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異世界建国記  作者: 桜木桜
閑章Ⅴ 小国と大国と超大国そして魔女
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第百七十七話 黒崎麻里Ⅰ

パロネタって難しいわ

慣れないことはするモノじゃないね


 「起きなさい、麻里。もうみんな起きてるわよ」

 「……お姉ちゃん?」


 姉……黒崎愛梨の顔を見た時、私の脳裏に浮かんだのは疑問だった。

 お姉ちゃんは東京の某有名大学に通っていて、私たちとは違うところで暮らしていたはず……


 「何でお姉ちゃん、居るの?」

 「何寝ぼけているの。昨日、遊びに来たんでしょ」


 ああ、そうだった……

 八月に入り、お姉ちゃんの大学は夏休みに成ったんだっけ。


 それで東京まで遊びに来たんだ。


 「もう萌亜メアは起きてるわよ。……あなただけよ、朝弱いの」

 「ん……今起きる……」


 私は目を擦りながら洗面台に向かい、歯を磨く。

 洗顔用石鹸と洗顔ネットを手に取り、泡立てる。


 正直面倒くさいけど、アイリお姉ちゃん曰く油断するとニキビが出来るからしっかり洗顔しなさい、とのことだ。

 私の顔にはニキビなんて無いし、出来たこともほとんどない。

 あんなのただの体質の問題だと思うんだけどなあ……


 顔を洗い終えると、意識がハッキリしてきた。

 うん、大丈夫。


 私は洗面台から出て、ダイニングに向かう。

 すでにアイリお姉ちゃんと妹のメアはテーブルに座っていた。


 「マリお姉ちゃん!! 遅い! 三十秒で支度しな!」


 メアが頬を膨らませる。

 メアは中学二年生。人生で一番イタイ時期だ。


 その所為か、アニメや漫画、ライトノベル、ネット小説で覚えた言葉を度々使う。

 正直、私は全然分からない。


 アイリお姉ちゃんは少し、分かるみたいだけど。


 「もう支度終わったわ。今、行く」


 私は席に座った。

 三人で手を合わせる。


 「「「頂きます!!」」」







 「ああ!! ちょっと、メア! それ私のウィンナー! 返しなさい!」

 「ダメ、もう食べちゃったもん」


 メアは口を大きく開けて、ウィンナーが自分の胃袋に入ってしまった事を示した。


 これで何回目か分からない。

 メアに食べ物を奪われるのは。

 

 この子は好きあらば、人の食べ物を横から掻っ攫っていくのだ。

 三女だからって、甘やかされて育った所為に違いない。


 「メア、あなた何回人のモノを取ったら気が済むの! 私の食べ物を横から取るのはやめなさい!」

 

 するとメアは立ち上がり、椅子の上で仁王立ちになった。

 そして自分の指で自分の口を指し示しながら叫ぶ。


 「お前は食ったパンの枚数を憶えているか!!」

 「っぶ……」


 アイリお姉ちゃんが何故か噴出した。

 私だけ元ネタが分からない……今度貸して貰おうかな。


 「……もう良いわ。勝手にして」

 「勝った! 第三部完!!」


 アイリお姉ちゃんが爆笑した。






 朝食を食べ終えた後、私たちはゲームセンターの向かった。

 昼まで遊び尽くす計画だ。


 「喰らえ! ファイナルフラッシュ!!」


 メアが後ろから緑甲羅を投げつけて来た。

 三連発、それも適当に投げたわけでは無い。


 反射まで織り込んだ、計算し尽された攻撃だ。


 「っぐ……」


 私はそれをどうにかして避ける。

 うーん、こういう車を操縦するタイプのゲームやるとどうしても体が動いてしまう。


 「あぎゃあああ!!」


 メアが悲鳴を上げた。

 私が後ろに置いて於いたバナナに滑って転んだみたいだ。


 ちゃんと画面は見ないとダメよ。


 「メアが私に勝つには後、百年早いわね」

 「何を……うりゃあああ!! ブルーエクスプロージョン!!」


 何のことは無い。

 ただのドリフト時に出てくる青い炎である。


 「しかし上手い……流石我が妹。やるわね」

 「ふふん、年齢の違いが戦力の決定的差では無いことを教えてやる。……まあ、私のおっぱいは早くもマリお姉ちゃんを抜かしそうだけどね!」

 

 っく、生意気な厨房め。

 目に物を見せてやる。


 私は期待を込めて、アイテムボックスに車をぶつける。


 来い!!


 「うう……またバナナ……」

 「やーい、バナナ女!!」


 後ろから赤い甲羅が飛んでくる。

 うわ、面倒くさ。


 しかし、私のバナナは三連結型。防いで見せようじゃないの!


 「ふふ、流石マリお姉ちゃん。一度目は防いだか……でも、私にはあと二発ある。お姉ちゃんはバナナを失い、全裸! 勝った! 第三部完!!」


 その瞬間、私とマリの車が吹き飛んだ。

 な、何が……


 「同じネタを二回も使うからそうなるのよ」


 何と、ミサイルに変化したアイリお姉ちゃんが私たちを引き飛ばしたのだ!

 アイリお姉ちゃん、毎回運良いよね……


 その後、私たちと圧倒的な大差を付けてアイリお姉ちゃんが一番で勝利した。


 「ゴールイン! 勝った!!」


 アイリお姉ちゃんは二十歳になったにも関わらず、両腕を上げてガッツポーズ。


 一番はアイリお姉ちゃん。

 次は二番と三番争い……

 

 つまり私とメアの一騎打ち!


 私は祈りを込めて、アイテムボックスに触れる。

 来い! バナナ来るな! 来い! バナナ来るな……来た!!


 これで勝った!!


 「よし、勝った!!」 

 「勝った!!」


 同時にメアも声を上げた。

 むむ、メアも良いのを引き当てたのか。


 「ふふ、マリお姉ちゃん覚悟は良い?」


 メアはドリフトを繰り返してどんどん距離を詰めていく。

 私もドリフトを繰り返して速度を上げるけど……悔しいことにドリブルはメアの方が上手いのだ。


 いつの間にか、メアは私のすぐ後ろまで迫っていた。


 「私の波紋を喰らえ!!」


 その瞬間、メアの操作しているキャラクターが虹色に変化した。

 っく、当たったら死ぬ。


 「オラオラオラオラオラア!!」

  

 メアは右に左に動き回り、私を吹き飛ばそうとしてくる。

 っく、耐えろ、何とかして避けるんだ、私! 


 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!! 大人しく死になさい!!」

 「メア、キャラが安定してないわよ」


 アイリお姉ちゃんが高見の見物をしながら妙な突っ込みを入れているけど、そんなことはどうでも良い。

 今は避けることだけに専念する!!


 「っく……命拾いしたな!!」


 何とかメアの猛攻を避ける。

 これでメアに手は無い。


 「じゃあメア。死んでね」


 私は遠慮容赦なく、スターを使った。


 「き、貴様も波紋を纏えたのか……」


 吹き飛ぶメア。ゴールする私。

 勝った!!


 「うう……い、一番と最下位の差なんて大したことないもん。ゴールすることとしないことに比べれば大したことないもん」


 負け犬のセリフが聞こえるなあ!!






 「次はどこに行きたい?」

 「私、原宿に行ってみたい! 服買いたい!!」


 アイリお姉ちゃんは六法全書や日本国憲法を諳んじたり、共産党宣言や我が闘争を原文で読む変態女だ。

 メアは中二病真っ盛りの、イタイ女の子。


 しかし私は普通におしゃれが好きな、普通の女子高生だ。少なくとも自分は普通だと思う。

 だから原宿に行きたい!


 「えええ!! 秋葉原行こうよ。アキバ! アキバ! アキバ!!」


 「嫌よ! 昨日も行ったじゃん!!」


 「まだ全部周ってないよ。それに、ほらマリお姉ちゃん魔法少女コス着てノリノリだったじゃん」

 

 「そ、それはアイリお姉ちゃんとメアが無理やり……」


 私の脳裏に魔法少女アイリンとマーリンとメアリンが浮かぶ。

 私は強引に黒歴史を頭から消去した。


 「兎に角! 原宿!」

 「はいはい、じゃあ原宿ね。メア、秋葉原は明日行こうね」

 「うーん、仕方が無いなあ……」


 あっさりメアが引き下がった。

 今日は自分の要求は通らないと最初から分かってたんだろう。メアはそういう子だ。


 ダメ元で駄々を捏ねるけど、ダメだと分かったらあっさり退く。

 ああいう、器用なところは羨ましい。


 「じゃあ、行こうか!」 

 「「ハーイ!!」」


 




 「ねえ、アイリお姉ちゃんはどんな人と結婚したい?」


 メアが突然、アイリお姉ちゃんに尋ねた。

 アイリお姉ちゃんは首を傾げる。


 「どうしてそんなことを聞くの?」

 「私、月に三回くらい男子に告白されるんだけど……恋愛って分からなくて……」


 その気持ちは分かる。

 私も月に何度もラブレターとか、告白メールを貰う。


 でも恋愛っていうのがよく分からなくて、全部断っている。


 「あはは、マリもメアも私と同じようにモテるからね。という私も、大学に来てから月十回はデートのお誘い来たけどね。全部断ったわ」

 「何で?」

 「お姉ちゃんも恋愛に興味ないの?」


 私とメアの質問にアイリお姉ちゃんは答えた。


 「私は英雄が良いの。兵士を率いれば必ず勝ち、演説をすれば民衆がたちまちそれを支持する。表向きは善人ぶってるけど、腹の底では虚栄心と野心に満ち溢れている……そんな俗物が良い。そんな人の女に成りたい……」


 そんな風に語るアイリお姉ちゃんの目は完全に乙女だった。

 うーん、これは万年処女タイプかな。


 「そんな人、滅多に居ないでしょ」

 「でも歴史を紐解けば過去に居たのは事実だし。あーあ、日本の最高学府に来れば面白い人がいると思ったんだけどなあ……やっぱり平和な日本じゃダメだね。芽が出ない。そういう人が出てくる土壌がある、過去でも異世界でもなんでもいいからそこで生まれたかったなあ」


 何言ってるんだ、この人は。


 「お姉ちゃん、そんなことを言ってると一生処女だよ?」

 「そうよね……まあ、最悪自分で育てるわ」


 私はアイリお姉ちゃんの目をしっかりと見つめた。

 その瞳は美しく、透き通っている。やばい、本気だ。こいつ、どうにかしなきゃ。


 「メアは?」

 「私? うーん、特に好きなタイプは居ないかな。……試しに恋愛してみようかな?」


 悩み始めるメア。

 理想を追い求めるアイリお姉ちゃんを見て、こんな高望み女には成りたくないと思ったんだろうな。


 「マリは?」

 「私……は、分からないかな?」


 でも……婚前交渉はしたくな……かな?

 出来るだけロマンチックに卒業したい……というか……


 「あー、マリお姉ちゃん顔赤くなってる。エッチなこと考えてたでしょ。やーい、むっつりスケベ!」


 う、五月蠅い!!

 

 メアと言い争いを始めてしばらくして、隣を見るとアイリお姉ちゃんが腕を組み、目を瞑っていた。

 私はメアと顔を合わせる。


 「アイリお姉ちゃん、『読書中』みたいだね」

 「本当、どういう頭の構造してるんだろうね。下手な漫画や小説の主人公よりもお姉ちゃんの方がチートだよ」


 私たちは肩を竦めた。

 曰く、一度見た物は全て写真のように記憶できるらしいけど……


 それからしばらくして、電車が減速し始める。 

 目的地が近いのだ。


 電車が止まると、アイリお姉ちゃんは目をパッと開き、立ち上がった。


 「あ、電車止まったわ。行きましょう、二人とも」


 アイリお姉ちゃんが私の右手を握った。

 私は左手でメアの手を取る。


 メア、私、アイリお姉ちゃん、という並びだ。

 三人で電車から降りて、改札に向かおうとした時……



 それは起きた。




 ぐにゃり



 世界が曲がった。

 ウネウネと世界が歪む。揺れる。


 きもちわる……


 「な、何が起きてるの? お、お姉ちゃん、怖いよ……」


 メアが泣きそうな声を上げる。

 私も分からない。

 

 ただ、何か、とてつもなく悪い予感がする……


 「手を絶対に離さないで」


 いつになく緊張した声でアイリお姉ちゃんは私の手を固く握りしめた。 

 私もメアの手を強く握る。


 いつの間にか、視界は暗転していた。

 今まで周囲を歩いていた人はいつの間にか消えている。


 こ、ここは……

 うう、揺れる……頭がおかしくなる……



 ―また客人?―

 

 ―呼んだのは誰? またあなた?―


 ―僕じゃないね、君じゃないの?―


 ―私なわけないじゃない。あなたじゃないなら……―


 ―なあなあ、いつも俺を黒幕扱いするの、やめてくれない? 俺じゃないよ―


 子供のような声が頭の中を駆け巡る。

 何か、良くないことが起きている。


 でも!


 「さ、三人なら、何が有っても怖くない!」


 私が叫んだ瞬間……

 両腕が熱くなった。


 「……あれ?」


 私の手首から先が無くなっていた。

 視界が揺れる、遅れて痛みがやってくる。


 「痛い、痛い、痛い!!!」


 気付くと、私は森の中にいた。

 空を見上げる。


 そこには私の知っている月よりも遥かに巨大な満月が輝いていた。


 ここは……どこ?


 ―ようこそ、招かれざるお客さん。よく分からないけど、取り敢えずその怪我は僕が何とかしてあげよう―


 子供の声が響く。

 気付くと手首は元通りになっていた。


 私は何とか立ち上がる。

 痛みは消え去っている。それでも手首が一度無くなったショックからは脱しきれない。


 「ここは……アイリお姉ちゃん!! メア!!!」


 私の叫び声は虚しく闇夜に消えた。








 ―しかし、疑問なのは腕が切れた点だよ。普通、転移では肉体についているモノは一緒についてくるからね―


 「またその話?」


 麻里は不機嫌そうに虚空に話しかける。

 彼女は悪夢を見たせいで、気分が悪いのだ。


 そう、転移した直後の、幸せが絶望に叩き落とされる時の夢を……


 「何度もその話は聞いたわ。結局、分からないんでしょ。アイリお姉ちゃんの居場所も、メアの居場所も」


 ―まあね。ただ飛ばされた時間軸は時空の揺らぎからある程度推測できるよ。麻里が転移してから、数百年から千年以上のズレがある、ということは分かるね。良かったじゃない、万年、億年離れてたら出会うのは至難だったよ―


 「意味ないのよ、それじゃあ」


 麻里はため息をついた。

 肝心な時に役に立たない妖精だ。


 ―しかしね、本当に謎なんだよ。保守派や愉悦派の言うことを信じれば、これは誰も意図しない転移なんだ。転移の発生条件の最後の後押しは僕らだからね。でも僕らは今回、何もしていなかった。それに加えて手首の切断……―


 ―もしかしたら僕らが観測できない、別次元の存在が干渉してきたのかもね―


 「あなたたちが干渉出来ないなら、尚更私には無理よ」

 

 ―いやいや、魔法さえ身に付ければ別な話だよ?―


 楽しそうに妖精は笑う。


 「……そのヒントを求めに今南大陸に向かってるのよ。出航は明日よ、覚悟は良い?」


 ―ハイハーイ、覚悟完了です!―


アイリさんは、カエサルやナポレオンみたいな人に強引に滅茶苦茶のグチャグチャにされたいという、罪深い性癖(レイプ願望)を持ってる

つまりアイリさんが某有名大学に進学したのはそういう「面白い人」に滅茶苦茶のグチャグチャにされるため

まあ、カエサルもナポレオンも平和な時には居ないでほしいタイプの人間なので、居なくて良かったということになる


そんな脳味噌下半身女のアイリさんがどれくらい頭良いのかというと、作中の古今東西五本指に入る

とはいえ、脳味噌下半身なので政治が出来るかと言われると微妙なところ。多分政治家としてはアルムスの方が遥かに上。

天職は教師か弁護士。

とにかく頭が良く、切り替えの良い人なので転移先が文明社会なら生きていけると思われる。


メアちーは厨二系女子だけど、故に異世界適正も高い。

マリリンは……まあ、昔は普通のJKだったから中々厳しい。今は元気?そうだけど。


アイリンの妹のだけあって、マリリンもメアちーも割と頭が良い方だったりする。地元では有名な才色兼備姉妹だった。皆さんが一番気に成るであろう、三人の最大カップ数はア、マ、メの順にCBD。

補足だが、三人の両親は離婚している。旧姓は黒須。三人が優秀なのは黒須さん(父親)の種子が非常に優秀だったからである。

マリリンは母親の方が好きみたいなので、黒崎姓を名乗ってるけどアイリンとメアちーがどちらの姓を名乗るかは謎。



さて、三人は会えるのかな? (すっとぼけ)


マリリンの過去編はエグイ上にグロくて、胸糞悪い、その上長いので続きは次章の閑章に持ち越し。

みんなも長々と敵キャラの過去編やられたら、たまったもんじゃないだろうし。


というわけで、次章は六章。タイトルは未定だけど『建国と、うんたらかんたら』になると思われる。

全部で十一章前後の予定なので、丁度折り返しだと思う。

ここまで来たことだし、最後までよろしくお願いします。


追伸

書き溜め節約のために、土曜日の更新はお休みします。

次話は来週の水曜日です。許して、テヘペロ。

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