第二百五十六話 呪術師統制Ⅰ(第三回国勢調査)
領土が増えた。
人口も増えた。
となると、やるべきことは?
国勢調査である。
全人口 臣民権対象者及びその配偶者、家族 50万5673人
限定的臣民権所有者及びその配偶者、家族(自治市) 38万4830人
国民権所有者及びその配偶者、家族 (同盟市) 53万2843人
奴隷人口 31万2394人
総計 171万5740人
男女比 男性49% 女性51%
年齢
1~15(未成年) 35%
15~30(成人) 30%
30~40 25%
40~50 7%
50~ 3%
計 100%
兵役世代 (15~40) 55%
総兵力(自治市、同盟市含まず) 約16万
資産及び身分
第一階層(王族、貴族) 1%
第二階層(準貴族、地主、商工業者。騎兵) 5%
第三階層(自作農。重装歩兵) 84%
第四階層 (小作人。軽装歩兵) 10%
西部諸国やゾルディアス王の国など、様々な国を征服したことで人口は大きく増大していた。
その増え幅は百万。
一方で臣民権所有者はあまり変動が無い。
侵略した国の遺民たちに与えられるのは、限定的な臣民権と国民権だけだからだ。
増大するはずがない。
ちなみ多少増大しているのは、臣民権を得た限定的な臣民権保有者と国民権保有者が居たからだ。
南部のキリシア人が多かったようだ。
しかし一番の変化は奴隷人口の増加だろう。
これはどう言う事か?
と言えば……まあ捕虜がそのまま奴隷落ちしたのだろう。
また、奴隷の国外輸出を法律で禁じたためその多くが国内に残ることになったのもある。
あとは前回の国勢調査よりも、念入りに調査したため、調査から零れ落ちた奴隷の数が少なかったというのもあるかもしれない。
それと地味な変化だが、男女比が改善されている。
これはどうでも良いか。
さて……
これに加えて、今回はもう一つ別の調査をした。
連邦加盟国の人口調査である。
この国勢調査で数えられる人間はロマリア王国内……つまり王家直轄地や同盟市自治市などの王国内の自治領だけである。
アルヴァ王国等の人間の数は数えられない。
しかし……
これからは支配強化のために、調査をすることにした。
まあ、一応連邦内の国々は外交権こそないモノの独立国なので我が国の官僚が入り込んで数えるわけにいかず、自己申告だが……
ファルダーム王の国 29万3476人
ドモルガル王の国 25万3465人
ギルベッド王の国 12万8732人
エビル王の国 10万4653人
ベルベディル王の国 4万1243人
アルヴァ王国 8万3925人
その他西部諸王国 20万3498人
合計 110万8992人
連邦内でやはり飛び抜けた国力を維持しているのは、ファルダーム王の国とドモルガル王の国だ。
特にドモルガル王の国は先の戦争で殆ど兵力を失っていないので、かなりの力を持っている。
またエビル王の国は人口そのものは大したことはないが、国王の手腕の為かかなり国力を伸ばしてきていることが間諜の情報から分かっている。
そして忘れてはいけないのはアルヴァ王国。
遊牧民の国家なので、その人口に対しての軍事力は巨大だ。
それ以外の国はさほど気にする必要は無い。
ベルベディル王の国なんぞ、ちょっと大きな都市国家並みである。
ロマリア王国約171万。
連邦加盟国約110万
合計で262万1234人。
それが現在のロマリア連邦の大きさだ。
元々二十万程度であったロサイス王の国を考えると……
その国家の巨大さが良く分かる。
まあ、ペルシスなんぞ総兵力が百万程度だそうなので、それに比べるとまだまだだが。
比べる方がおかしいか。
さて……
この数字から二つの課題が見えてくる。
一つはまだロゼル王国には及ばないということ。
実際のところ、ロゼル王国がどれほどの国力を有しているのかは分からない。
いくら密偵、間諜を放っても、人口なんぞ分からない。
だが大まかな概算はある。
ガリア本国だけで三百万。
アデルニア半島の隷属民を含めれば、五百万。
つまり人口は我が国の二倍。
もっとも、人口が二倍だからと言って実際に国力が二倍かと言われるとそういうわけではない。
まずロマリア連邦の国々の方が南にあるので、純粋に穀物の生産力では優る。
また、貨幣経済も発展している。
それにアデルニア半島の隷属民は半分奴隷のようなモノで、兵力としては期待できない。
それらを考慮すれば、決して勝てない相手ではない。
二つ目の課題。
それは臣民権保有者に比べて、非臣民権保有者や連邦加盟国の人口が大きすぎるということ。
臣民権保有者が約五十万なのに対して、それ以外が約二百万人いる。
一人で四人を抑える計算になる。
これは不味い。
不味いと言っても、すぐに臣民権保有者が増えてくれるわけでもないが……
何とかしなければ、ロゼル王国との戦いどころではない。
「で、どうしようか?」
「それを私たちに聞くの?」
「……アルムスの仕事」
ユリアとテトラが苦笑いを浮かべた。
しかし二人も我が国の危機的状態に関しては関心があるようで、じっと調査結果を見つめている。
「……ねえ、むしろ何で今反乱起きてないの?」
「一斉に蜂起すれば倒せそう」
二人はむしろ、現状反乱が起きてないのが不思議なようだ。
しかしこれに関してはいくつか答えがある。
「まず第一にバルトロがいるのが大きいな」
「あのアル中おじさんが……」
「さすが」
普段はアル中おじさんだが、戦場に出せばあいつは非常に優秀だ。
それに情け容赦がない。
俺が皆殺しにしろと命じれば、あいつは酒をグビグビ飲みながら女子供だろうと殺すだろう。
それにバルトロに勝てる将なんぞ、いないからな。
勝てない反乱はしないに越したことはない。
「あとはメリットが無いからかな」
「何で? 独立できるじゃん」
「独立して良い事あるか?」
俺はユリアに聞き返した。
ユリアは暫く、うんうん悩み始める。
「自治は……現在でも認められてるし。税金は……土地の借地料以外無いし、前よりも安くなってる場所もあるね」
「それに軍事費が削減されて、道や橋まで作って貰ってる」
テトラが後から、ロマリア王国の支配下にあることのメリットを付け足す。
寄らば大樹の陰という言葉があるが、まさに『寄らばロマリアの陰』という状態にある。
小国は下手に独立すると、ロマリア以上に苛烈な国に征服される可能性がある。
中堅国家も周辺国と紛争を繰り返すより、ロマリアの支配下で周囲と仲良くやった方が長期的には得。
大国は独立しても自立可能だが……単体ではロマリアに勝てないし、独立したところで得られるモノはプライドだけ。
というわけで、誰も反乱なんて起こさない。
それに加えて、分割統治の影響で誰も連携することができない。
囚人のジレンマが働くのだ。
「じゃあ、今のままで良いんじゃない?」
「これからも良いとは限らないだろ」
いつまでこの状態が続くか分からない以上、対策は打っておいた方が良い。
グラムの提案を聞いて、各地に植民都市を建設して、それを楔にすることで反乱に備えているのだが……それだけでは心もとない。
だからユリアとテトラに、試しに聞いてみたのだ。
呪術師として、何か良いアイデアは無いだろうか、と。
「うーん……と言ってもね」
「アルムスが思いつかないものを私たちが……」
やっぱりそんな上手い手は無いのかな?
と、俺が思ったその時だった。
「呪術師の掌握から始めるのが良いんじゃない?」
ユリアがポンと手を打った。
「それはどういうことだ?」
「ほら、呪術師って村や町では村長や町長の次に偉いし。その呪術師がロマリアに協力的なら反乱は起らないでしょ? 国家呪術師の制度はあるけど、それをさらに強化できないかなあ……なんて」
「……それはいい考えかもしれないな」
少し考えてみよう。
久しぶりの国勢調査です
ちなみに前回やったのは第一次ゾルディアス戦争前で……
全人口 臣民権対象者及びその配偶者、家族 45万8732人
限定的臣民権所有者及びその配偶者、家族(自治市) 13万6352人
国民権所有者及びその配偶者、家族 (同盟市) 15万9932人
奴隷人口 7万6537人
総計 83万1553人
男女比 男性48% 女性52%
年齢
1~15(未成年) 35%
15~30(成人) 30%
30~40 25%
40~50 7%
50~ 3%
計 100%
兵役世代 (15~40) 55%
総兵力(自治市、同盟市含まず) 約12万
資産及び身分
第一階層(王族、貴族) 1%
第二階層(準貴族、地主、商工業者。騎兵) 5%
第三階層(自作農。重装歩兵) 74%
第四階層 (小作人。軽装歩兵) 20%
だったと思います
それより後にやったかもしれないけど、覚えてない




