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異世界建国記  作者: 桜木桜
第六章 建国と王太子
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第百九十五話 国際外交Ⅲ

ごめん

忘れてたわ

最近、曜日感覚が狂っててね


土曜日も忘れるかもしれない

 「く、く、く……良い面をしていたな。アルムス王は」


 ファルダーム王は宮殿に戻った後、大笑いしながら側近に同意を求めた。

 側近は静かに頷く。


 「ええ、あの王もこれで反省するでしょう」


 ファルダーム王がアデルニア人解放戦争を提案したのには、いくつか理由がある。

 

 一つ、純粋に領土の拡張。

 ファルダーム王の国は北をロゼル、南をギルベッド、東をドモルガルに囲まれている。

 全方位が自国と同等、またはそれ以上の大国であるため領土拡張の余地が無い。


 連合軍でも組織しない限り、ファルダーム王の国に未来は無いのだ。


 二つ目の理由、それはロサイス王の国を疲弊させ、同時にアルムス王に灸を据えるため。


 アルムス王は対ガリア同盟を利用して、今まで領土を随分と拡張して来た。

 ハッキリ言って、腹立たしいことこの上無い。

 しかしロサイス王の国の軍事力が無ければロゼルと対抗することは難しい。


 とはいえ、このままロサイス王の国の増長を、指をくわえながら見ているわけにはいかない。

 対策を打たねばならなかった。


 しかし征服事業をやめろと言って、やめる男では無いだろう。

 あの頃の若者というのは、自分なら何でも出来ると驕ってしまいがちだ。こちらが圧力を掛ければ、対ガリア同盟を抜けると言いだしかねない。


 ファルダーム王はアルムス王を高く評価していた。

 だからこそ、敵対するわけにはいかないし、これ以上の増長を防がなくてはならない。


 アルムス王に正面から敵対しないようにしながら、征服事業の妨害をする。

 その為の策が、このアデルニア人解放戦争である。


 アルムス王が征服事業のために対ガリア同盟の維持を望んでいるのは明白だ。

 後ろの憂いが有る限り、軍事行動は起こせない。


 仮にアルムス王に三万、四万の大兵力を出せと言えば間違いなくアルムス王は対ガリア同盟から脱退してしまうだろう。

 

 しかしファルダーム王が要求したのは一万前後の軍だ。

 それに、戦争は二年間だけと定めた。


 この程度ならば許容範囲だろう。

 ロサイス王の国は対ガリア同盟で盟主的な立ち位置を維持することで、外交的な発言力を強めてきた。

 アルムス王には対ガリア同盟は絶対に必要なはずだ。


 その上、アデルニア人の解放と言う崇高な大義名分を掲げられ、他の二ヶ国が賛成に周ればアルムス王も嫌とは言えない。


 アルムス王は、征服事業を続ける限り対ガリア同盟の維持のために利益の無い戦争にも首を突っ込まざるを得ないというわけだ。


 しかしアルムス王にも利益がないわけでは無い。

 土地の配分は、話し合いと各国の活躍によって決まる。

 

 アルムス王もロゼルの土地を得られるからだ。

 尤も、アルムス王は土地ではなく金銭を要求してきたが。


 しかし金銭だろうが土地だろうが、遠征による出費の方が大きいことは予想出来る。

 これでロサイス王の国の増長に歯止めが掛かれば良い。


 アルムス王も征服事業の進みが悪くなれば、自然と反省するだろう。


 そして三つ目の理由。

 それは中央集権化。


 相手がロゼル王国ともなれば、四ヶ国連合とはいえ多大な犠牲が出る。

 その犠牲の中に豪族やその子息が含まれていれば素晴らしい話だ。


 その後、彼らの領地を没収してしまえばいい。


 現在、ファルダーム王の直轄地は国内の五分の一も満たない。

 これをせめて三分の一まで持っていくのが目標だ。

 

 






 「ファルダームの奴め、面白いことを言いだす」

 ギルベッド王は愉快そうに笑う。

 ロサイス産の葡萄酒が注がれたグラスを口元に持っていき、一口飲む。


 「……しかし王様。相手はあの大国ロゼルです。如何に四ヶ国連合とはいえ、簡単に勝たせてくれるでしょうか?」

 「何を言っている。前の戦では、ロサイスとドモルガルだけでロゼルを打ち破っただろう。これにファルダームとギルベッドが加われば、必ず勝てる。今はクリュウ将軍も忌まわしい魔女も居ないしな」


 ギルベッド王の楽観的答えに、側近は不安そうな表情を浮かべる。

 しかしギルベッド王は側近の表情には目もくれず、命令を告げた。


 「国内の豪族どもに連絡しろ。大戦だとな。……仮に出兵を拒む者が居れば、そやつはロゼルと通じている。兵を出さなければロゼルごと滅ぼすと伝えろ」

 「……はい、分かりました」






 「あれで良かったんですかね? 王様」

 「我が国に取って利益のある話だ。ただでさえ、内乱で三ヶ国に国力で大きく引き離された。これを機に回復させねば、どうにもならないだろう? 確かにアルムス王の不況を買ったのは不味いが……」


 ドモルガル王―カルロは、ドモルガル王の国の大将軍―トニーノとアデルニア人解放戦争について話し合いをしていた。

 ファルダーム王がアデルニア人解放戦争を持ちだしてきたのは、会談の二週間前であった。


 カルロとトニーノは頭を悩ませた。 

 この戦争は明らかにアルムス王への挑発だ。


 ロサイス王の国の友好国という立場を取り続けるのであれば、反対した方が良い。

 しかし……

 

 「そもそもいつまでもロサイスの顔色を窺うわけにもいかないだろう?」

 「おっしゃる通りです」


 ドモルガルは少し前までは、アデルニア半島で一、二を争う大国だった。

 いつまでもぽっと出の新興国の顔色を窺う……そんなことをすればご先祖様に顔向けできない。 

 

 「これを機に領土を拡張し、中央集権化を進める。トニーノ、お前が第一功を上げるんだ。……バルトロ将軍に負けるな」

 「あはは……まあ、ロサイスは適当に戦争をやるだけでしょうし……今回に関しては期待していてください」




 

 「はあ……面倒なことになった……」


 アデルニア人解放戦争。

 

 ガリア人に囚われているアデルニア人を解放しようという、大義名分の元にロゼル王国へ侵攻する。

 成るほど、確かに四ヶ国連合軍ならば可能かもしれない。

 今のロゼルは北部地域の内乱鎮圧に心血を注いでいるようだし。


 莫大な金が掛かるだろう。 

 しかしリターンは大きい。……我が国以外はな。


 「取り敢えず、領土の割譲は蹴り飛ばしてきた。あんな離れた領土、維持出来るか」


 利益が望めるどころか、逆に維持費が掛かる。

 今は南部の統治に忙しい。とてもじゃないが、飛び地を統治する人的猶予も資金的猶予も無かった。


 「代わりに金を要求してきたよ。これで大赤字は避けられる。赤字は確定だが」

 「……ところで、どれほどの軍を出せば諸国は納得するのですか?」

 「最低、一万は出すよね! ……みたいな空気だったな」


 一万の大軍を長期間、しかも遥か遠くの地に派兵する。

 どれほど金が必要になるか……


 「出兵はいつ頃ですか?」 

 「来年の春だ。……今からだとすぐに冬になってしまうからな」


 今は八月。

 今から迅速に兵を集めても、四ヶ国が全軍を集結出来るころには九月に差し掛かっているだろう。


 その後、二か月もすれば軍は動けなくなる。

 唯でさえ馴れない土地で、冬に軍事行動をするなど自殺行為でしかない。


 「ところで……勝ちますか? 負けますか?」


 ライモンドの問いの真意はこうだ。

 アデルニア三ヶ国の国力を伸ばすか、それともロゼルの国力を維持するか。


 アデルニア三ヶ国の国力が上がり、ロゼルの国力が低下すれば対ガリア同盟の存在意義は低下して、ロサイス王の国の国際的地位は低下する。

 一方、負けて三ヶ国の国力が低下してロゼルの国力が維持されれば……


 場合によってはどこかの国がロゼルに滅ぼされるかもしれない。

 そうなれば、西部征伐などやっている場合では無くなる。


 「リスクが少ないのは勝つ方だろうな。負けて撤退すれば、犠牲も出る。それに新たに獲得した領土で税がまともに採れるようになるまでは時間が掛かるはずだ」


 領土を得たからと言って、国力がすぐに上がるわけでは無い。

 新たに得た土地にはそれなりの投資をしなければならないのだ。


 だからすぐに三国の国力が上がるということは無い。

 むしろ国土の運営に金が掛かり、一時的に国力は下がるだろう。征服事業というのは、そういうモノだ。

 まあ南部遠征に関して言えば、都市国家との同盟関係なのでそこまで維持費は掛かっていないが。


 「しかしこの解放戦争、ギリギリで頓挫させられるかもしれない」

 「……そんなことが出来るんですか?」

 「上手くいけばな」


 俺はバルトロに解放戦争を頓挫させる秘策……というより思いつきを話した。

 バルトロは苦笑いを浮かべる。


 「それはまた……酷いことを考えますね」

 「最初に仕掛けたのはファルダームだからな。悪いのはあちらだ」


 とはいえ、この策は成功する可能性が低いしリスクも高い。

 一先ずは解放戦争に参加する方針を採っておこう。


 しかし指を咥えて時間を浪費するつもりは無い。


 「ファルダーム王は俺の西部征伐を邪魔しているつもりだろうが……良いだろう、受けて立つ。今年のうちに出来るだけ領土を拡張してしまおうじゃないか」


 第二次西部征伐を始めよう。






 旧ミエハリス家の屋敷……現在は西部征伐の拠点となった場所に、合計二万四千の兵力が集結していた。

 ロン、ロズワード、グラムがそれぞれ八千づつ兵を率いている。

 

 今回の西部征伐の作戦の概要は各個撃破。


 西部諸侯の持つ兵力は少なく、連合を組んだところで精々一万に達するか達しないか。

 しかしそれでも一万は脅威。


 故にイアルが外交交渉で各国に亀裂を入れた上で……

 三方向から一気に攻め落とす。


 現在は八月中旬。

 幸いにもアデルニア半島南部は暖かいため、戦争は十月末まで可能だ。


 約二か月もあれば、ギルベッド王の国と約束した境界線まで一気に領土に加えることが出来る。

 尚、戦争の大義名分だが……

 西部諸国の一部の国が、我が国同盟下のキリシア諸国に攻め込んだことへの報復である。

 まあ、ちょっとした小競り合いでこんなことは毎月起こっていることらしいが……


 アルムスからすればそんなことはどうでも良い。


 その一部の国に攻め込むから、軍隊を通らせろ。ついでに兵糧も寄越せ。あと、お前らも戦争に参加しろ。

 無論、各国は横暴な陸軍国(ロサイス王の国)の要求をすべて跳ねのけた。 

 しかしこの選択は利口とは言えない。

 

 何故ならアルムスは戦争の大義名分を探しているからだ。

 ロサイス王の国に敵対している、という立場を採れば侵略は避けられない。


 斯くしてアルムスは「我が国の友人に手を出した不届きものを討伐する。道中邪魔をする者、協力しない者も同様に討伐する」と布告し、西部諸国に宣戦布告した。


 少々強引な言い分ではある。

 しかしロゼル王国との戦争で一万以上の兵が国内から消える前に勝負を決しておきたいというのがアルムスの考えだ。


 とはいえ、何の策も無しに二か月で征服を終わらせるというのは危険だ。

 というわけで、アルムスとバルトロは一つ策を施した。

 

 それは……


 「良いか!! この戦争で尤も多くの国を落とした軍には多くの報酬……金や土地が約束されている!! 勝つのは第一軍だ!!」


 ロンが兵士に向かって声を張り上げると、兵士たちが歓声を上げる。

 時を同じくして、少し離れた場所からも歓声が上がる。


 グラムとロズワードがロンと同様の内容を兵士相手に演説したのだ。


 実はこの戦争に参加している兵士の多くは、小作人や農家の次男、三男だ。

 アルムスが敢えて、そういう構成にしたのだ。

 尤も、あくまで重装歩兵用の武器を取りそろえられる者や借りられる者に限ってだが。



 「「「行くぞ!!!」」」

 

 「「「おお!!!!!」」」


 こうして第二次西部征伐が開始された。


感想返しも滞ってるけど、ちゃんと目は通してるから

毎日、皆さんの感想を糧に生きてます


最近はそれ以外、楽しみが無くてね


そう言えば、最近グーグルクロームのお気に入りを誤って削除してしまった

いろいろやったけど、もう戻せない、戻らない

今思うと、あれは現在の状況への大きな伏線だったのではないか? と思ったりする


と、意味深なことをあとがきに書いてみる

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