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14.マリオ

「シロ」


小声で呼ぶと、シロが目の前に現れた。

どういう仕組みなのか呼ばれているのが分かるらしい。


『王子に会いに行くのか』

「うん、今日もお願いね」


シロには申し訳ないが王子殿下と2人きりになる勇気はない。



すでに姿を消していたマリアンナは、そのまま裏手の森に向かった。



『もう中で待ってるな』

「ああーまた待たせちゃった」


マリアンナは茂みに入って姿を現し、そのまま先に進む。


「殿下、お待たせして申し訳ありません」

「気にしなくていい。さ、座って」


クラウディオは敷物を持ってきたらしい。

それを広げて既に座っていた。


「わざわざ準備してくださったのですか」


マリアンナが持ってきたものより上等の敷物のようだ。

手触りがとても良い。



マリアンナがシロとともに座ると、クラウディオはなぜか熱のこもった眼差しでマリアンナを見ていた。


「それで…平民の男の子のことは、何か分かったかな」


理由は聞かなかったがそんなに気になるのだろうか。

マリアンナは見たままを報告するしかなかった。


「本人に確かめた訳ではありませんが、それらしき者はおりました。

なかなか魔力の動きを感じることができずに苛立っていた少年が1名だけいたので、彼がそうではないかと思います」


マリアンナが伝えると、クラウディオはごくりと喉を鳴らした。


「その彼は、どんな風貌だった?何か話したりはしなかったか?」

「結構体格は良くて、髪は紺色でした。

うまく魔力を動かせなくて、えっと…『ぜんぜん分かんねえ!』と」


そのまま伝えることはできなかったが、マリアンナは身振りも加えて説明する。


「そう…か」


クラウディオは少し視線を下に移す。

気落ちしたように見えたマリアンナは声を上げた。


「あの、殿下のお望みでしたらもう少しその子に近づいて話を聞いたりしましょうか」

「いや、それはもういい。絶対に自分から声をかけたりしないように」


クラウディオがマリアンナに被せるように首を振った。

その後意を決したようにマリアンナを見る。



「マリアンナ、少し君のことを聞きたい」

「?…はい」


「シロは、私を助けた後ずっと君の傍にいたのか?」

「いえ、殿下をお助けした後しばらく眠っていたようで、私が会ったのは…4歳半くらいの時だったと思います」

「…そうなのか?それでは、私を助けた後君は何が起こったか分からず大変だったのではないか?」


クラウディオには、彼が暴走した時シロがたまたま近くにいたマリアンナを巻き込んだと伝えている。


「それが…倒れて目覚めた時には記憶を失っていたのです。

3歳になる少し前だったと思いますが、起きたら知らない人がいて驚きました。

実際には母だったのですが」


クラウディオが眉を顰める。


「そんな…!私のせいで、申し訳ないことを」

「いえ!シロに会ってから何があったか思い出しましたし大丈夫です。

色々な人に助けてもらいましたし」

「…魔法は、いつ使えるように?」

「えっと、倒れた時にたまたま助けてくれた魔術師の方がいて、その方に家庭教師に来てもらってから…」


クラウディオの溢れた魔力はシロが引き受けたことにしているので、どう答えていいのか分からず曖昧になってしまう。


「その魔術師に、薬の作り方を習ったのか?」

「はい、そうです」

「…初めて作った時は大変だったのではないか」


クラウディオの言葉に、初めて初級傷薬を作った時のことが頭に浮かぶ。

兄さまがナイフで薬草だけでなく指まで刻みそうで恐ろしかった。


マリアンナは思わずふふっと笑ってしまった。


「兄弟子と一緒に作ったのですが、手元が危なっかしくてハラハラしたのを思い出しました」



あの頃は、本当に毎日が充実していて楽しかった。

それが切っ掛けだったように、色々な出来事が頭に浮かぶ。



ふいに膝の上に置いていたマリアンナの手が取られた。

はっとして顔を前に向けると、クラウディオが何かに耐えるように眉を寄せている。



「殿下?」



「私は……その笑顔が大好きだった。


……マリオ」






いつもありがとうございます。


ついにこの時が?!

年始、帰省中のため文章短めですが毎日更新します。


お時間のできた時に少し覗いていただけると嬉しいです。



本年もどうぞよろしくお願いいたします。


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