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異世界建国記  作者: 桜木桜
第七章 竜退治と女王陛下
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第二百二十八話 ゲルマニス旅行

運営とチキンレースするのもどうかと思うので止めました

まあ、気が向いたらノクターン用に改稿し直して投稿するかもしれません

 家紋や国旗、貨幣のデザインが決まり早速生産を始めようとしたころには約四か月が経過していた。

 新年を過ぎて、俺は二十三歳を迎えた。

 また、ロンとソヨンの子、ロズワードとリアの子、グラムとルルの子も去年生まれたので、マルクスやソフィア、フローラと共に二歳を迎えることになった。


 少し冷静に考えてみると、同い年である。

 ロンたちは俺と同様に家族がいなく、氏族という後ろ盾がない。


 上手く俺の子供と三人の子を一人づつ結婚させれば、ロンたちの子孫は安泰になるのではないだろうか。

 とは思うのだが、まあまだ早いだろう。


 さて、それはそれとしてもう三月である。

 春になり、暖かくなった。


 そしてクセルクセス帝の仲介により、ゲルマニス諸国の国々と外交関係を結びにゲルマニスにライモンドが旅立つのも、今月中である。

 ……であるはずなのだが、


 「ぐぬぬぬぬ……」

 「安静にしていろ、ライモンド」


 何と、ここに来てライモンドの腰が逝ってしまった。

 ライモンドと言えば、まさに理想的な初老のアデルニア人像であり、とても健康なイメージがあったのだが。


 「なぜ、なぜ今まで一度も腰を痛めたことが無かったのに!!!」

 「まあ、仕方がないな」


 どうやら初めての海外旅行にウキウキし過ぎて、気を抜いていたようだ。

 まあゲルマニスなんてアデルニア以上のド田舎と聞くから、ウキウキするような場所ではないと思うのだが……


 アデルニア半島から出たのが、前のクセルクセス帝との対面が初めてというライモンドからするとウキウキするようなことだったのだろう。


 「しかし、こうなったら仕方がないな。俺が行くか……」


 まあゾルディアスも沈静化してるし。

 アデルニア人解放戦争も終わったし。

 しばらくは戦争をするつもりは全く無い。


 絶好の機会と言える。


 「というわけだ、ライモンド。俺が行くから安心してください」

 「お、お待ちください! 国王が国を離れるなど……」

 「俺が国を少し離れたくらいで崩壊するような組織にはしていない。安心しろ」


 俺はライモンドに笑みを向けた。





 「あ、結局アルムスが行くんだ」

 「そう……頑張って」


 ユリアとテトラに俺がゲルマニスに行くことを伝えると、二人は特に驚きもないようで素っ気なく答えた。

 おかしいな?


 「いつもなら、心配だ心配だとか、泣きついたりしてくるじゃないか。どうした?」


 俺が尋ねると、ユリアとテトラは顔を合わせた。


 「……夫の留守を守るのが良き妻だから」

 「信じてるから」


 どうやらライモンドの説教が相当効き目を表しているようだった。

 

 「でも、ちゃんと帰って来てね? この年で未亡人には成りたくないから」

 「……これ、お守り。ユリアと一緒に作った」


 ユリアとテトラは、綺麗な呪石でできた数珠なようなモノを俺の手首に着けてくれた。


 「おお、ありがとう。ところでこれは何の御利益が?」

 「「女避け」」


 ……そこまで信用無いか?


 俺が苦笑いを浮かべると、ユリアとテトラは楽しそうに笑う。


 「嘘だよ。呪いとかを弾く効果があるよ。まあ、そんなモノ無くても護衛としてついていくソヨンとルルが守ってくれるだろうけど」

 「まあ、魔除けだから魔の中に女も含むけど」


 一応、ちゃんとした効果のあるお守りのようだった。

 

 俺にお守りを渡し終えると、二人は何故か天井を見上げた。


 「「アリス!!」」

 「は! ここに!!」

 

 バサッ!!

 

 そんな効果音と共に、天井からアリスが降りて来た。

 最近、増々忍者レベルが上がっているような気がする。


 「アルムスをよろしくね」

 「女には気を付けて」

 「分かりました。責任を持って私がアルムス様をゲルマニスの女狐から守ります」


 こいつらは人を何だと思っているのだろうか?

 とても失礼だ。






 船で二週間掛けて、キリシアに上陸した後、そこからさらに二週間北上。

 合計一か月の船旅の末、俺はゲルマニス地方に辿り着いた。


 さて、そんなゲルマニス地方への基本メンバーを紹介しよう。


 まずはロン、ロズワード、グラム、ソヨン、ルル、リアというお馴染みのメンバーだ。

 国王である俺が向かう以上、相応の護衛が必要。

 ということだった。


 本来はロンとソヨン、グラムとルルだけの予定だったのだが故郷に一度帰りたいというリアの希望とリアと一緒に生きたいというロズワードの要望も含めて、二人も連れて来た。


 まあ旅行ではなく外交に来たので、決してこの経験は無駄にはなるまい。

 

 さらに当然、護衛としてアリスも参加。


 その上、ペルシス側が道案内の人間と護衛の人間を派遣してくれた。

 まあ仮にもペルシス皇帝の紹介で行くのだから、その紹介先で俺が死んだらペルシスの威信に関わる。

 ということなのだろう。





 「それで、リーダー国王陛下。まずはどこに向かうのですか」

 「えっと、確かゲルマニス地方の部族の一つ、スウェヴィ族の使者が来るはずだ」


 今我々が居るのは、ゲルマニスであってゲルマニスではない場所である。

 というのは、この場所はゲルマニス地方の沿岸部に建設されたキリシア人の都市国家……つまるところ、ペルシス帝国の領土であった。


 ここからすぐに北に行けば、スウェヴィ族の領土がある。

 スウェヴィ族はゲルマニス地方とガリア地方を隔てる、ライル河の東側の岸を領土とするらしく、定期的にロゼル王国とドンパチやっているようだった。


 なお、ロゼル王国に勝ったことは今まで一度もないらしい。

 まあ、あのクリュウ将軍が睨みを利かせているのだから当たり前と言えば当たり前と言える。


 「ところで、アルムスさん陛下。何か、お土産を持ってきたそうですけど何ですか?」


 ソヨンが、俺がロマリアから持ち運んできた大量の荷物を指さした。

 

 「東方貿易で手に入れた絹とか、金の装飾品とか、蒸留酒だよ。まあ、大したものじゃない」


 さすがに手ぶらで行くのも良くないと思ったので、持ってきたのだ。

 ちなみに、土産の中には『とっておき』もある。


 船の甲板の上でそんな他愛のない話をしていると、遠方から百人ほどの集団があらわれた。

 俺は彼らが掲げている旗を確認する。


 間違いない。スウェヴィ族だ。


 俺たちは船から降りて、スウェヴィ族を出迎えた。

 

 スウェヴィ族の特徴を一言で表すのであれば、野蛮人だった。

 キリシア人から野蛮人野蛮人と言われている手前、あまり人様のことを野蛮人とは言いたくないのだが……


 彼らの多くは腰巻一つで手に槍を持ち、いくらか身分の良さそうな者でさえも毛皮のマントを羽織るだけだ。

 そして明らかに人間の頭蓋骨と思われる物体を首からさげ、手には短槍を持っている。


 画家十人を集めて、お題『野蛮人』を出せば十人中九人が描きそうな姿をしていた。


 ぱっと見る限り、槍の穂先は鉄製なので製鉄技術は持っているようだが……

 アデルニア半島で使われている槍の穂先に比べると、随分と小さい。やはり鉄は貴重なのだろう。


 オリーブ色で、比較的肌の色が日本人と似ているアデルニア人やキリシア人とは違い、肌は真っ白で、まさに白人。


 四分の一は金髪に青い瞳。

 もう四分の一は真っ赤な髪の毛に茶色い瞳。

 そして半分は茶髪に茶色い瞳。


 アデルニア人のように、黒髪は灰色の髪の人間はいない。

 

 アデルニア人やキリシア人とは、全く異なる民族であることが分かる。


 彼らの中で、最も身分の高そうな男が前に出てきた。


 「Hallo Fremde Könige und ihre Anhänger」


 なるほど、分からん。


 「ロズワード、翻訳頼む」

 「はい、兄さん国王陛下」


 ロズワードはそう言って、身分の高そうな男に進み出る。


 「Ich übersetze Ihre Worte」


 すると、身分の高そうなthe野蛮人の男が静かに頷き、もう一度同じ言葉を言う。

 それをロズワードが即座に翻訳してくれる。


 『こんにちは、外国の国王とその従者の皆様』

 「こちらこそ、人伝えで申し訳ない。私の名前はアルムスという。ロマリア王国の国王だ。今日はスウェヴィ族の皆様と友誼を結びに来た。あなたの名前と御身分を教えて欲しい」

 『私の名前はアダルベロという。スウェヴィ族の族長だ。ロゼル王国を打ち破った勇猛な王として、あなたの名前はこのゲルマニスにも知れ渡っている。あなたと友人と成れることを誇りに思う』


 俺はアダルベロに対して右手を差し出すと、アダルベロは笑顔を浮かべてその右手を取った。

 固く、握手を結ぶ。


 どうやら、掴みには成功したようだ。


 「私とあなたの友情の証として、ロマリアから土産を持ってきている。ぜひ、受け取って欲しい」

 『ありがとう。喜んで受け取ろう。……一先ず、私の宮殿に来て貰おう。大した物はないが、精一杯の歓迎をしよう』








 スウェヴィ族の集落、そしてアダルベロの宮殿まではキリシア人の植民都市から約一週間ほどライル側に沿って北上したところだった。

 アデルニア半島とは違い、三月というのにまだまだ寒かった。


 よく、腰巻一つで平然と過ごせるモノだ。


 スウェヴィ族の集落には城壁と言える物が全くなかった。

 鬱蒼と茂る森の中に、小さな竪穴住居のような家がポツンポツンと立っていて、その周りだけ僅かに木が伐採されていて、家庭菜園程度の小さな畑がある程度だった。


 そしてようやく姿を現した、アダルベロの宮殿は……

 かなり大きな……竪穴住居だった。

 

 はっきり言おう。

 俺の想像していたド田舎を遥かに超えてド田舎だった。


 これに比べれば、日本の限界集落なんぞ大都会である。

 まあ、限界集落と違って出生率は高いだろうし、未来はあるのだろうけど。


 なるほど、初めて米を持って大陸から日本列島に渡って来た人間は多分俺と似たような思いを抱いたのだろうな……


 と思うと、なんだか感慨深いモノを感じた。


 というか、俺の転生先がここじゃなくて良かったわ。




一応、蜘蛛探し編

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