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異世界建国記  作者: 桜木桜
第八章 南アデルニア統一と大王
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第二百四十九話 北部大征伐Ⅱ

 「ふむ……さすがのロマリア王国も三国を同時に相手にするのは難しいようだな」


 男……ギルベッド王の国の有力豪族であり、バルトロと対峙して戦っている将軍は呟いた。

 彼はギルベッド王と親戚関係にあるため、ギルベッド王に非常に信頼されているためギルベッド王の国の最高司令官に抜擢されたのだ。


 男は思う。

 なるほど、確かにバルトロ・ポンペイウスは強い。

 どんなに攻め立てても確実に斬り返され、こちらが大怪我を負ってしまう。

 

 恐ろしいのは二倍の兵力差があってようやく互角と言う事か。

 同数なら確実に敗北していただろう。


 ロマリア王国最強の将軍、バルトロ・ポンペイウス。

 ロマリア王の剣の名は伊達ではない。


 ……しかし


 「ファルダーム王の国からの援軍も来る。そしてドモルガル王の国のトニーノ将軍はロマリア王を破ってロマリア王国に雪崩れ込むのも時間の問題。我々の勝ちだな」


 真綿で首を絞めるように、少しづつロマリア王国を締め上げていく。

 長期戦は避けられないが、確実に勝てるだろう。


 「それよりも先にロマリア連邦の崩壊の方が早そうだが……最大の利益を得るのは我々ギルベッド王の国でなければならない。ギルベッド王には然るべき土地を貰わないとな」


 男は勝利後の報酬の土地に思いを馳せる。

 ロマリア王国は非常に豊かな国だ。

 経済的にも、そして土地そのものも。

 

 実に楽しみだ。


 「た、大変です!! 閣下!!」


 男が空想に更けていると、突如伝令が走り込んできた。

 男は眉を顰める。

 

 「全く……何だ、入室の許可も取らずに」

 「も、申し訳ありません」


 伝令は謝りながら呼吸を落ち着かせて、言った。


 「お、王都近郊に突如六万の大軍が出現致しました!!ギルベッド王様が至急、戻るようにと!!」

 「な、何だと……」

 

 男は目を見開いた。

 そしてしばらく考えた後……


 「ま、まさか!!! やられた!!!!」






 

 「ここまで上手く行くとは思わなかったよ」

 「全くだね」

 「僕たちの働きにロマリア王国の勝利が掛かっている。全力で挑まなくては」


 ロンとロズワードとグラムはギルベッド王の国の王都を目の前にして、揃って笑みを浮かべた。


 ロンは重装歩兵四万。

 グラムは弓兵などの軽歩兵を主力とする一万と、工兵、輜重部隊。

 そしてロズワードはアルヴァ騎兵と近衛騎兵団を主力とする騎兵一万。


 合計六万の大兵力を率いている。

  

 総大将はロンで、グラムとロズワードは副将だ。


 三人がいとも簡単にギルベッド王の国の首都を強襲できたのは、ロマリアの森を通過して来たからだ。

 王都からバルトロやアルムスと共に出撃した後、同盟軍の合流と入れ替わるように森の中に入り込んだのである。

 そして真っ直ぐ、森を通過して一気にギルベッド王の国の領内に侵入したのだ。


 普通なら大軍は森を通過できない。

 ……しかし、すでにロマリアの森は少しづつ道路を通してあった。


 全てはこの時のためだ。


 「確か、王都の守備兵力は二千だっけ?」

 「まあ、潜伏している呪術師の情報が正しければだけど、ね」


 ロンの問いにソヨンが片目を瞑って答える。

 

 「しかし、大きな城壁ですね。首都ロサイスにも劣らない……落とせますか?」

 

 ルルが不安そうに、夫であるグラムを見る。 

 グラムは好戦的な笑みを浮かべた。


 「バルトロ閣下もアレクシオス閣下も、落ちない城は無いと言っていた。じゃあ、落とせるさ。なに、兵力差は十倍ある」

 「まあ、俺の騎兵は攻城戦には役に立たないから、数には入らないけどな」

 「水を差さないの」


 ロズワードの頭を、リアが軽く叩く。

 ソヨンやルルが戦場に出ているのに、ロズワードの妻である自分が出ないわけにはいかない。

 というわけで、密かに騎射をリアは練習していた。今ではアルヴァ人のお墨付きを貰っている。


 そういうわけで、今回が初参加である。


 「さて、役割分担をしようか。騎兵を率いるロズワードは索敵をよろしく頼む。城に入る敵を追っ払い、そして城からの人の出入りを封じてくれ。もし、敵が騎兵だけで対処不可能なら、俺とグラムの歩兵を割く」

 「はいはい、了解です。総大将」


 ロンの言葉に、ロズワードは笑いながら答えた。

 ロンは眉を顰める。

 

 「何だよ」

 「いや、兄さん……陛下が来なかった頃はお前がこうやって偉そうに指揮をしていたなと。で、俺と喧嘩してたな」

 「まさか、その時は将軍になるとは思わなかったよ」


 ロンは肩を竦めた。

 そしてグラムを見る。


 「俺とグラムは攻城戦だ。俺が各門へ重装歩兵を配置して、攻め立てる。お前は援護をしてくれ」

 「ああ、分かってるよ。攻城兵器は全て、分解して持ち運んでいる。破城鎚、投石機、大弩、攻城塔、梯子。必要なモノは全てある。そして、優秀な工兵もいる」


 この時のために、予めロマリアの森の各所には攻城兵器の部品を隠しておいたのだ。

 それを進軍の途中に回収した。

 攻城兵器は分解しても、重いので持ち運ぶのは難しいが……


 短距離ならば、十分にできる。

 それにそのための輜重部隊でもある。


 「では、第二作戦……通称『斬首作戦』を開始する。期限は一週間。行くぞ!!」

 「「「「おおおおお!!!!」」」」


 斯くして、ロマリア王国とギルベッド王の国の命運を分ける攻城戦が始まった。






 「く、おのれ……してやられた。妙に数が少ないと思ったのだ……」

 

 ギルベッド王は頭を抱えた。

 窓の向こうからは、城壁に展開するロマリア軍が見える。


 ギルベッド王の国の王都、グロセリアには東西南北方向に合計四つの門がある。

 そのうち、ロマリア王国の兵が多数張り付いているのは北と西の門だ。

 東と南には、少数の兵しか張り付いていない。

 

 このことから、ロマリア王国が短期決戦を狙ってることがよく分かる。

 

 攻城戦に於いて、短期決戦で力攻めをするのであれば下手に包囲するよりは攻撃目標を絞って、兵力を集中させた方が良いのだ。


 そしてこの選択は正解だ。 

 グロセリアの兵力は僅か二千。ならば兵力差を活かして、兵力を集中させた方が手早く落とせる。


 もっとも、東の門と北の門が手薄だからと言って補給や人の出入りができるわけではない。

 少数とはいえ、千の兵が門の周辺を固めているし、さらに遠方には一万の騎兵が散開してグロセリアを見張っているのだ。


 そして上空には優秀なロマリア王国の呪術師の鷹が舞い、情報を遮断していた。

 これでは外の情報が全く分からない。

 包囲される前に、救援をファルダーム王の国と南にいる自国の将軍に出せたのは不幸中の幸い。


 「……一週間も耐えれば必ず救援は来るはずだ。大丈夫、勝つのは我々だ。これはある意味チャンスだ。何しろロマリア王国の主力が我らの胃袋に入っているのだから」


 ギルベッド王は不安を打ち消すために、必死に自分に言い聞かせた。






 それから三日が経過した。

 グロセリアには矢の雨が降り注ぎ、そして何度も大石がぶつかって城壁を揺らす。

 攻城塔と梯子を使い、城壁にロマリア兵が殺到し、そして門には破城鎚が激しくぶつかる。


 それでもやはり、一国の王都。

 グロセリアは懸命に持ち堪えていた。


 「どうだ、ロン、グラム」

 「厳しいな。びくともしない」

 「石が中々同じ場所にぶつからなくてね。火薬も、やっぱりある程度閉鎖された場所じゃないと威力が出ない。城壁にぶつけただけだと、拡散してしまう。非常に難しいね」


 ロズワードの問いにロンとグラムは答えた。

 状況は芳しくない。とはいえ、まだ三日。


 三日で城が落ちないのは当たり前だ。


 「まあ、火薬も破城鎚も投石機、大弩、攻城塔、梯子、全部含めて本命じゃないさ。あくまで補助に過ぎないよ。ここからさ」


 グラムは落ち着いた様子で言った。

 作戦は現在、問題無く進んでいる。


 「それで、ロズワードはどう?」

 「特に変わったことは無いかな? ご近所の豪族の兵士が、千ほど近づいてきたけど軽く蹴散らしたよ」


 すでに三度もロズワードは敵を負い散らかしている。

 一万の騎兵を撃破するには、やはり相応の兵力でなければ不可能だのだ。


 「で、バルトロ閣下はどう?」

 「今のところ、一兵も逃がさず引き留めてくれているよ。任せろ、だってさ」

 「二倍の兵力差で、よくもここまでできるね。さすがはバルトロ閣下。俺たちは十倍以上の兵力差でやっとだよ」


 ロンは肩を竦めた。

 もっとも、平野での戦いと攻城戦ではそもそも勝手が違うから、比べるには不適当だが。


 「で、問題はファルダーム王の国の援軍だけど。第四戦線はどうなってる?」

 

 ロズワードはロンに尋ねた。

 鷹便の情報は総大将である、ロンが握っているのだ。


 「昨日、丁度成功したってさ。無事、引き留めたって。アレクシオス閣下が」

 





 約三日前。

 ロンたちがギルベッド王の国の首都、グロセリアに到着したのとほぼ同時期。


 ファルダーム王の国は大混乱に陥っていた。

 突如、グリフォン旗を掲げた大艦隊が港を強襲して瞬く間に上陸したのだ。


 大艦隊を率いているのは、アレクシオス。

 ファルダーム王の国の、貧弱な、精々海賊討伐ができる程度の海軍を蹴散らして、あっという間に制海権を奪ったのだ。


 そしてキリシア諸都市同盟軍二万を率いて、ファルダーム王の国に上陸したのである。


 上陸後、アレクシオスは兵士たちにこのように演説した。


 「諸君、我々の仕事は勝つことでは無い、負けないことさ。ファルダーム王の国の兵力をファルダーム王の国の内部に保ち続けるんだよ。なーに、ピンチになれば船に乗って逃げれば良い。我々は海の民、陸の民と正面から戦う理由はないさ。僕らの仕事は、もっとも簡単だ。だから気楽に、そして確実に成功させようじゃないか」


 クラリスを守ったことにより、アレクシオスはポフェニア出身であるにもかかわらずキリシア人からとても好かれている。

 そして元々、傭兵を率いるのが得意で、そして海戦の心得がある。


 だからこそ、癖の強いキリシア兵を率いてファルダーム王の国を奇襲するという大任を与えられた。

 これはアレクシオスにしか、出来ない仕事である。


 「さてさて、適当に略奪しながら、ファルダーム王を誘き寄せるとしますかね」





 「不味いことになったな」


 ファルダーム王は頭を抱えた。

 ギルベッド王の国へ救援に行く途中、突如連邦軍の襲来を聞いて即座に引き返したのが昨日。

 そして今日、報告にあった港に向かってみるとそこはもぬけの殻だった。


 港周辺の村々と都市は徹底的に略奪され、そして迎撃に出た豪族たちは次々に奇策にやられて敗北してしまっていた。

 

 そして……


 「ファルダーム王様、ここから南で一日の海岸線に連邦軍が現れたようです」

 「……見逃し続けるわけにはいかんが、しかしこのままではギルベッド王の国が……」


 しかし国を守るのが王の役目である。 

 国を守れなければ、豪族たちはあっという間に離反してしまうだろう。


 ギルベッド王を救っても、ファルダーム王の国が亡べば本末転倒だ。


 「……許せ、ギルベッド王。私は王として、あのアレクシオス・コルネリウスを放っておくわけにはいかないのだ」


 ファルダーム王は拳を固く握りしめる。

 完全にしてやられた。


 バルトロ・ポンペイウスという名将と、そして国王本人であるアルムス王。

 二人が率いているロマリア軍が本隊だとばかり、思っていた。


 しかし本当の本隊は無名の将軍三名が率いる、精鋭部隊だった。


 その上、、全く名前を聞かないアレクシオス・コルネリウスという……よくよく調べてみるとあのゾルディアス王を打ち破った名将が、海軍を率いて攻めて来た。


 完全に裏を掻かれた。


 「……ここから、巻き返すのは……少々難しそうだな」


 ファルダーム王は深い溜息をついた。






 一方、そのころのアルムス。


 アルムス「うーん、暇だな」

 ライモンド「暇ですね」

 アルムス「トニーノの奴、中々攻めてこないな」

 ライモンド「バルトロ殿の作った要塞ですからねえ」

 二人そろって「「はあ……」」


 ユリア「もう少し、真面目にやれば?」

 テトラ「一応、忙しそうにしているフリくらいはするべき」

 アルムス「いや……俺だって真面目だし、緊張してるよ? ほら、家臣に任せるのも君主の仕事というか」

 ユリア「というか、私もすること無いんだけど。前に出て、呪術戦に参加していい?」

 テトラ「火の玉撃ってきていい?」

 アルムス「死んだら洒落にならんだろ」

 ユリア・テトラ「「ですよね~」」


 一同「はあ……暇だ」


 

最近、己を追い詰めなくてはならないと思ったので……

目標を立てます


九月末までには、二十四話を書き溜めます

ここで宣言しておきます

十月以降は忙しくて書けなくなる可能性が高いので、それまでにある程度書き溜める必要があるわけです


ただ、長期目標は守れないので短期目標として

次回更新までに三話書きます

つまり、残り二十一話になれば目標達成です


次回までには残り、二十一話とここに書き込めるように頑張ります


尚、書けないと真面目な話更新が止まります


あと、活動報告に口絵を乗せました

バルトロのイケメンフェイスが見れます


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