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異世界建国記  作者: 桜木桜
第六章 建国と王太子
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第百八十三話 妊娠Ⅱ

危うく忘れるところだった

最近は曜日の感覚が狂ってきてる

 「イスメア、首都の建設は進んでいるか?」

 「少し予定よりも遅れていますが、支障はありません。おそらく、十一月末には」


 遅れている理由は戦争でのゴタゴタだろう。 

 あれで動員する人が減ったり、予算が軍事に採られたりしたのだ。


 「なるほど、丁度良さそうな時期だな」

 「何がですか?」

 「いや、何でもないよ」


 俺は首を横に振った。

 さて、イスメアを呼び出したのは首都の建設の経過を聞くためだが、もう一つ理由がある。


 「お前、軍備には詳しかったか?」

 「……まあ、詳しく無かったら城壁も作れませんし。キリシア半島の都市国家、クラリスの城壁は私の父が建設したものですし。陥落しましたが」


 ……まあ、陥落しない城壁は無いから仕方が無いだろ。

 難攻不落の城というのは実現しないのだ。


 「首都建設が終わったら、レザドの街の改革に着手して貰えないか?」

 「レザドですか?」


 俺は頷いた。

 レザドという都市は実のところ、我が国が所有する最大の人口を誇る都市である。


 レザドの都市圏には八万人も人口がある。

 ……ちなみに、我が国の首都の都市圏に住む人間は三万人である。何とも言い難い気持ちになる。

 

 さて、このレザドだが……

 人口が多いだけあって都市問題を抱えている。


 移民や出産による人口増加の結果、都市そのものが無尽蔵に増え続けた結果だ。

 まあ、それだけ発展して来たとも言えるが。


 道は複雑に入り組んでいて、建物と建物の間隔は非常に狭い。

 一軒家を持つのはごく僅かな富裕層で、大概の市民はインスラと呼ばれるアパートのような多層型共同住宅に住んでいる。


 酷いのが、ゴミや糞尿をこのインスラの窓から地面に捨てるのだ。

 だから道を歩くときは常に上を警戒しなければならない。


 無論、下水も上水もゴミ塗れで汚れている。


 さらに酷いのはスラム街の存在。

 レザドは貧富の差が激しい。


 インスラに住むことが出来るのは、高い人頭税が払える一級市民だけで、人頭税が払えない市民はまともな家が無い。

 無論、屋根が無いところでの生活は大変なので、大概の人間は自作の家を作る。


 これがまあ……酷い。

 汚い、燃えやすい、臭いの三点揃い。


 今はアレクシオスや元レザド議員たちを通して、レザドの政治改革を行い、比較的改善してきてはいる。

 しかし、街そのものに問題がある限り根本的な解決に成らない。


 割れ窓理論というのを知っているだろうか。

 窓が割れている場所があると、人間は心の底で「ここは悪いことをしても良い場所だ」と思い、ゴミのポイ捨てや落書きを繰り返す。すると、エスカレートしていき最終的には強姦や殺人に繋がる……という理論である。


 流石にガラス窓のついた家が庶民に普及しているほどこの世界の文明は発達していないが、割れ窓に相当する場所……暗かったり、汚い場所はある。


 これを排除しなければならない。


 「ついでに、対ポフェニア対策に城壁の強化と港の整備もしたい。出来るか?」

 「まあ……私の故郷はクラリスですし。そういうことに関してはそこそこ詳しい自負がありますが……街を一から作り直すとなるとそこそこお金が掛かりますよ?」

 「どれくらい?」

 「今建設中の首都と同じくらいですね」


 ……結構掛かるな。

 

 「しかし今の首都は湿地の埋め立てとかに金を使っただろ? レザドはすでに土地に関しては……」

 「今あるモノを壊すのにもお金が掛かるんですよ? ……実のところ、資材を再利用するよりも粉々に砕いてしまった方が早くて安上がりです。火の秘薬を使わせて頂ければ、二割くらいは費用を減らせると思います」


 粉々にぶっ壊すのか……

 勿体無いような……でも、時も金も節約出来るならその方が良いか?


 [まあ、一先ず計画と見積りを作ってみてくれ」

 「分かりました、陛下」


 イスメアは嬉しそうに笑った。 

 何だかんだで楽しそうである。



 


 「というわけで、エインズ。ペルシス帝国とゲルマニス地方に使節団を送ろうと思うんだが、どういう日程が良いかな?」

 「そうですね……ライモンド様が出発出来るのは一年後でしたよね? 一先ずは使者を出して一年後にペルシス帝国の皇帝に謁見したいという意思を伝えるのが宜しいかと」


 エインズ曰く、ゲルマニス地方に使節を送るよりも先にペルシス帝国との関係を良好にしておいた方が良いらしい。

 というのも……


 「ペルシス帝国の皇帝は別名、『諸王の王』と呼ばれています。つまり、王の中の王を名乗っているわけです。ペルシス帝国の皇帝に『王』と認められれば国際的な立ち位置が明確になります。その後、ゲルマニス地方の諸部族と交渉に臨んだ方がスムーズに行くかと」


 つまり焦りは禁物ということか。


 「しかしペルシス帝国の皇帝に王と認められる……というのは、ペルシス帝国の家臣になるということだろう? 国内の反発が怖いな」

 「……では、アデルニア人とキリシア人の代表である。という肩書にすればどうでしょう? ポフェニア共和国はそういう形でペルシス帝国との属国関係を回避しています」


 なるほど、なんちゃって共和国家を名乗れば良いのか。

 うーん、でも王制国家が共和制を名乗るのは出来ればしたくないな。


 何か良い手は無いだろうか。

 流石に、現段階で聖徳太子の真似は通用しないと思うんだよな……


 「キリシア人はペルシスを憎んでいます。形だけとはいえ、臣下に下るような形は避けた方が宜しいかと」

 「そうだな……まあ、ペルシス帝国の皇帝に認められなくとも、アデルニア人やキリシア人に王として認められればそれで十分だしな」


 キリシア人は俺の事を王と認めてくれているだろうか?

 微妙なところだ。

 キリシア人の心を掴むには、一つ、何かが致命的に足りていない気がする。


 最後のピースはどこに落ちているのか……


 「お前はどう思う?」

 「そう言われましても……そもそもキリシア人は王政に対してあまり良い感情を持って居ませんし……アデルニア人に対しても……」


 そうだよなあ……

 軍事力は認めても、俺と付き合うことで利益があるということを認めても、最後の最後ではキリシア人はキリシア人なのだ。


 プライドが高すぎる。

 面倒だな……



 その日は一日、エインズとキリシア人について話し合った。







 三月の中頃……

 テトラが満面の笑みを浮かべて言った。


 「妊娠した」

 「それは良かった!!」


 俺はテトラを抱きしめた。

 今回はユリアと一か月差だな。ユリアの出産が十月くらいだから……テトラは十一月くらいか。


 冬だな。

 少し危ない。


 「男の子が良い? 女の子が良い?」

 「どっちでも良いさ。……でもテトラとの間にはもうアンクスが居るし、どちらかと言えば女の子かな?」


 少し、政治的に汚い話をすると……

 女の子が多い方が政略結婚の手段が広まる。


 あまり親としては褒められない考えだが。


 「元気な子を産む。応援して」

 「はは……俺には応援するしか出来ないからな……」


 この世界では出産は本当にリスクが高い。

 だから妊娠したという知らせを聞くたびに、喜びと同時に不安が首を擡げてくる。


 無論、世の中には子供を失う親よりも子供を無事に産む親の方が多いのは理解しているし、アルコール消毒のおかげで産褥熱のリスクは大きく減っているのも理解はしているのだが。


 「……ねえ、アルムス。今まで黙ってたけど、聞いて良い?」

 「何だ?」

 

 テトラは真剣な表情を浮かべる。

 俺の袖を引き寄せ、耳元に口を当ててくる。


 「アンクスってどうなるの?」

 「……どう、というのは?」


 テトラは少し不安そうに、か細い声を出す。


 「……ユリウス・ロサイス家はユリウス家宗家として皇帝を排出する家柄になる。それは分かる。でも……ユリウス・アス家はどういう立場になるの?」


 「臣籍に下って、ユリウス・ロサイス家を支えて貰う貴族家に成って貰うつもりだけど……どうして?」

 「……外国に婿養子として出すことは出来ない?」

 「それは出来ない。……理由は分かるな?」


 仮にアンクスが……そう、ドモルガル王の国に婿養子として婿入りし、ドモルガル王に成ったとしよう。

 もし、もしアンクスが……いや、それは考えたくないな。


 アンクスの息子か孫が王位継承権を主張して、ロサイス王の国に……ユリアと俺の子の国に攻め込む……などということに成れば、大変なことになる。


 少なくとも、俺の息子に関しては外国に婿養子として出す気は無い。

 王に成れなかった息子たちはちゃんと臣籍に下りて、貴族になって貰う。


 俺は自分が将来、どれだけの人物として語り継がれるか分からない。

 もしかしたら途中で失敗し、ただの侵略者、略奪者として名前を残すかもしれない。


 それでも……俺の覇道が続き、建国に成功したならば……

 俺は初代国王になる。


 その直系の子孫の血には大きな政治的な意義が宿るだろう。

 

 それは時に災厄を呼ぶ。

 だから直系の血は外に出さない。


 「そう……ごめんね、変なことを聞いた。別に、そんなつもりとか、無いの。本当、だから……」

 

 俺は震えた声を上げるテトラを抱き寄せた。

 テトラは俺の胸に顔を埋める。


 「……ごめん、妊娠して変な気分になってる。暫く……こうさせて」

 「ああ、気が済むまで付き合うよ」


 俺はテトラの髪を優しく撫でながら答えた。

 

 何となく……テトラの「ごめん」は俺に対してだけじゃない気がした。


今年は正月無いんだよなあ……

はあ……

来年はいい年になりますように


なったらいいなあ


そう言えば、俺が『異世界商売記』(処女作)を投稿したのは2015年の1月2日……

もう二年か……

気付けば累計作家。出世したモノだね、うん。


確か、異能バトルは日常系の中でっていうアニメに出てきた、ワナビーヒロインを見て触発されて書き始めた記憶がある。


そう言えば、中学生の春休みに書いた小説の設定集が最近発掘された

割と面白い内容だった


俺はあのころからきっと才能があったんだな!

……今でも思考が中学生、の方が真実に近いな



ここで一つ、設定の裏話? 制作秘話? みたいなのするけど

この作品の主人公の名前は『アルムス』だけど、これは五秒で考えた

商売記の方で歴史の話する時に

「初代皇帝名前何にしよう? アルムスって語感良くね! まあ、この話だけだし適当で良いか!!」

というノリだった

すまん、アルムス。お前の名前、この作中で一番適当なんだ。脇役以下なんだ。


尚、アルムスほど適当な扱いじゃないけど当初はそこまで重要じゃなかったけど知らん間に出世した登場人物は、テトラ、バルトロ、イアルの三人。


テトラ……ただの女の子A。取り敢えず、森の孤児メインは五人。男三人、女二人が調度いいだろう。のうち一人。知らん間にアルムスに惚れてた。いつの間にか、大出世。

バルトロ……ただのアル中親父。ギャグ要因。お前、名将だったんだな。

イアル……役割など殆どない。村長A。お前、一番わけ分からんわ。何者だよ?


今後の三人の出世にご期待ください。


逆に重要人物のはずだったけど、扱いが微妙になったのはカルロ。いや、今でも重要なんだけどね?

あと、あいつ、ドモルガル王の国の豪族。なんか、服の名前だった。やばい、忘れた。まあ良いか。


そして最初から重要人物として出して、今でも輝いてるのはアレクシオス。流石イケメン。



最後に、前にアンケートで好きなキャラを聞いたので俺もこの作品で好きなキャラを三人書いておこう。


3位 バルトロ

2位 テトラ






一位 マリリン


尚、未登場キャラも含めると

3位 M君

2位 Mちゃん

1位 マリリン

になる


アルムス?

あいつはレギュラーの中だと下から数えた方が早いよ

クリュウ将軍より下

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