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13.魔法の授業

シロと別れて6年生の薬学の教室の前で待っていると、つい先ほどまで会っていた殿下がやって来てものすごく驚いた。

まさか王子殿下が薬学を受講しているとは。


授業中もずっと何か考え込んでいるようで、やはりシロに指摘された第1王子殿下のことが気になっているのかもしれない。


6年生の授業では解毒薬を習うようで、マルグリットのように使う薬草や効能を聞きながら実際に薬を作るのかと思っていたがまずはじっくり座学だった。

使う薬草、採集場所、作り方、効能などを最初に勉強する。


授業の間、時折横から殿下の視線を感じて少し居心地が悪かった。

やはり1年生が授業に混ざっているのは不思議だろう。


明日色々聞かれるかもしれない。



授業が終わると、学生に取り囲まれてしまった。

どんな薬が作れるのか、免許はどうやって取るのかなどと質問が飛ぶ。


本当に薬に興味がある人たちばかりなのだなと安心したけれど、受講しているのは男性がほとんどだ。

囲まれると圧迫感がすごい。

学年の差による体格差もすごい。怖い。


「気持ちは分かるがもう少し離れてやれ。

怯えている」


で、殿下…!


思わぬところからの助け船だ。

クラウディオが学生をかき分けマリアンナの前に立つ。


「下級生とはいえ相手は女性だ。もう少し気を使え」


さすが殿下だ。

優しい。


蜘蛛の子を散らすように学生たちが離れていったが、「あの殿下が」「嘘だろ」「珍しいものを見た」などと聞こえた。

どういうことだろう。



「あの、ありがとうございました。殿下」


「ああ…いや、いいんだ。気を付けて帰りなさい」


礼をして教室から出る際にちらりと後ろを見ると、まだこちらを見ていてどきりとした。

少し名残惜しそうな目をしているような気がしたけれど、そんなわけはないか。





***



「今日は、魔法の実技がある。

本来ならもっと早くから行う授業なんだが、遅くなってすまなかった」


どうやら魔力の少ない学生や魔法に慣れない学生を担当していた教員が、初日に倒れて欠員が出ていたらしい。

高齢の教員だったので、急なことで新しい先生がなかなか決まらなかったようだ。


初日に欠員が出たとして今日は4日目だ。

十分早いと思う。



制服のジャケットを脱ぎ、ローブを羽織って移動する。

屋外演習場へ到着すると、「魔力に自信のないものはこちらへ」と声がした方に顔を向けて叫びそうになった。


「エ…っ!!!」


慌てて口を塞ぐ。



こちらへ、と手を挙げていたのはエドガーだった。



エドガーもマリアンナに気が付いたようで、口角をにやりと吊り上げた。


な、なにをしてるんですかあああ!


実技について、そんなに心配しなくて大丈夫、と笑っていたマルグリットの笑顔が頭に浮かぶ。


絶対に知っていたか、もしくはマルグリットの指示に違いない。

学園の人事にまで食い込めるなど怖すぎて考えたくないけれど。


兄さまの付き人の仕事は大丈夫なんだろうか。



とにかく今は個人的に話しかける訳にはいかない。

平静を保ってそちらに向かう。


「あら、マリアンナさんは魔力が心許ないの?」

「オリヴィエさん」


よく見ると、特別クラスの面々がこちらを気にしている気がする。

いい機会だ。


「そうなんです。魔力が少ない分、勉強を頑張っているんです!」

「まあ!マリアンナさんは頑張り屋さんなのね。

大丈夫!魔力が少ないからって気にすることないわ。

代わりに勉強がものすごくできるんですもの!」


ありがとうオリヴィエさん。





エドガーの元に集まったのはマリアンナを入れて5人。



やはり貴族ともなると自分から魔力が少ないですよ、と申告するのは恥なのだろうか。

人数が少ない。



言いたいことは色々とあるが、授業が始まったのでエドガーに話しかけることはできない。

明日は1日休みなので裏の家に来てくれないだろうか。



「ではまずは魔力の流れから感じてみよう。

出来る者は少し待っていて」


エドガーの前に立ったのは1人。

結構体格の良い少年だ。


もしかすると平民かもしれない。

殿下に伝えなければならないという使命感で注目する。


エドガーと手を合わせたり色々やり始めた。


「あー!ぜんっぜん分かんねぇ!何だこれ」


少年はがしがしと頭を掻き、ものすごく苛ついていた。


うん、こう言ってはなんだが平民率が上がった。




エドガーは「君は少し休憩していて」と少年に声をかけ、次はマリアンナたちに向かい合った。


「君たちは魔法は既に使えるのかな」


エドガーに教えてもらうのも久しぶりで、少々くすぐったい。


残りの4人はエドガーの言葉に頷いた。



「では火は危ないから後にして、水を出してみよう」


エドガーはこんな感じで、とお手本を見せる。

きっとこのくらいなら問題ないんだな、と見て分かって非常に助かった。


何度か問題なく魔法を扱えているか確認したところで、マリアンナはちらりとエドガーに視線をやる。


そろそろ?



「君、少し顔色が悪いな。

魔力が切れそうなのではないか?あっちで休んでいるといい」


いいタイミングだったらしい。

エドガーに促され、マリアンナは足取り重く移動して座り込んだ。


ここから見学していれば問題ないだろう。


少しすると、徐々に他の学生も休憩に来た。

魔力に問題なしの組からも数人やって来る。


「はあ…魔力のせいで大きい魔法が使えなくてもどかしいな」


皆一様にその顔が沈んでいた。



エドガーを見ていると、平民らしき少年の指導を再開したようだ。

まだうまく魔力を動かせないようで頭を抱えていた。


「彼は平民かな。今まで教える者がいなかったなら最初は苦労するだろうな」


平民でも浄化などの生活に役立つ魔法は使えるため8歳になれば親から習う。

けれど魔力検査で学園行きが決まった者は、家庭教師を雇うことができなければ学園に行くまで魔法を使うことを禁止される。


親より大きい魔力を扱えるため危ないからだ。



結局彼は今日の授業では魔力を動かせなかったようだ。



「マリアンナさん、かなり早くから休んでいたようだけど大丈夫?」


授業が終わって教室に帰ろうとすると、オリヴィエが心配そうにマリアンナに寄り添った。


「魔力が切れると辛いからな。無理はしないほうがいい」


フィリップまでマリアンナを庇うように横に立つ。


「ありがとうございます。かなり休めたので大丈夫です」




魔力が少ないように見せることに関しては大成功だったようだが、マリアンナは本気で心配してくれている2人に少し申し訳ない気持ちになった。







連載を初めて2ヶ月半ほど、評価やブックマーク、感想に誤字報告をいただきいつもありがとうございます。

読んでいただいている皆様のおかげでここまでお話を進めることができました。



来年もお付き合いいただけましたら幸いです。


良いお年を。



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