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4.精霊の訪問

寝る準備を整え、部屋の扉を開けると白銀の猫がベッドでノの字に伸びていた。


「……」


後ろ手に扉を閉め、防音魔法を展開する。

新しく使えるようになった魔法の一つだ。


「待たせ…ましたか?」


十分に失礼な口を聞いた気がするが、相手が精霊なら一応敬った方がいいかも知れない。

マリアンナは丁寧に話しかけた。


猫はひょこ、と首を上げる。


『今更畏まらなくても良い。普通に話せ』

「はあ」


マリアンナはベッドに腰掛ける。


「聞きたいことが山積みすぎて混乱中なんだけど…そういえば名前はあるの?」


『前はクロと呼ばれていた』


「なぜ!」


どこからどう見ても白い猫だ。


『名付けた男が黒い方がいいと言うのでな。その頃は黒い毛皮にしていた。

黒猫を呼ぶならクロだろうと』

「……」


マリアンナはふと違和感を感じた。

”クロ”は黒猫につける一般的な名前だと思う。


それは何らおかしくない。


……


「え?”クロ”って日本語…?」


それに気が付いて、ぞわっと鳥肌が立つ。


『黒髪に、焦げ茶の目をした男だ。あやめと同じような』

「…それはこの世界の話…?」

『そうだ。そいつはこの世界に落ちてきたのだ。

私が加護を与えて金の瞳になったが、肉体と精神はあやめの世界の者だった』


とんでもない話が聞こえた気がする。

え、それ私が聞いていいお話?


「も、もしかして初代の王様の話じゃないですよね?」

『よく知っているな』


知らない方が良かった。

情報過多により頭が爆発しそうだ。


「い、今はその話はいいとして、名前はクロ?」

『もう500年近く呼ばれていない名だ。

好きに呼んでもらってかまわない』


「500年…って」


そんなに長い間名前を呼ばれていないなんて。


「…大切な名前なんじゃないの?」

『そんなことはない。日頃から妙な響きだと思っていた』


「じゃあお言葉に甘えて『シロ』にしよう」


白猫に『クロ』と呼びかけようとしても間違えそうだ。


『クロと大して変わらんが…』


大違いです。



「あれ?500年って、すっごい昔の人がこっちに来たっていうこと?」

『いや、あいつの情報を辿って世界を繋げたからな。

お前のいた時代と変わらないはずだが』


ということはその人は時代すら飛び越えて異世界転移してしまったんだろうか。

よく分からないけれどそういうこともあるのかもしれない。


「つまり、その人の血を引く人が今の王族…?」

『ああ。あの王子は先祖返りをしたように初代に魔力が似ている。

魔力の強さまで似てしまって、体に合わず暴走してしまっていた』


「で、あなたは自分が加護を与えた者の子孫を助けたかった…?」


『そういうことだ。だが、私を認識しない相手の魔力を吸い取るのは限界があった。

暴走して命を落とす前に大量に抜いてしまいたかったから、お前にやってもらったのだ』


「どうして私だったの?」


『初代に魔力が似ていると言っただろう。魔力の元は精神力や魂に関係する。

そして初代の魂はお前の国に繋がっていた』


「……難しい話はまあいいわ。とにかく助かって良かった、という事ね」


『……そうだな』


シロは少し呆れたような目線をマリアンナに向ける。


「で、王子様を無事助けられて、私にまだ何か用?」

『お前…見かけによらず冷たいな…』


シロは悲しげに目を伏せた。


王子様が助かったのだから私はもう用済みではないのか。

シロが姿を現した意味が分からない。



『力を使い果たして眠っていたと言っただろう』

「ん?」


そういえばそんなことを言っていたような気がする。


『つい最近目覚めたばかりなんだが、まだまだ魔力補給が必要だ』

「寝て回復したんじゃないの?」

『動けるくらいに回復はしたのだが、金の者から魔力を貰うのが一番効率がいい』

「じゃあ折角だから王子様のところに行けばいいんじゃないの?」

『私を認識しない者からは微々たる量しか吸い取れない』


…認識しない?


「えっ、シロってみんなから見えないの?」

『ああ。初代以外誰も認識しなかった。

あの王子ならもう少し成長すれば見えるかもしれない』

「私は?」

『お前は王子の魔力を取り込んでいるし、何より私が魂から干渉したから特別だな。

小さい頃は魔力が弱すぎて見えてなかったが』

「えっ、見に来てくれてたの?」

『一応な』


こっちへ連れてきた以上気にしてくれていたのだろうか。

口は悪いが面倒見は良いのかもしれない。



『というわけで魔力をくれ』


どういうわけだ。


「別にいいけど、どうやってあげたらいいの?」

『吸い取る』


シロがベッドの上に置いていたマリアンナの手の甲に額を付けた。

魔力を抜き取られる感じがしてぞわっと鳥肌が立った。


「ま、待って!」


マリアンナは慌てて手を引っこ抜く。


「ぞくっとして気持ち悪い」


強制的に魔力を動かされる感じが非常に気持ち悪かった。



『そうか…まあいい。傍にいれば少しは補給できる』

「?それなら王子様のほうがいいんじゃないの?私と違って純粋に『金の者』なんだし」


『…そろそろ眠いのではないか?

私も久しぶりにまともに会話をしたので疲れた。寝るぞ』


シロはマリアンナのベッドに潜り込み始めた。


「えっ!ここで寝るの!?」

『……』

「まあいいけど…」


マリアンナはシロを潰さないように布団に入る。

柔らかい毛皮が気持ちいい。


「ねえ、初代の王様が亡くなってからずっと一人だったの?」

『ほとんど眠っていたがな』

「久しぶりに会話した?」

『お前を連れてきた時以来だ』


「…こうやって、話したり触ったりできるのは私だけ?」

『…今のところな』



マリアンナはシロを抱き寄せた。


『何をする』

「お布団提供してるんだからちょっとくらい触らせなさいよ」




『…仕方ないな』




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