第二百六十五話 統治政策
一日は誤差の範囲やろ(適当)
騎兵の確保と共に、俺が同時並行でやっていたのは新たに手に入れた領土の統治だった。
というのも、今回の土地は今までの土地とは少々勝手が違う。
ロゼル王国、つまりガリア人に支配されていた土地なのだ。
この土地の人口は九割のアデルニア人と一割のガリア人で構成されている。
アデルニア人は半分奴隷の農奴、ガリア人はそれを使役する大土地所有者だ。
主に育てられているのは、貢納用の小麦。
そしてアデルニア人たちが主食とする大麦だ。
そう、主食が大麦なのだ。
アデルニア人は大麦を嫌う。
大麦は主に馬の飼料として育てられているからだ。
大麦は馬の食べ物。人が食べるモノではない。
無論、飢饉になればそんなことは言っていられないので大麦も食べるが。
だが、ロゼル王国支配下の北部では違うようだ。
食文化も違うが、言語も少し異なる。
我々の話すアデルニア語は、どちらかと言えばキリシア訛り……つまりキリシア語の影響を強く受けていて、キリシアが語源の単語も多い。
一方、北部ではガリア訛り、つまりガリア語の影響を強く受けている。
南部も北部も文法は同じだし、基本となる単語は同じだが……
一部では同じ意味で全く違う単語もある。
まあ、それでも同じ言語なので通じるには通じるのだが……
と、そんなわけで今までと大きく違うので、同様の統治が出来るとは思えない。
そこで……
「どういう方針で治めるか、意見をくれ」
俺は王城の一室に、イアルとライモンドを呼んだ。
まず、イアルが口を開く。
「確か、ここはロゼル王国支配下のアデルニア人への宣伝の場になるわけですよね? となると、今までと同様の統治……ガリア人地主を温存させる、というわけにはいきませんね」
「まあな」
一応、原則として我が国は侵略した土地の支配階層は残している。
キリシア諸都市の支配層は丸ごと温存されているし、アデルニア諸国も、抵抗せずに降伏した豪族や地主に関しては殆ど手つかずだ。
まあ、そもそも今回に関しては『抵抗せずに降伏した』わけでもないのでそのまま温存させるわけにはいかないが。
「やはり、ここはガリア人地主から土地を没収して、アデルニア人に分配するのが一番では?」
「まあ、俺もそれを考えていたけどね……」
ライモンドの提案に俺は頷く。
我が国の重装歩兵を支えているのは、自作農だ。
自作農の数が、軍事力のそのまま直結している。
だからこそ、農奴になっているアデルニア人たちを自作農に変える必要がある。
「地税は……まあ、暫く無税が無難かな? 三年間で生活基盤を整えて貰って、それ以降から兵役に応じてもらうのが一番か」
原則、我が国では武器は自弁だ。
しかし高価な鉄製武器を揃えるにはそれなりのお金が必要。
三年間、無税にする間にお金を溜めてもらい、鉄製武器を揃えて貰えばいい。
果たして、今まで戦ったことのないアデルニア人たちがどれくらい戦争で役に立つのかは、分からないが。
尻込みしてしまうかもしれないし、案外憎きガリア人と戦えると喜んで戦ってくれるかもしれない。
「問題はガリア人なんだよ、一割の」
「面倒ですね……まさか、殺すわけにはいきませんし」
「殺せば外交にも響きますからなあ」
アデルニア人を解放する。
という建前上、ガリア人地主から土地を奪ってアデルニア人に分配する必要がある。
これは絶対だ。
反乱分子であるガリア人の力を削ぎ、アデルニア人たちをロマリア王国に懐かせるためには必要不可欠。
だが……
問題はどれくらいの土地を奪うのか。
地主以外のガリア人はどうするのか?
ということだ。
全てガリア人が富豪というわけではない。
小作人として使役されているガリア人もいるだろうし、自作農として生活しているガリア人もいるだろうし、猟師をやっている者、商人をしている者、そして職人もいる。
彼らをどうするか。
それが問題だ。
「全て追い出してしまうのが、一番反乱のリスクを抑えられると思いますが?」
ライモンドが提案する。
一番手っ取り早く、簡単で、分かりやすい方法だ。
しかし……
「それをやれば、今後ガリア人たちの反発が激しくなるからな……地主階級からの反発は仕方がないとして……」
「では、こういうのはどうですか? 陛下」
イアルがふと、思いついたように手を打った。
「何だ?」
「まず、『一定以上の土地を持つ者』を地主と定義して、彼らから一定値以下になるまで土地を強引に買う。買う、というやり方ならば多少は反発を抑えられるかと」
「なるほど……」
低価格で買いたたかれるにせよ、それなりに纏まった金が入るのであれば死ぬまで抵抗する。
ということは無くなるか。
それに少しでも土地が残れば、暮らしておくこともできる。
「それと、土地以外の財産に関しては手出ししない。これならば、自作農や商人、職人たちが我が国に強い不満を持つことは無いはずです」
「まあ、地元経済が崩壊すれば後が面倒だしな」
商人は敵に回すと面倒だ。
彼らは情報網を持っている。
それに反乱がおこる場合、武器や食糧を秘密裏に集めることができるのは彼らだけだ。
「最後に、呪術師や職人、兵士たちですが……呪術師は追放とします。ロゼル王国の呪術師は忠誠心が強い。従う振りはするでしょうが……忠誠心は変わらないでしょう。兵士も同様です。問題は職人たちですが、彼らは首都に連行することをお勧めします。追放も死刑も勿体無いでしょう。ロゼル王国の鍛冶技術や毛織物を作る技術は我が国より上ですしね」
「なるほど、首都に連れてきてしまえば連中も何もできないか……」
我が国の製鉄技術は、キリシアの技術を導入した結果向上しつつあつ。
が、しかしそれでもまだまだ低いし鍛冶師の数も足りていない。
ロゼル王国の鍛冶師を首都に連れてくれば、生産力も上がるだろう。
「よし、それで行こう。……今回の土地は未知の領域が大きい。慎重にやろう」
「「はい!!」」
アデルニア人へ、土地を分配したことで俺たちは現地のアデルニア人たちに大喜びで迎えられた。
農奴の状態にあったアデルニア人たちは土地を得て、自作農となり、移動の自由や財産所有も認められたのだ。
また、ガリア人地主たちに理不尽に殴られることも無くなった。
何より、三年間の無税というのが多いに歓迎された。
厳しい搾取に晒されていたアデルニア人たちにとって、三年間無税の上に自分の土地が得られた。
というのは地獄から天国に上がったようなモノだろう。
一方、土地を没収されたガリア人地主たちの多くは、僅かに得た金を手に、ロゼル王国領へ移住したようだ。
今まで報復を恐れたのだろう、というのが俺の読みだ。
一応、ガリア人だろうとアデルニア人だろうと法の元に平等。
殺人や強盗は許されない。
とはしたが……俺の目が行き届くわけではない。
まあ、妥当な判断だろう。
ロゼル王国領には親戚もいるだろうし、ね。
一方、移住するだけのお金の無いガリア人自作農だが……
彼らには、武器を没収する代わりに兵役の免除を言い渡した。
ロゼル王国との戦いには役に立たないのは明白だ。
大人しくしてくれるだけで十分。
もっとも、その代わり兵役免除税を支払ってもらうことにはなるが。
そして、職人たちは首都へ連行。
家を用意する代わりに、鉄器や毛織物の生産を命じた。
これが新たな産業の芽になれば良いが……
一方、兵士や呪術師の追い出しには難航した。
一部の兵士や呪術師が、砦や山に立て籠り、抵抗したのだ。
ロゼル王国から外交官を呼び、説得させる羽目になった。
一応、外交的な立場を考えて彼らには立退料を支払っておいた。
雀の涙ほどの額だが……
まあ、支払わないよりはマシだろう。
もっとも、連中の一部は地面に叩きつけて帰っていったが。
気持ちは理解できるな。
その後、俺は治水工事に取り組んだ。
というのも、ロゼル王国の治水技術がお粗末なのかそれともお金が無かったのか分からないが……
川は氾濫し放題で、用水路はまともに整備されていないと酷い状態だったからだ。
行く行くは南部のアデルニア人を植民させるのだ。
こんな酷い状態では、植民など出来ないし収穫も期待できない。
そう言うわけで、軍隊を動員して治水工事。
ついでに、道路や橋などのインフラ整備。
そして砦の建設、修繕を行った。
治水工事に関しては、現地のアデルニア人たちからの受けが非常に良かった。
やはり、苦労していたようだ。
そして……
宣伝も忘れない。
商人たちをロゼル王国へ送り込み、ロマリア王国領となったアデルニア人たちの暮らしの変化の宣伝を行った。
土地は手に入る。
税金は暫く無し。
その上、治水工事までしてくれる。
これだけ、メリットがあるのだ。
……効果が無い、という事は無いだろう。
なんか、最近『勇者パーティーから追い出されたおっさんがスローライフを目指す』話が妙に流行っているようですね
悪役令嬢的な一ジャンルとして確立するのか……
まあ、しないような気がしますが
このビックウェーブに俺も乗るしかない!!
というわけで、俺も『勇者パーティーから追い出されたおっさんがスローライフを目指す』話を書きました
タイトルは……
すみません、嘘っぱちです
そんなもんは書いてません
おっさんじゃない俺にはおっさんの心理は分かりかねないので、おそらく書くことはないような……
まあ、自分がおっさんになる数十年後は分かりませんがね
少し前までは日間の五位までは確認して、流行りをチェックしていましたがここのところは殆どチェックしてないので、今のなろうの流行りは分かりません
まあ、おっさんが流行ってるってことは分かりますが
流行りって、乗ろうとして準備が終わったころには下火になってることが多いので、速度が大切です
自分は書き溜めてから吐き出すタイプなので、流行りには乗れません
どうでもいいですが、最近はTS転生モノのネタばかり浮かびます
もしかしたら凌辱系エロゲのメインヒロインにTS転生した主人公が、オークやゴブリンや触手と戦う話を書くかもしれません
ただ、絶頂すると強くなる能力を持ったTS転生聖(性?)女が魔王(触手)と戦う話もアリかなと、迷ってます
そこで、凌辱系エロゲのメインヒロイン(ジョブ:聖女)にTS転生した主人公が、絶頂すると強くなる能力を持って魔王(触手)と戦う話
なんてどうでしょうか?
難点はヒナちゃんのR18認定がよく分からんというところですね
絶頂云々は厳しいでしょう
というわけで、(話は変わりますが)実はビザンツ帝国をモデるにした内政戦記を書き溜めています。
(ちなみになぜ、ビザンツ帝国なのかというと、中東と西欧と東欧と北アフリカが舞台にできる一石四鳥だから。思いついた時は、我ながら天才かと思ってしまった)
主人公はアルムスにバルトロとアレクシオス足して、濃縮したような感じです
敵国の姫に向かって「服を脱いで這いつくばり、許しを乞え。雌犬」とか言うタイプの、他には見られないタイプの主人公です
果たして投稿できるのか?
いつぞやの中華モノと同じ、没になってしまうのか?
今のところは不明です
まあ、投稿するなら三月二十日かな……誕生日だし
期待しないで待っててください
あ、聖女のやつはほぼ間違いなく投稿しません
ちょっと書いたけど、ないわとなってしまった




