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異世界建国記  作者: 桜木桜
第八章 南アデルニア統一と大王
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第二百七十話 第一次ポフェニア戦争 一年目 Ⅴ

 「さてさて、僕の敵は……ダヴィドとケプカか。うん、運が良いね」

 「……良いんですか?」

 「そりゃあ、良いさ。何しろ、セアル・バルカが相手じゃないんだからさ」


 アレクシオスに追随するのはロンである。

 それぞれ二万ずつ、合計四万の兵力を率いている。


 ちなみにバルトロに追随しているのは、グラムとロズワードだ。

 彼らも二万ずつ、合計六万の兵力を率いている。


 トリシケリア島をゆっくりと、左右(東西)から進軍して海岸線を全て制覇する。

 それがアレクシオスとバルトロの建てた戦略の概要だった。

 敵の連絡路と補給路を断つのだ。


 「しかし、兵糧の集まりが良いね!! やはりポフェニアは統治が下手くそだ」

 

 アレクシオスたちの進軍は非常に順調であった。

 というのも、キリシア系の都市が次々とロマリアの軍門に下っていったからだ。

 

 中には義勇軍として、ロマリア軍に参加しようとする者達もいた。

 もっとも、軍規が乱れるという理由で丁重にお断りしたが。


 その代り、彼らには自分たちの都市の防衛をして貰うことにした。

 これは非常に大きなメリットだ。


 ポフェニア軍が各都市に兵を置かなくてはならない一方で、アレクシオスたちはその防衛に殆ど兵力を割く必要が無いからである。


 結果、順調にトリシケリア島の各都市はロマリア王国の支配下に下っていった。


 「で、俺たちの目の前の敵はどうしますか?」

 「考えはあるさ。……実は各都市から、武器の代わりに牛を集めたんだよ」


 そう言ってアレクシオスはニヤリと笑った。






 現在、ロマリア軍はケプカ・バルカとダヴィド・バルカ率いる軍勢と鉢合わせし、睨み合いをしていた。

 ケプカ・バルカの率いる兵は二万、ダヴィド・バルカ率いる兵は二万。

 合計四万である。


 尚、残りの六万はバルトロを迎え撃つために別行動している。


 「ロン・アエミリウス殿。ここから東の内陸部に、トリシケリア島原住民の建てた都市国家がある。内陸部だから、大した兵力も無いし、彼らもポフェニアの支配には不満を抱いている。簡単に落とせるだろう。……一万、僕が兵力を割く。合計三万でそちらへ向かってくれ」

 「どういう意味があるんですか?」

 「その都市は規模こそ大した事は無いが……細い道で海岸部のキリシア系諸都市の繋がっている。丁度、今僕らと向かい合っているポフェニア軍の真後ろだ。つまり挟み撃ちにできるわけさ」


 つまりアレクシオスの作戦は……

 遠回りして敵を挟み撃ちにしよう、というモノだ。


 急がば回れ作戦、とでも名付けようか。


 「ですが……一万で閣下は大丈夫なのですか?」

 「大丈夫じゃないよ。だから、負けるのさ」


 そう言ってアレクシオスは笑い……

 アレクシオスの意図に気付いたロンも苦笑いを浮かべた。






 翌日、ロンはアレクシオスの命令通りに三万の兵力で東に向かった。

 アレクシオスの意図に気付いたケプカはダヴィドにその場を任せて、ロンを追跡するために立った。


 東ではロンとケプカの鬼ごっこが始まっていた。





 「さて、残るはアレクシオスの一万か……二万を相手に一万とは舐めてくれるね」


 ダヴィドはロマリア軍のグリフォン旗を睨みつける。

 ダヴィドはアレクシオスが嫌いだった。


 まず薄気味悪く、不吉なオッドアイ。

 そして自分よりも年下、弟の癖に優れた用兵技術を持っていることも気に食わない。


 何より、許せないのが……

 それだけの才能を持ちながら、敵方に寝返ったことであった。


 ダヴィドは自分がアレクシオスに抱いている感情が嫉妬であることを、敗者の感情であることを十分に理解している。

 だからこそ、だからこそ勝ちたい。


 そう思っていた。


 「アレクシオス……覚悟しろ!!」


 ダヴィドはアレクシオスの軍に総攻撃を命じた。

 兵力差は二倍。

 十分に勝てると思われた。


 「突撃!! ロマリア軍を殺せ!!」

 「傭兵風情に遅れを取るな!! 国王陛下への忠誠を示すのだ!!」


 ロマリア軍とポフェニア軍が激しく激突する。

 

 確かに数の差は二倍。

 だが練度、戦術、指揮官の能力はロマリア軍が優っていた。


 「ダヴィド兄さん、悪いが僕の方が用兵は上だ」

 「おのれ……二倍の兵力差があってこれか……っくそ、押し込め!! 敵は僕らの半分だ!!」


 しかし、ダヴィドも負けてはいない。

 ダヴィドとて、ポフェニアの優秀な将軍だ。


 徐々にアレクシオスが押し込まれていく。

 そして……


 「そろそろ、頃合いだね。退却!!」


 アレクシオスは退却命令を出す。 

 数の差を覆すことができなかったのだ。


 ロマリア軍は無様に逃げ出し、近郊の丘の上の都市に篭った。


 ダヴィドはすぐさま、それを包囲。

 斯くして、包囲戦が始まった。









 「ははは!! 気分が良いぞ!! アレクシオスに勝った!!」


 その夜ダヴィドは愉快そうに酒を飲み、鼻歌を歌っていた。

 長年、恨みを抱いていたアレクシオスに勝つことができたのだから、当然だ。


 すでにアレクシオスは袋の鼠。

 じわじわ嬲り殺しにするだけだ。


 「とはいえ、ロン・アエミリウス将軍の動向には注意しないといけないけどね」


 ロンがケプカの追跡を振り切り、ダヴィドの背後に周れば……

 形勢は逆転してしまうだろう。


 それだけは注意しなくてはならない。




 「ダヴィド将軍!!」

 「何だ?」

 「そ、その……気に成る情報があります」


 偵察を任されていた、兵士の一人がダヴィドに『気に成る情報』を伝える。


 「その……数週間前からアレクシオス将軍は各地で牛を徴発していたようです」

 「牛? 別におかしくはないだろ。荷車を引かせるための牛だろ? 何が気になるんだ?」


 食糧を荷車に乗せ、移動するには駄獣が必要だ。 

 それは馬や牛が用いられる。


 牛は速度こそ遅いが、しかし力が強く、馬よりもより多くの荷物を運べる。


 ダヴィド率いるポフェニア軍も牛に荷車を引かせていた。


 「し、しかし……あまりにも数が多いような気が致します」

 「……ふむ」

 

 ダヴィドは兵士から受け取った資料を読み、首を傾げる。

 アレクシオスが集めた牛の数はあまりにも多すぎる。


 異常な数であった。


 「まあ、気には止めておこう。報告、ありがとう」

 「はは!!」


 兵士はその場から去る。

 その後、ダヴィドは床に就いた。


 翌日からの戦いに備えるために。


 だが……

 この時、ダヴィドはもう少し考えるべきだった。


 アレクシオスの意図を。








 翌朝、早朝。

 まだ薄暗い時間。


 「さあて、諸君。ポフェニア軍の皆さまに素敵なモーニングコールをプレゼントして上げようじゃないか!! モーだけに、ね?」


 アレクシオスの冗談にロマリア軍の兵士たちはどっと、笑った。


 ロマリア軍の兵士たちの目の前には大量の牛。

 牛の角には長い槍、尻尾には油を沁み込ませた松明が取り付けられている。


 そして……

 背中には油や黒色火薬の詰まった樽が詰まれていた。


 「じゃあ、ソヨン殿、宜しくお願いしますよ?」

 「はい、分かりました!」


 アレクシオスの命令で、ソヨンたち呪術師が牛に呪術を掛ける。

 牛の正気を無くし、人を相手に襲い掛かるようにする。


 そして……


 「では……全城門を開け」


 ゆっくりと城門が開き、その城門の前に牛が並べられる。

 牛の尻尾の松明に火がつけられ……


 「じゃあ、牛さん……ごめんね……突撃!!」


 ソヨンが牛に仕掛けていた金縛りの呪術を解き放つ。

 牛は尻尾の熱を感知し、逃げるように丘を下る。


 予め、呪術で刷り込まされていた通りに牛たちは輪を描くように広がる。

 

 大量の大麻、呪術で正気を無くした牛は……

 真っ直ぐポフェニア軍へ襲い掛かった。

個人的に倶利伽羅峠は嘘で、中国故事をパクった脚色だと思う

だって、頭に火着けて進むとは思えないし

むしろ後ろに下がりそう


というわけで、アレクシオスの火牛の刑は田単verです

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