第二百五十八話 陸と海
一番下の方で関係ないことやってるせいで見かけの文字数は多いですが、実際は少ないです
「これが五段櫂船か。大きいな」
俺はペルシス帝国から購入した五段櫂船を見上げた。
レザド等、我が国支配下のキリシア諸都市が持つ船の多くは三段階船なのだが、それよりもずっと大きい。
中古と言うだけあって、所々傷が目立つが……
「これなら十分に使えると思いますよ。というか、この程度の傷は傷のうちに入りませんよ」
船を確認し終えたアレクシオスは俺にそう報告した。
商人でもあるエインズにきちんと確かめさせて、不良品を掴まされないようにはしたが……
そんなに良いモノなのか。
「僕としては何故、あんな低価格で売ってしまうのか疑問ですね」
「何でも、十段櫂船ならぬモノを作っているそうだぞ」
船は全くの専門外だが……
五段の二倍だから、単純に二倍の大きさと考えて良いのだろうか?
少なくとも、五段櫂船よりも巨大なのは明白だ。
船は大きくすれば、その分漕ぎ手も増えて、速力も上がる。
速力が上がれば、衝角突撃で有利に立てる。
また、船大きく、そして重く成れば、その分防御力も増す。
だから十段櫂船が実装された時点で、ある程度の五段櫂船はお役御免ということだろう。
「……何でも大きければ良いというモノはではありませんけどね。十段にすれば、小回りが利かなくなります。まあ、ペルシスもそれは分かっているでしょうけど。さすがに全て十段に変える、などという暴挙はやらないと信じたいですね」
「一応、ある程度の三段櫂船や五段櫂船は残すそうだぞ。側面を守るそうだ」
重装歩兵の側面を軽歩兵が守るのと、似たようなモノ。
と俺は考えている。
案外、海戦と陸戦は変わらないのかもしれない。
「僕は十段櫂船ならぬモノには反対ですね。旗艦として数隻浮かべるのであれば別ですが。十段を作る時間と材料で、三段や五段を多く作った方が役に立つと思いますよ」
「まあ、そもそも我が国では十段櫂船なんて扱えないけどな」
大型船になればそれだけ扱いが難しくなる。
我が国にはそれだけの水夫を揃えられない。
櫂を漕ぐ人間ならば、いくらでもいるが。
「ところで、船の規格統一と大量生産は順調か?」
「それに関しては今まで通り、上手く行っているようですよ」
船の規格統一とは……
まあ、要するにそのままの意味で船の大きさや設計を統一しようということだ。
この世界、船は基本オールオーダーメイドである。
船大工たちが、注文した人間の要望に合わせて船を建造するのだ。
この方法だと、時々に適切な船が作れるので有利な気がする。
しかしそれは間違いだ。
というのも、オーダーメイドの船が破損した場合それを完全に直せるのは作った本人だけだからだ。
その上、船一隻の価格が跳ね上がる。
必然的に船の建造数も落ちる。
そしてキリシア諸都市はこの傾向が大きい。
同じ国同士ならば、細かいところは異なっても大まかな作りは似たりする。
だがキリシア人の諸都市は全てが独立した都市国家なので……
都市国家同士で全く違う船を造っている。
無論、各国が競合している状態ならばそれぞれがそれぞれの独自性を出して勝ち抜こうとするのは悪いことでは無い。
しかし今は全てロマリアに統一されている。
国としても、これから軍船だったり国保有の輸送船なんかを造ったりする関係上、一定の規格が欲しい。
そこで船を規格統一しようというわけだ。
責任者はアレクシオス……
ということになっているが、実際にこれを行っているのはレザド等のキリシア人の有力者だ。
何だかんだで、キリシア人たちも船を統一した方が有利であるとは思っていたようだ。
しかし、各国が競合している状態でそんなことはできない。
国の心臓部ともいえる、造船技術の擦り合わせなど不可能。
だが全てのキリシア諸都市がロマリア王国、ロマリア連邦に組した現段階ではそれができる。
アルムス王に命じられたのだから、仕方がない。
という言い訳を口にしながら、彼らは進んで規格統一を進めていった。
実は規格統一で最大の難関は度量衡の統一だった。
全ての都市国家が別々の度量衡を採用していたため、これを統一するのにはかなり手間取った。
しかし、度量衡の統一が終われば後はさほど難しくない。
結局は同じ船。
細部は異なれど、基本構造は同じだ。
そして現在は量産体制の確立を目指している。
というのも近年、船の需要は増大を続けている。
ポフェニアによって奪われていた、東テーチス海の商圏が徐々にキリシア人の手に戻り始めたからだ。
ペルシス帝国は船大工をペルシス帝国本土に連行することでキリシア諸国の力を落とし、キリシア諸都市の反乱を防止している。
一方で、キリシア商人の商売に関しては推奨している。
これは矛盾しているようだが、矛盾していない。
要するに船はペルシス帝国から買え、自分で作るな。というわけだ。
しかしペルシス帝国はさほど材木資源が豊かなわけではないし、あくまで軍船が優先。
となると、果たしてどこから船を購入するか……
となる。
ポフェニア?
いや、ポフェニアは嫌いだから嫌だ。
となると……
キリシア系ロマリア人!!
というわけで、我が国で作られた船が現在東テーチス海で浮かんでいるのだ。
それに岩塩、大麻、葡萄酒、オリーブ油を我が国からペルシス、ポフェニアに輸出する商売も最近は盛んになっているというのもある。
大昔は、キリシア商人の貿易拠点と言えばクラリスかアルト(共にキリシア半島本土の諸都市)……だったが、現在はレザドに移りつつある。
まあ、それだけ我が国の海洋貿易が発展しているというわけだ。
幸い、多く船を造るための材木ならば腐るほどある。
そこで増える需要に追いつくために、供給を増やす……要するに大量生産できるようにしようという話に繋がる。
先ほども述べたが、船は基本オーダーメイドだ。
つまり船大工がその船だけのために、材木の長さを調整し、釘を打つ。
確かにこれならば良いモノが出来上がるだろうが、時間が掛かる。
そこで分業体制で船を造ろう、という事になる。
船用の材木を一定の大きさに加工してレザドに運び……そして規格通りにレザドで組み合わせる。
船大工の仕事は組み立てだけになる。
今までは船の規格がバラバラだったため、そんなことはできなかったが……
現在は船の規格を統一して、数千種類あった船を数十種類に絞り込んだためそれが可能だ。
「あと五年もすれば、きっとポフェニアの船の建造数を超すと思いますよ」
「いくらなんでもそれは無いんじゃないか?」
ポフェニアはテーチス海最大の海洋大国。
陸軍国の我が国が太刀打ちできるとは思えないが……
「いえ、ポフェニアの造船業はそこまで好調でもないんですよ、実は。というのも、技術はあっても木材が枯渇してきているんです」
「なるほどね……仮にポフェニアを越したら正真正銘、我が国は海運大国だな」
その時はきっと、ポフェニアにも勝てる……
かもしれないな。
一方、その頃。
南の経済大国、ポフェニアの元老院は紛糾していた。
「アズル・ハンノ殿、此度の件はあなたの責任だが……どのように責任を取るおつもりですかな?」
「……意味が分かりませんな。何のことですかな?」
平野党党首、地主・貴族階級の利益代表者であるアズル・ハンノを追求する男が居た。
大柄で金髪、肌は日に焼けて浅黒い。
ロマリアの貴族たちが彼を見たら、一目でわかるだろう。
アイツの父親だ……と。
海岸党党首、平民・商人階級の利益代表者であるセアル・バルカ。
バルカ家当主にして、アレクシオスの実の父親である。
幾度も戦場で蛮族を打ち倒し、ポフェニアの植民地を広げ、ポフェニアの発展に寄与してきた、ポフェニアの英雄だ。
先の戦争……ケプカ・バルカによるアデルニア半島進出失敗以降、バルカ家の勢力は一時陰りを見せ始めていたが……
しかし、厚い平民層からの支持を得て、再びその勢力は持ち直し始めていた。
そして現在、バルカ家を筆頭とする海岸党は再び平野党を圧倒しつつあった。
「先の戦争……アデルニア戦争の事です。あなたがアルムス王と不介入の確約を交わしたことが原因で我が国はアデルニア戦争に介入することができず、ロマリア王国の伸張を許した。結果、アデルニア半島に巨大な軍事国家が誕生することになった」
ポフェニアは経済大国である。
だがしかし、経済大国であるからといって軍隊が精強であるとは限らない。
傭兵に軍隊を頼る国柄上、その軍隊はお世辞にも精強とは言えない。
「トリシケリア島の覇権どころか、メルシナ海峡の制海権、いやテーチス海の商圏すら危うくなっている!! これはあなたの責任ですぞ! アズル・ハンノ殿!!」
そうだ! そうだ!!
セアル・バルカに同調して、半分以上の議員たちが声高に叫ぶ。
「……メルシナ海峡に関しては、双方の管理下に置くことが決まっている。そして西テーチス海の商圏も我が国のモノと取り決められている。我が国の国益が失われることはない。そもそも、あなたはアデルニア戦争に介入して勝つことができたのですか? 先の戦争でロマリア王国のアレクシオス将軍に敗北したのは記憶に新しい」
そうだ! そうだ!!
アズル・ハンノに同調し、もう半分の議員たちが声高に叫ぶ。
しかし……
「おや? 国益が失われることはない? あなたは現在、我が国が東テーチス海で押されつつあることをご存じないのですか? キリシア系ロマリア人によって!」
「それは……」
痛いところを突かれ、アズル・ハンノは押し黙る。
それは紛れもない事実だからだ。
もっとも、アデルニア戦争が直接関係しているかと言われるとそうとは言えない。
そもそもだが、キリシア諸国が先のペルシス戦争から復興し始めていることも十分に考慮に入れる必要がある。
「ロマリアはペルシスから軍船を購入したという。それに商船とはいえ……船の量産に取り掛かり始めている。これはトリシケリア島……いや、我が国の植民地への野心に他ならない!! あの強欲なアルムス王の欲望は日に日に増大している! あの男の欲望が留まることはない!! このままでは我が国はアルムス王の欲望に飲まれることになる!!」
セアル・バルカは長々と、ロマリア王国の脅威について演説する。
それに加え、海岸党の議員たちがそうだ、そうだと叫ぶ。
平野党の議員たちは、勢いに飲まれて野次すら飛ばせない。
……いや、彼らもロマリア王国の伸張には危機意識を持っているのだ。
だから、何人かの平野党の議員たちは海岸党の議員たちと同様に叫ぶのだ。
「これ以上、ロマリア王国の伸張を許してはならない!!」
斯くして、アズル・ハンノ率いる平野党はポフェニアにおける主導権を失い……
セアル・バルカ率いる海岸党はポフェニアの主導権を得た。
海洋への進出を画策する、北の新興国にして、農業国、陸軍国、王制国家ロマリア。
既得権益を守ろうとする、南の老大国にして、商業国、海軍国、共和制国家ポフェニア。
両者の衝突は歴史の必然。
雌雄を決する時は……近い。
以下、戦争をAA?というか、記号で表した場合、投稿した時にズレが生じるか、どうかの実験
作品内容とは関係ありません
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一番
ローマ騎兵:パウルス 重装歩兵:セルウィリウス 同盟国騎兵:ウァロ
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ガリア・スペイン騎兵ハスドルバル ヌミディア騎兵:ハンノ・ボミルカル
前:ガリア歩兵
後:スペイン・リュビア歩兵
左翼:ハンニバル
右翼:マゴ
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二番
ローマ騎兵:パウルス 重装歩兵:セルウィリウス 同盟国騎兵:ウァロ
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ガリア・スペイン騎兵ハスドルバル ミディア騎兵:ハンノ・ボミルカル
前:ガリア歩兵
後:スペイン・リュビア歩兵
左翼:ハンニバル
右翼:マゴ
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私は執筆でオープンオフィスを使用しているのですが、今回のは……
一番……オープンオフィスで作ったのを丸ごとコピペ
二番……コピペした後、高機能執筆フォームで修正
です
ちなみに、二番の方は書き込む段階では綺麗に整ってましたが、何故か編集[確認]ボタンを押すと崩れておりました
多分、投降後のこれもズレているでしょうね
AAは作ったことがないので、よく分からないのです
これからちょいちょい、実験するかもしれません
ちなみに
スクショする→『ペイント』で修正→『みてみん』に投稿→本文に貼りつけ
という面倒なことをすることで、どうにか綺麗なままで皆さんにお見せできるのが……
こいつでございます
ちっちゃいですが、クリックして拡大すれば多分見れます
ちなみに、本当はローマ騎兵を粉砕したハスドルバルが、すぐさまローマ重装歩兵を迂回してから同盟国騎兵の背後に周り込み、ハンノ・ボミカルと挟み撃ちすることで同盟国騎兵を粉砕するのが本当の動きですが、面倒なので書きませんでした




