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異世界建国記  作者: 桜木桜
第七章 竜退治と女王陛下
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第二百十四話 新首都Ⅰ

 新都ロサイス。

 現在、建国を祝って一週間の祭りが催されている。


 さて、ここのところ忙しく一緒に居られなかった埋め合わせも含めて、ユリアとテトラと共に祭りを周ってみようと思う。


 「付いてきてくれ。案内する」


 俺は服を着こみ、食事を済ませて身支度を済ませた家族にそう言った。





 この新都に新たに建設された王城は、都の中にある七つの丘の中で最も小高く広い丘の上に立てられている。

 場所はほぼ、首都の中心部だ。


 王城、というと一つの建物で構成されているような印象を受けるかもしれないが実際には違う。

 この王城は複数の建物から構成されていた。


 「というわけで、最初は俺たちの居住空間。便宜上、宮殿と呼ぶ。まあ、そこそこ広いから付いてきてくれ」


 俺はマルクスを両手に抱きながら歩き始める。

 ユリアは両手でソフィアを、テトラはフローラを抱いている。

 その横をアンクスとフィオナが自分の足で歩く。


 「ここの一番大きな部屋が俺の私室。東の方にある部屋がユリアの、西の方の部屋がテトラの私室だ。他にも大小の部屋があるから、アンクスとフィオナは大きく成ったら好きに選ぶと良い」

 「「はーい」」


 元気な返事が返ってくる。

 ところで、自分の部屋って日本だと何歳で貰えるのだろうか?


 「ところで一つ聞いて良い?」

 テトラがいつもの無表情……しかし、何となく少し不機嫌そうな声音で尋ねる。



 「北と南の大きな部屋は何?」


 えっと……

 これを設計したのは俺じゃなくて、イスメアだから。出来ればイスメアに聞いて欲しいというか……


 「誰用?」

 「……増える予定の無い、側室の分だよ。いや、これ作れって言ったのは俺じゃなくてライモンドだから。ライモンドがイスメアに頼んだの。い、いやまあ了承したのは俺だけど……ま、待て、この宮殿はいずれマルクスのモノになるわけで、マルクスに必要になるかもしれないだろ?」


 実際、これ以上側室を増やすメリットはあまり無い。

 婚姻関係を結びたかったら、俺じゃなくて子供たちを結婚させればいいのだから。


 せっかくマルクスが産まれて安定して来た国内情勢を、余計な結婚で混乱させたくはない。

 それに、四人目はちょっと……体力的に……


 「……そう。なら良い」


 テトラの表情は変わらない。

 が、機嫌を直してくれたようだ。


 「と、取り敢えず次は庭だ。まあ、昨日入る時に見ただろうけど」


 俺は正門までみんなを案内する。

 正門を出ると、そこは広い庭園になっている。


 庭師に命じて、草木や花を植えさせた。

 俺には芸術的センスは一切無いため、分からないが……


 俺は二人の表情を確認する。


 二人とも、顔の表情が緩んでいる。

 気に入って貰えたらしい。


 「でも、私が育ててる毒草とかどうしよう? ここに植える?」

 「裏庭がある。普段は人には見えない場所だ。今は何も生えてないが……好きに植えてくれ」


 流石に正門から出てすぐの庭一面に麻薬畑のお出迎えは嫌だった。


 宮殿から真っ直ぐ北に進むと、まず見えてくるのは大きな城だ。

 大理石で造られた、機能性や防衛性よりも美しさを重視した城だ。


 「へえ、大きいね。前のお城よりも」

 「それに綺麗」


 まあ、キリシアの建築家と技術師を呼んで建設させたからな。

 そりゃ、前よりもみすぼらしかったら困る。


 もっとも、まだ彫刻とかそういう細かい内装には手を付けていない。

 王宮を飾り付けられるだけの彫刻を彫れる芸術家が居ないのだ。


  

 この城は行政の中心部。日本で言うならば内閣府に当たる。

 俺は勿論、執政官、法務官、税務官、按察官等が集まり重要な決定をする場所だ。


 つまり住む場所では無いので……


 「ちょっと寒くない? ここ」

 「まあ、人が生活する場所ではないしな」


 城の中に入っても、外とあまり気温は変わらない。

 ここで生活する、ということを前提に作られているわけではないからだ。


 まあ、部屋に入って暖房器具を持ち込めばそこそこ暖かくはなるが。


 「宮殿で生活するわけだし、ここが寒いのはそこまで問題じゃないだろ。さて、ここからが大変だ」


 俺は目の前の重厚な鉄の扉を開く。

 目の前に階段が姿を現した。


 「登るぞ。ちょっとした運動だ」


 







 「疲れた……」

 「産んだばかりの身にはキツイ……」


 俺の後ろでユリアとテトラが息を切らしている。

 一方、それとは対照的にアンクスとフィオナは競争と言わんばかりにどんどん上に登っていく。


 寒さもあまり気に成らないようだ。

 子供は風の子、元気の子。というわけだな。


 「ゴールが見えてきた。もう少しだ」


 俺は二人を励ましながら、階段を登りきる。

 そして再び姿を現した重厚な鉄の扉を押した。


 強い朝日が目に飛び込んでくる。

 ここは城の最も高い、尖塔の最上階。


 この国で、いやアデルニア半島で最も高い人口建造物の頂上だ。


 「ほら、どうだ。凄いだろ」


 塔の上から見下ろして、まず初めに目につくのは王城から十二方向に延びる広い道。

 その道同士を小さな道が繋いでいる。


 六つの丘の上にはすでに建築物が立ち並んでいる。

 

 多くの建物は城に比べるとはるかに小さいが……中にはいくつか大きな建物がある。


 図書館。

 競技場。

 闘技場。

 公衆浴場。


 俺が建築を命じた公共施設だ。


 また、都には人の歩く道とは別の道も整備されている。

 上流の川から引かれ、街を通って下流の川に流れ込む。


 上下水道だ。


 もっとも、上水の水はあまり綺麗とは言えない。

 川から直接引いてきているだけだからだ。


 まあ、そもそもアデルニア半島では水はあまり飲む物ではなく、飲料物は葡萄酒が主なのであまり問題ではないが。


 大事なのは下水だ。

 

 街は十メートル程の深さの水堀と、八メートルの城壁に囲まれている。

 街全体を囲う城壁としては、かなりの高さだろう。


 その外側には大平原……首都の人口を支える穀倉地帯が広がる。

 

 視線をゆっくりと、街の中心部に戻す。

 するとこの城が立つ丘の周りも城壁に囲まれていることに気付く。


 まあ、国政の中心部だから当然だが。

 と言っても、精々五メートルで掘りも無い。


 故にここまで攻め込んだ敵を迎撃するような機能はない。

 

 丘の斜面にはいくつも大きな館が立ち並んでいる。

 貴族の館だ。

 ちなみに、上に行けば行くほど貴族として有力者であることを示している。


 一番上は……ライモンド。その下にはバルトロ、イアル。そしてロン、ロズワード、グラム。

 その下はほとんどロサイス氏族系の館で、混在するようにアス氏族系の館が並ぶ。

 そして丘の下の方に、寄り集まるようにディベル氏族系の館が立っていた。


 少し、可哀想だな。


 城の南側に見えるのが、先ほど居た俺たちの生活空間である宮殿。

 東側は元老院が開かれる議事堂。

 西側は裁判所だ。


 そして城の北側には官僚たちが雑務を執り行う官庁が立ち並ぶ。

 ロズワードの指揮する近衛兵の基地や、呪術を研究する呪術院、魔術を研究する魔術院もこの場所にある。



 「凄い!! 凄い!!! 高い!!! こんなに高いところ、初めて!!!」

 「お母さま、私も見たい!!」

 「ぼ、僕も!」


 ユリアは大はしゃぎして壁から身を乗り出し、外を眺めている。

 フィオナもアンクスもつま先立ちをして、壁の外に広がる知識を見ようとしている。


 「……」

 「……どうした、テトラ」


 一方、テトラは俺にくっついたまま離れようとしない。

 

 「ふむ」


 俺はテトラの肩を掴み、軽く揺すった」


 「!!!!!」


 ビクリと肩を震わせ、へなへなと座りこんでしまう。


 「……高いのはダメ」


 そ、そうか……

 まあ、普通に生きてればこんな高いところに登ることは無いもんな。


 「ねえねえ、アルムス。一つ気に成るんだけど……ちょっとスカスカじゃない?」

 「そりゃあ、この街は設計上三十万の人口が生活できるけど今の人口は九万だからな」


 旧首都の人口が三万だったことを考えると、初期スタートが九万はかなり多い。

 

 旧首都の人口の多くを支えていた近衛兵や官僚は全員移住済みだし、それに加えて全国の貴族とその家臣が移住、人口増加に釣られて商人達が移住……という形で短期間に増加したのだ。


 とはいえ、残り二十一万のスペースがあるわけだからスカスカに感じるのは当たり前だろう。

 

 ……残り二十一万、埋まるかな?

 心配になって来た。


 まあ、それは兎も角……


 「あそこに闘技場が見えるだろ? 次はあそこに向かおう。さて、階段を降りるぞ」

 「えー、面倒くさい」

 「じゃあ飛び降りるか?」


まだ人口は少ないので、水道橋はありません

まあ、二十万到達したら作るんじゃないかな?

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