表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界建国記  作者: 桜木桜
第八章 南アデルニア統一と大王
261/305

第二百六十一話 第二次アデルニア人解放戦争

今回は忘れなかったぜ

 「少し、大きくなってきたな」

 「ふふん……私とアルムスの愛の結晶」


 俺はテトラのお腹を撫でる。

 もっとも、まだ妊娠が発覚してから四か月なので胎動は始まっていない。


 「今は一番流産しやすい時期だから、気を付けてね?」

 

 ユリアが心配そうにテトラに言うと……


 「大丈夫」


 何が大丈夫なのか、よく分からないがテトラはドヤ顔でそう言い切る。

 まあ、安産の加護もあるし……

 こればかりはいくら心配しても、仕方がない事ではあるが。


 「じゃあ、テトラ。行ってくる。ユリア、テトラをよろしく頼むよ」

 「うん、大丈夫。任せて」

 「行ってらっしゃい」


 ユリアとテトラは手を振ってくれる。

 さて……


 「アリス、行くぞ」

 「はい、陛下。……二人っきりですね?」


 うーん、まあ確かに二人っきりではあるな。

 ユリアとテトラはいないから、二人でいろいろ出来る。


 が、別にそれが目的ではない。


 「我らの同胞を救う戦いだ。気を抜くな?」

 「はい!!」


 まあ、アリスはゲルマニス人でアデルニア人じゃないが……

 この際、それだどうでも良いだろう。


 さて、始めるか。

 

 北ギルベッド王の国を救いに。

 







 二月。

 手筈通り、北ギルベッド王の国の豪族たちが一斉に蜂起した。


 そして我が国、ロマリア連邦に救援を求めた。

 

 我が国はロゼル王国へ、北ギルベッド王の国の自治拡大を要求。

 当然、ロゼル王国はそれを突っぱねた。


 宜しい、ならば戦争だ。


 予め、準備していた通りロマリア王国から三万。

 同盟諸国から三万。 

 加えて、アルヴァ王国の騎兵五千とロマリア王国の騎兵二千を加えた合計六万七千。


 総司令官は俺。

 その他指揮官として、バルトロとアレクシオスに加えてグラム、ロン、ロズワードの三人、そしてアルヴァ王のムツィオ。


 それは我が国が本気で攻め込もうとしていることを意味している。

 今まで、平和ボケしていたロゼル王国もようやく俺の意図の気付いたのか……


 本格的に軍隊の動員をしているようだ。

 さすがは大国。

 アデルニア諸国と比べると、遥かに手際が良い。


 だが、距離では遥かに我が国の方が近いし、我が国には張り巡らされた道路網がある。


 ロゼル王国が軍隊をまとめ上げ、出発したころには……

 すでに北ギルベッド王の国を我が国は占領した。


 「これは、これは……ありがとうございます。ロマリア大王陛下」

 「気にすることは無い。我らは同じアデルニア人同士だ。いろいろあったが、今は友人同士だ」


 俺は北ギルベッド王の手を固く握る。

 北ギルベッド王もまた、握り返してくる。


 その顔は……

 あまり嬉しそうではない。


 当たり前だ。

 ギルベッド王の国が分裂したのは、俺が原因なのだから。


 しかし、ロゼル王国よりはマシ。

 と北ギルベッド王は判断した。


 大切なのはそこだ。

 感情ではない。


 「国王陛下、ロゼル王国の勢力の駆逐、完了いたしました。この後のことでご相談が」


 バルトロが俺に声を掛けてきた。

 さて、これからが本番だな。


 「では、私はこれで。……これからも仲良くしていきましょう」

 「ええ、私も……逞しい友人が欲しいですから」


 逞しくなくなったら、友人ではいてくれないだろうな……







 「ロゼル王国の将軍はバルタザール……確か、アデルニア人解放戦争で出てきた将軍だな?」


 俺は密偵から齎された情報を整理しつつ、バルトロに確認を取る。


 「はい、そうです。何度か、戦いましたね」


 先のアデルニア人解放戦争。

 俺がこっそりと情報を流したことで、お流れになったが……


 その時に攻め込んできたのが、バルタザール将軍だ。

 

 反マーリン派の将軍。

 つまり、クリュウ将軍のライバルと言える将軍だ。


 その実力は……


 「クリュウ将軍ほどでは、ありませんね」

 「ほどではない、が?」

 「侮れない実力です。さすが、大国ロゼルの将軍と言えます。……アデルニア諸国の将軍とは、全く違う」


 陸軍大国ロゼル王国。

 北大陸の雄。


 その軍事力は、超大国ペルシスも一定の警戒を置くほど。


 その実力は張りぼてではない、と言ったところか。


 「情報によると、敵兵力は我々と同じ六万前後。しかし、騎兵の数が一万近くあるらしい」

 「厄介ですねえ。騎兵が我々より多いのは」


 アレクシオスは困ったように声を上げる。 

 今まで、ロマリアは敵よりも数の多い騎兵で圧倒して来た。


 しかし今回は……敵の方が多い。


 「黒色火薬で無力化できませんか?」

 

 ロンが提案するが……


 「それくらい、相手も対策をしているだろう。効果は薄いんじゃないか?」


 ロズワードが否定した。

 

 黒色火薬は確かに、初見ならば騎兵を無力化できる。

 だが、一度存在を知れば……対応は簡単だ。


 火薬の音くらい、呪術で再現できる。

 それで訓練を重ねれば、馬も驚かなくなるだろう。


 ロゼル王国とて、それくらいの対応はしているはずだ。

 

 呪術先進国なのだから。


 「騎兵で敵が優っているとなると……やはり中央突破、いえ斜線陣辺りでしょうか?」


 グラムが提案する。

 俺もそれがベストだと、思う。


 騎兵で敵が優っているのであれば、我が国の精強な歩兵で敵を圧倒するしかない。

 我が国の歩兵は世界最強。

 それだけは間違いない。


 「まあ、結論を出すのは早いですが……騎兵の数で敵の方が優勢な以上、歩兵で決着をつけるしかないでしょうね。もっとも、敵の数、陣形をこの目で見ない限りはどうにも」


 バルトロは肩を竦める。

 まあ、戦争は臨機応変に。


 敵の姿を見ない内に、戦術は決められない。

 それよりも戦略だろう。


 「で、陛下。どうしますか? 進みますか、踏み止まりますか?」

 「お前はどっちがいいと思う?」

 「個人的には、防衛の方が楽ですね。地の利を生かせますから。とはいえ、今回の戦争は政治的な判断も大切でしょう?」


 よく、分かっているな。

 バルトロは。


 「進むぞ。モデルケースが必要なんだ。我が国の支配下の方が、アデルニア人は良い暮らしが出来る、というね」


 農奴反乱など、そう簡単には起らない。

 だから、切っ掛けや明確な動機が必要になる。

 

 我が国がロゼル王国の領土の一部を手に入れ、そこに住んでいる住民が豊かになれば……

 ロゼル王国支配下のアデルニア人も我が国の支配下に入りたいと、思うようになるだろう。


 そして、ロゼル王国内部の密偵を使って宣伝する。

 とにかく、過剰に。


 ロゼル王国を悪者に仕立て上げ、ロマリア王国を正義の味方にするのだ。


 冷戦時代、ソ連ら共産主義国家のやった戦術と同じことをするというわけだ。


 要するに、プロバガンダ戦略である。


 「陛下がそうおっしゃるのであれば、軍人として勝利するまでですな」


 バルトロは困った、とでも言うように肩を竦める。 

 が、その表情には余裕がある。


 つまり、敵内部でも勝つ自信はあるという事だ。


 「敵はクリュウ将軍ほどの将器はありません。クリュウ将軍に劣るのであれば、十分に勝てます。それに……」


 バルトロはチラりとアレクシオスを見る。

 そう、今回はアレクシオスがいる。


 バルトロとアレクシオスが補完し合えば、勝てない敵はいない。

 はずだ。


 まあ、対立した時は俺がまとめれば良いだけだしな。


 「では、第二次アデルニア人解放戦争と行こうじゃないか!!」


 斯くして、第二次アデルニア人解放戦争が始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がなろうで連載している他作品です
もしお時間があったらどうぞ
『三大陸英雄記~現代知識による帝国再建記~』
『蘇った真祖の放浪譚』
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ