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25.攻撃?

前世で30年生きて、高校卒業してから彼氏の一人もいなかった私。

生きていれば普通に結婚して子どもが出来て、家族ができるものなんて考えていた時期の自分を呪いたい。


そんなものは幻想だ。


自分で出会いを求めず、積極的に動くこともなく、男性のほうから寄ってきてくれるような美女でもなければ高収入でもない。


家に引きこもって年月だけが無情に過ぎていったのが私だ。



生まれ変わったことを自覚して早々に『金の瞳』問題により恋愛や結婚を諦め、前世と同じように生きていくのだと心に決めた。

『恋』というものから限りなく遠いところにいた私が、マリアンナになってから初めて好きになったのが一国の王子様とはハードルが高すぎではないだろうか。



「マリアンナ?」


クラウディオはマリアンナを心配そうに見ていた。


「はっ!」


「大丈夫か?」


マリアンナを覗き込むその距離が思いのほか近くて、心臓が止まりそうになる。

これまでと変わらない距離感なのに。


私は今までどうして平常心でいられたんだろう。



他の人に、触れてほしくない。

甘い声で、他の女性を呼ばないで。


私ではない他の誰かを…想わないで。



考えただけで胸が痛い。



これは嫉妬だ。


これが同じように大切な兄のような、父のような存在のエドガーさんだったら…

良い人が見つかって良かったと、ほっとする。



私はこの人が…好き。




「だ、大丈夫です!」


本当はすごく逃げたい。

一度意識してしまったら、一気にその気持ちに塗り替えられる。


好きな人とこんな距離で一緒にいて、世の女性はどうやって自分を抑えているのだろう。

心臓が高鳴りすぎて死んでしまいそうではないか。


おかしい。

高校時代に一度だけ付き合った彼とはもっと落ち着いたお付き合いだったのに。


同じゲームが好きで、気が合っていつの間にか付き合うことになった彼に対してこんなに心が動いたことがあっただろうか。

いや、ない。


もしかすると、これは正真正銘私の初恋ではないか。



どうしよう。



恥ずかしすぎて、今すぐこの場から立ち去りたい。


だけどそんなことをしたら、『マリアンナに嫌われてる』と思われる案件ではないか?


そういえば私は前世でラノベを読みまくったのだ。

その中には恋のバイブルと言えるものもあったはず。


ああでも肝心なときに何も出てこない。



頭も心も大混乱で、自分が分からない。




「…そうか?今日は、慣れないことばかりで疲れたのかもしれないな。

着替えて、ゆっくり休むといい」


クラウディオの手が、ぽん、とマリアンナの頭に乗せられた。



鼻血が出そうです。




そうだ、この恋が実るなんてとても考えられないけれど、兄さまの婚約者が決まるまでは少し頑張ってみてもいいだろうか。

決まってしまえば、辛くて顔を見ることも無理になるかもしれないから、それまでは。



何しろ自分が動かなければ何も起こらないことは経験済みなのだから。



頭に乗せられていたクラウディオの手を取り、そのまま両手を添えて自分の頬に持っていく。

男の人らしい大きく少し節ばった手の感触が、頬と手の平から伝わって緊張のあまり手が震えてしまう。



「マ…マリアンナ?」


「あ、あの、今日は来てくれてありがとうございます。

…また、また会いに来てくれると嬉しいです…」


伝えながら、恥ずかしすぎて顔が熱くなる。



「そ、それでは!お言葉に甘えて休みますね!!」




マリアンナはクラウディオの手を離し、その返事を待つことなく立ち去った。




やっぱり無理!

経験値が低すぎて何をやったらいいか全く分からないです!!





*****




『おい。おーい!』


シロがトントンとクラウディオの頭を小突くが返事がない。


『こら!』

「ぐっ…」


ついに腹に蹴りが入った。


「はっ!マリアンナは?!」

『とっくに帰った』

「…夢か?」

『何を言っている。お前もさっさと帰れ』



思いのほかクラウディオに致命傷を与えていたのだが、結局逃げたマリアンナが気づくことはなかった。





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