表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界建国記  作者: 桜木桜
第四章 包囲網と蜘蛛
134/305

第百三十四話 魔法

グリフォン様の住む禁忌の森はロマーノの森という名称でした

この小説がなんちゃってローマ風世界なのはもう分かってると思います。

ロマーノの森はローマから採ってました。

だけど有る時ふと、「まんますぎないか?」と気に成りだしてしまったので、『ロマリアの森』に変更します。

過去に、どこにロマーノの森と書いたかなんて覚えてないですし、修正するのも正直面倒なので、今回からロマリアの森、と切り替えてください

 「ロサイス王様、私は一足先にレザドに帰還します」

 アレクシオスは俺に向かって一礼した。

 軍隊の維持には金が掛かる。

 アルドの処刑という戦争の後始末を見終わったレザドに軍隊をこれ以上維持する理由は無い。


 早く解散してしまいたいのだろう。


 「そうか。……ところでアレクシオス殿」

 「何でしょう?」

 「我が国に仕官するつもりは無いか? 君のような優秀な人材をただの傭兵隊長で終わらせるのは惜しい」


 まあ、我が国も小国だが……

 俺は戦争が得意ではない。


 そこそこ経験も付いてきたので、凡将相手ならば十分に戦えるが……

 これから我が国が領土を拡張していくとするならば、幾度もクリュウ将軍のような相手と戦うことに成るだろう。

 二正面作戦を強いられることもあるかもしれない。

 そう言う時に、バルトロの代わりが出来る人間が欲しい。


 アレクシオスの能力はこの戦争で十分分かった。

 彼が俺に仕えてくれるなら、これだけ心強いことは無い。


 「……私は、私を受け入れてくれたレザドに恩が有ります。故郷を捨てた身ですが、受け入れてくれた国から勝手に出て行くほど恩知らずではありません」


 つまり俺の誘いには乗ってくれないということか。


 「確かにあなたに仕えれば、今より豊かな生活が送れるようになるかもしれない。あなたは偉大な王だ。あなたに率いられたロサイス王の国はますます発展することでしょう。勝ち馬に乗る、という意味では正解だ」


 うん?

 そう思うならどうして拒む?


 レザドは商人の国だ。

 アレクシオスが利益に釣られて出ていくことを非難する人間は居ないはずだ。


 優れた傭兵や将を引き留めるには、大きな対価がいる。

 それが分からないレザドでは無い。


 別に気にしなくてもいいと思うんだけどな。


 「私にとって一番大切なのは妻で、次に大切なのは我が子です。豪族に成れば柵を増えるでしょう。時には国のために家族を捨てなければならないかもしれない。それが兵士であり、将であり、豪族であり、貴族です。責務を負う者の責任です。……しかし私にその覚悟は無い。家族より国を優先することは出来ません。だから私はあなたの誘いを受けることは出来ません。御無礼をお許しください」


 そうか……

 まあ、そういうことなら仕方が無いか。


 「分かった。引き留めて悪かったな。無理にとは言わない。もし、何かあったら連絡をくれ。出来るだけ助けになろう。……君の気が変わったらいつでも我が国に来てくれて構わない」


 「折角の御好意を無碍にした私にそのような心遣いを……ありがとうございます」


 アレクシオスは再び深く礼をして、立ち去った。

 

 ……どうすればあいつをレザドから引き抜けるかな?







 



 「というわけで、無事に帰って参りました。お義父さん」


 本国に帰国後、俺はまず先代ロサイス王の元を訪れた。

 久しぶりに会ったお義父さんは……結構、元気そうだった。


 「ここは空気と水が綺麗で、静かだ。温泉も湧く。国王などと言う、面倒な仕事は義息子に押し付けた。体調は万全だ」


 お義父さんはそう言って笑った。


 「それに曾孫を見るまで死ねない」

 「はは……頑張ってください」


 俺は苦笑いを浮かべる。

 曾孫ということは、最低でもアンクスとフィオナが成人しなければならない。

 あと十五年か……


 「俺の寿命の話は良いだろう。……君の話を聞かせてくれ。戦争の経過と終わりについて、君の口から、全て」

 「分かりました」


 俺は大きく頷いた。





 「一番驚いたのは魔女マーリンが俺と同郷の人間ということでしたね」

 「同郷? どういうことだ?」


 お義父さんは眉を顰めた。

 あれ? 話してなかったっけか?


 ……そう言えばだれにも話したことが無かったような気がするな。


 別に話したからと言って害になるわけでも無い。

 話してないからと言っても害になるわけでも無い。


 これが一神教の国だったら、「邪教徒! 狂人だ!!」と言われて殺されてしまうが、アデルニア半島では「俺は神の息子です。母さんが神と不倫しました」という理論が成り立つくらい、この手の話は寛容だ。


 俺の知識の出所を説明するのには、転生について話すのが手っ取り早い。


 俺は今までそう考えていた。

 だからどこかで話してたと思ったが……


 詳しく知ってるのはグリフォン様。

 テトラとかロンたちはグリフォン様伝えに、少しだけ知ってる。


 だったかな? 

 ユリアには話したか……お義父さんに話してないのだから、ユリアにも話していないか。


 「すみません。一から説明しますね」


 俺は一つ、一つ丁寧に転生について説明する。

 何しろ十九年も前のことだ。

 俺も記憶が曖昧だが……確かムカデ食ったんだよな……


 「俺としては君の前世よりも、ムカデを食ったことが衝撃だ。食えるのか?」

 「不味いですよ」


 何とも言えない味がした。

 二度と食べたくない。


 あの時はどうかしていた。


 「しかしまあ……これで君の幼少期の利発さについては納得がいった」

 

 お義父さんはそう呟いてから、少し考え込むように目を瞑った。

 すぐに目を開く。


 「で、マーリンというのも転生者だったわけか?」

 「いえ、あれは……転移だと思います。肉体は日本人のままかと」


 実際、顔の作りは懐かしい日本人のモノだった。

 肌の色も白いガリア人とは違う、黄色っぽい色だ。


 まあ青明みたいなモンゴロイド系の人種も居るので、そっちに転生した可能性もあるのだが。


 「あの女、死なないんですよ。矢で心臓を貫いても、剣で突き刺しても、すぐに肉体が再生する……多分、加護です。どうすれば死ぬでしょうか?」

 「焼いて灰にしてしまえば死ぬと思うぞ。不死など、あり得ない。おそらく、ただの強力な再生能力だろう」


 お義父さんはそう考察した。

 確かに俺も不死なんてあり得ないと思う。


 漫画とかでも不死身キャラは出てくるが……何かしらの弱点があるモノだ。

 

 ……でもこれは現実だからな。

 もしかしたら、本当に不死かもしれない。


 「そんなことは俺よりもグリフォン様の方が詳しいだろう。そっちに聞け」

 「そうですね。あの方なら何でも知ってそうだ」


 一先ず、マーリンの話は止めにしよう。


 「まだまだ時間はある。……お前の故郷の話をしてくれ」

 「分かりました。何でも聞いてください」







 

 お義父さんへの挨拶が終わった後、まずは神殿に向かった。

 俺が建てるように命じた神殿である。

 一応、俺は軍神マレスの息子という設定になっている。


 神に戦勝の報告をしに行く必要があった。


 その後、首都での凱旋を執り行った。


 俺が乗る馬車は四頭立てで、所々黄金の装飾が成されている、ロサイス王の国の国宝。

 馬車を引くのは、大きくて見栄えの良い白馬だ。



 まずロンたちを中心とする近衛兵が先頭を歩く。

 その後に俺が馬車で現れて、両脇をバルトロとライモンドが囲む。


 その後ろを戦利品……捕虜や象牙、略奪品を乗せた馬車が通り、その後ろに豪族や重装歩兵たちが続く。


 俺が手を振ると、民衆が歓声を上げる。

 兵士も、民も、誇らしげだ。


 「国王陛下(・・)万歳!!」

 「国王陛下(・・)万歳!!」

 「国王陛下(・・)万歳!!」


 民衆が『陛下』の敬称付きで、万歳唱和する。


 アデルニア半島の中小国の王は、陛下の敬称を使わない。

 所詮、豪族の盟主という立場で大した権威が無いからだ。


 豪族も民も、国王の存在をあまり重視しないので敬称を付けない。


 しかし、今、俺は確かに敬称付きで呼ばれている。


 「陛下(・・)、呼ばれていますよ」


 バルトロがニヤニヤと笑いながら言う。

 俺は頷いた。


 剣を抜き、空に掲げる。

 太陽の光を受けて、剣が美しく輝いた。



 「「国王陛下!! 万歳!!!」」


 今日、初めて俺は国王としての地位が確固たる物になったことを理解した。







 「お久しぶりです。グリフォン様」


 凱旋が終わった後、俺はグリフォン様の住む禁忌の森(ロマリアの森)を訪れた。

 今日は元村のメンバー総出だ。


 全員、酒の入った壺を手に持っている。


 ユリアとテトラは酒では無く、赤子……アンクスとフィオナを抱きかかえていた。


 「ロン、ソヨン、準備してくれ」

 「「はい!」」


 ロンとソヨンは二人で持ってきた大きな、底が浅い器をグリフォン様の元に置く。

 俺たちはそこに酒をつぎ込む。


 「今回、酒は三種類です」

 「ほう……豪勢だな。だが酒だけでは……」


 グリフォン様が不満を漏らす。

 安心して欲しい。

 つまみも持ってきた。


 「どうぞ、グリフォン様。俺が仕留めた鹿です」

 「僕が仕留めた猪です」


 ロズワードとグラムが、背中に背負っていた肉塊を器に盛りつけた。

 肉塊の上に軽く塩と香辛料を振り掛けて、グリフォン様の元に差し出す。


 「お肉だけじゃなくて、果物も有りますよ」


 ルルが背中に背負っていた果物を盛りつけて、グリフォン様に差し出した。


 酒、肉、果物。

 豪勢な食事だ。


 「ふふ、分かって居るではないか!!」


 グリフォン様は満足気に笑う。

 多分、笑っている。顔が鷲だから、イマイチ表情の変化が分からないけど。


 「そこの赤子はお前の息子と娘か?」

 

 グリフォン様はユリアとテトラが抱いている、フィオナとアンクスに目を向けた。


 ユリアとテトラはグリフォン様の元へ歩み寄る。


 「この子が私の娘で……フィオナです」


 ユリアが少し強張った顔でグリフォン様にフィオナを見せる。

 ユリアはあまりグリフォン様と親しくないから、緊張しているのだろう。


 一方、テトラは笑顔だ。

 「この子が私の息子……アンクスです」


 グリフォン様はすやすやと眠っている、二人の赤子に嘴を近づけた。

 ちょん、と嘴で頬を突く。


 「人でも猪でも鹿でも、赤子は可愛いモノだ。大切に育てろ」

 「分かっています」


 三歳まで生きれば……

 死ぬことは無いだろう。


 こればかりは神に祈るしかないが。


 「さて、近況を話してくれ」


 





 その後、グリフォン様には最近合ったこと……戦争や政治は勿論、俺たちの日常について話した。 

 俺は国王という立場だから、普段ロンと気安く話すことは出来ない。


 だが今日だけはグリフォン様も交えて、酒を飲み、料理を食べて、話し合った。

 

 話している内に、みんなで湖で泳いで遊ぼうという話になった。

 俺がユリアと出会った湖だ。


 グリフォン様は猫と鳥なので、水は苦手だ。

 結果、今日のところは御開きになった。


 ロンたちがグリフォン様の食器を背負い、湖に向かう。

 残ったのは俺とユリアとテトラだけだ。


 「グリフォン様、さっき話したマーリンについて教えてください」

 「別に構わないが……ロンたちは良いのか?」


 彼らには後から俺が説明する。

 ロンやロズワード、グラムは難しい話を嫌う。


 加護だ、妖精だ、不死だ、不老だ、異世界だ……

 という話への理解が薄い。


 本人たちも退屈だろうし、態々一つ一つ説明するのにも時間が掛かる。

 居ない方が良い。


 後でまとめて話してしまった方が効率も良いだろう。


 「グリフォン様はマーリンと親しかったのですか?」


 「親しい……まあ、親しいと言えば親しいと言えるか。お前たちほど、親しかったわけでは無いが。五百年前は頻繁に会っていた。まあ、我からすればエツェルの小僧のついでだが……」


 「エツェルとは誰ですか?」


 「ハリーファ族の族長だ。大王と呼ばれていたな」


 「ハリーファ族?」


 俺は思わず首を傾げた。

 聞いたことが無い。


 「お前たちが平たい顔族と呼んでいる連中だ。東の果てからやってきて、ガリア、ゲルマニス、ヘクスパニア、そしてアデルニア半島全土を制圧した。騎馬遊牧民族だ」


 平たい顔族……

 確か五百年前にアデルニア半島を征服した異民族、ムツィオたちアルヴァ人の祖先か。


 「どんな人だったんですか?」

 「お前みたいな奴だ」

 「「なるほどー」」


 テトラとユリアが揃って声を上げた。

 俺みたいって……どんなんだよ。全然、分からないぞ。


 「そう言えばマーリンは平たい顔族の族長の妻だったって聞いたような……」

 「ああ、妻だった。仲睦まじい番だったな。子供は生まれなかったようだが」


 ふーん……

 何か、想像出来ないな。


 「しかし平たい顔族の族長を討ったのはマーリンだと聞きましたが……」

 「我に聞かれても困る。その話を聞いて一番困惑したのは我だからな。本当に仲が良い番だったからな。お前たちのように」


 グリフォン様がそう言うからには間違いは無いだろうが……

 まあ、人間何が切っ掛けで仲が悪くなるか分からないからな。


 浮気でもしたのかもしれない。

 ……あれ? 妻が二人居る俺ってもしかしていつか刺される?


 「別にあのおばさんとその夫の話はどうでも良いんじゃない? アルムス。今はマーリンの不死に関してでしょ」 

 「うん。あの婆はどうすれば死ぬか、それを聞きに来た」


 おばさんとか婆とか言うなよ。

 見た目は十七歳くらいだったじゃん。


 「あの加護はただの強力な再生能力だ。燃やすか魂を破壊すれば死ぬ」

 「つまり不死ではないと?」

 「当たり前だ。不死など……それは魔法の域だ。小僧共(妖精)にそんな力は無い」


 ……魔法?

 魔術や呪術じゃなくて?


 「魔法って何ですか? グリフォン様」

 

 俺が気になったことを、ユリアが聞いてくれた。


 「魔法は呪術の一歩先……というより、最終到達地点だ。神の御業を人の手で再現する。元々呪術は魔法の失敗作だったのだよ。それをマーリンが体系化して、実用化した。現在では呪術は人の役に立つ技術として研究がされているが……元々は魔法の副産物に過ぎなかったのだ」


 そう言えば呪術はマーリンが作りだしたと、ユリアが言ってたな。

 世界最古の呪術師だと。

 そういう意味だったのか。


 「マーリンが魔法に到達していないと言い切れるんですか?」


 「実は私、魔法少女マリリンなの!」とピンクフリフリの服を着たマーリンが何故か脳裏を過ぎった。


 「ああ、言い切れる。魔法は世界の法則を書き換える禁忌。手を出す奴が居れば、肌で感じ取れる。……我の知っている中で、魔法の実現に成功した者は一人だったな」


 グリフォン様が遠い目を浮かべる。

 遠い、遠い目だ。


 「その女は『時の停止』に成功した。まあ、成功と同時に奴自身は死んでしまったがな」


 つまりそれだけ難しいということか。

 取り敢えずマーリンは不死じゃない。殺せる。

 これだけ分かれば十分か。


 「じゃあ、俺たちはこれで……」

 「「待って!!」」


 ユリアとテトラが声を揃えて、俺を引き留めた。

 何だよ?

 

 「グリフォン様!! 魔法について詳しく」

 「世界の法則ってどういうこと?」


 ユリアとテトラが食いついた。

 二人とも目を輝かせている。


 「ふむ、気に成るか。優れた呪術師はこの話をすると全員が喰いついてくる。呪術師という生き物の本能なのだろうな。世界の真理を探求したいという……」


 俺は興味無いんだけどな……

 何が楽しいんだ?


 呪術を作った人……大天才が五百年掛けても駄目だったんだぞ。

 無理に決まってるだろ。

 そんなことを考えるよりも、今日の夕食の献立でも考えた方がよほど建設的だと思うけどな。



 「我も詳しくは知らんぞ。我が知っているのは……魔法の行使には世界の真理を知らなければならないということだ」

 「真理、ですか?」

 「それは何ですか?」


 ユリアとテトラは興味津々という様子だ。

 

 「世界の全てのことが記されている……世界記憶(アカシックレコード)を閲覧して、そのほんの一部でも読み解ければ、魔法への扉を開ける……と、聞いた。我が知っているのはそれだけだ。研究したければすると良い。我は世界の法則など、どうでも良い。日々寝て、食事して、偶にお前たちのような人間と話せればそれで十分だ」

魔法一覧


死者蘇生、魂の複製、時間停止、時間遡行、空間転移、未来予知、不死、無から有の創造、物質変換(石を金に変える的なあれ)、永久機関 物理法則の書き換え、etc


あと一話で四章も終わりです



ところで午前六時から、投稿もしてないのにアクセスが急に伸びてるんですけど、心当たりある人いますか?

2chで晒されてるとかなら、教えてくれなくて結構です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がなろうで連載している他作品です
もしお時間があったらどうぞ
『三大陸英雄記~現代知識による帝国再建記~』
『蘇った真祖の放浪譚』
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ