中毒だったり、魔王が割と良い奴だったから魔王殺した勇者が魔族側から見ると完全に悪い奴だったり、復讐するされる関係が複雑に絡んでたり、しかもそこに妙な血縁関係まで絡んでたり、父と娘の禁断の恋愛模様があったり、男同士の泥沼の女の取り合いがあったりする点ですね。


まあ、でも安心してください。

ほのぼのですから。


「私なんて、初体験十二歳で、相手は異端審問官よ」「私は初体験十歳で、相手は義父です。これは私の勝ちですね」「でも、洋梨入れられたことなないでしょう?」「いえ、それはないですが……」「じゃあ、私の勝ちね」

「妙に梅毒と麻薬に詳しいですね」「ええ、それが死因ですから」

「最近、娘の顔がますます母親に似てきて……あいつを見てると胸が苦しくなるんだ」「ありゃりゃ、それは恋よ、勇者。あなたも大変ね。取り敢えず、苦悩の梨があるけど食べる? 落ち着くわよ。痛みで」


という感じのブラックジョークが定期的に挟まれますが、まあ八割くらいはほのぼのハートフルストーリーです。




多分、いつか書く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がなろうで連載している他作品です
もしお時間があったらどうぞ
『三大陸英雄記~現代知識による帝国再建記~』
『蘇った真祖の放浪譚』
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ