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33.女装

女装の話があった次の週、先生のご実家から届け物があった。


「お久しぶりでございます、お嬢様」

「まあアマンダ!あなたが来てくれたの?

…もう、いつまでもお嬢様はやめてって言ってるでしょう」

「お嬢様は、わたくしにとってはいつまでもお嬢様です」


にっこりとお上品に微笑んだその女性は、マルグリットの実家で侍女としてついていた人らしい。

60歳くらいに見えるが姿勢が綺麗で動きもきびきびとしていた。


マルグリットにお互い紹介してもらった。


「さあ、荷物は私の部屋に運んでもらえるかしら。マリオも一緒にいらっしゃい」


アマンダの後ろに控えていた2人の若い使用人たちが、何個も箱を抱えて階段を上がった。



マリアンナはマルグリットの部屋に初めて立ち入った。

女主人の部屋らしく、広くて調度品も整っている。


アマンダが使用人に指示を出し、荷物を部屋の一角にまとめさせた。


「ちょっとアマンダ、多すぎじゃない?」


その箱の個数を見てマルグリットがため息をついた。


「何をおっしゃいますか。3歳の子どもが着るドレスを適当に持ってきて、と適当な指示をなさったのはお嬢様ですよ。

3歳の子でも小さい子から大きい子までいるでしょう。更には上から下まで全身着替えるのですから箱が1個2個で済むはずがありません」

「わ、悪かったわ」


こんなにたじたじのマルグリットを初めて見た。

マリアンナは新鮮な気分になる。


「ちょっとダンスの練習用に1着欲しかっただけなんだけど、この子に合うサイズのものはあるかしら」

「…まさかお嬢様に男の子を女装させる趣味がおありとは」


アマンダが頭を抱えてしまった。


「変な誤解はやめてアマンダ!もう一人預かっている子の相手役になってもらうだけよ!」


ディオとエドガーは出てこなかったけれど、アマンダは存在は知っているのかそれで心得たようだった。





「では早速合わせましょう。お着替えお手伝いしますからね」


そう言いながらドレスの箱を開けたアマンダが中身を取り出した瞬間、マリアンナは驚愕した。


「ドレスが綺麗すぎます!」

「まあ、マリオもそう思う?これは私が子どもの頃に着たものよ。

定期的に状態保存の魔法をかけてもらっているから綺麗でしょう?」


そっちの綺麗ではなく!


「いえ、上等すぎてとても着られないという意味です」


「平民の子どもだと聞いていましたが、見ただけで物の価値が分かるのですね」


アマンダが目を瞬いた。


いえ、薄青の生地が光の加減できらっきらしてますから!

胸元にびっしり綺麗な刺繍が入っているしスカート部分はふわふわですごいボリュームだ。


「小さな頃に仕立てたものは、下賜したりしてあまり数が残っていないのです。

…城に参上するような時の特別な物を残していますからね」


更には、マルグリット様のお母様が幼少期に着ていたというドレスも見せてくれたが、上品な白いドレスに宝石が縫い付けられて金糸で細かく刺繍がされている素晴らしいものだった。

どうかそれは丁重に片付けて二度と開けないで欲しいとお願いしておく。


マルグリット様の髪に合わせた薄緑のものなど何着か体に当てられ、最初に見た薄青のものが合いそうだということになった。


マリアンナは緊張でがっちがちだったが覚悟を決めて着せてもらう。

ノースリーブのドレスだったが気候が一定なので寒くはない。


後ろで大量のボタンで留めるような形だったのでアマンダにやってもらった。


「あらあら!」

「まあ…」


マルグリットとアマンダの反応がおかしい。

振り返ったマリアンナをじっと見ている。


「アマンダ、せっかくだから髪もなんとかしてくれる?」

「ええ、そうしましょう」


マリオは出来上がるまで鏡は見るなと言われて、椅子に座らされ2人の前から後ろからの入念なチェックが入りながら髪を整えられた。


「この辺りでハーフアップにして…何か飾りがあったかしら」

「お嬢様、ドレスに合わせたものをお持ちしています」

「なんて準備がいいのかしら」

「この下は少し巻いたほうがいいんじゃない?」

「軽く紅を差しましょうか」

「素敵」


ちょっと!誰か助けて!!


この靴を履け、この手袋を、とまるで着せかえ人形だ。



「これは…何てことかしら」

「お嬢様、わたくしたちは何と罪深いものを生み出してしまったのでしょう」


出来上がって全体をしっかりと見た2人が口元を押さえて呆然としてしまった。


「いったい私はどうなったのでしょう」


マリアンナは不安になって2人を見上げた。


「可愛いすぎるわ!」

「は?」


こっちにおいで、とマリアンナは全身が映る姿見の前に引っ張られる。


その姿を見た瞬間、マリアンナは言葉を失った。

自分はなかなかの美少女だと思っていたけれど、着飾った姿はそれはもうとんでもない美少女だった。


「先生、やりすぎです…!」

「ごめんなさい、うっかり夢中になってしまって」

「どっからどう見ても女の子ではないですか!」


これではディオが警戒してしまうのではないか。



コンコンコン

「マルグリット、マリオはまだか?」


せめてもう少し元に戻さなければ。

慌ててマリアンナがお願いしようとしたところでそのディオがやってきてしまった。


「ににに兄さま!もう少し待ってください!」

「あら、いいじゃないのそのままで」

「良くないです!兄さまが気分を悪くしたらどうするんですか!」

「まあ!こんなに可愛い子を見て気分を害すわけがないでしょう?」


「はあ?何を言ってるんだ、開けるぞ」


「わ!待って…」


慌てて戸を押さえに行こうと向かったが、特に鍵もかけられていなかった扉が開かれた。


マリアンナは一歩踏み込んだディオとばっちりと目が合う。



「「……」」



わあああ、兄さまが固まったー!


「兄さま…?」

「…マリオ…か?」


ディオの顔が一気に赤くなる。


「な、なんだその格好は!」

「ご、ごめんなさい!着替えます!」


マリアンナが慌てて踵を返すと、その腕を掴まれた。


「違う!そうじゃなくて…そのままでいい」


相変わらずディオの顔は赤いままだし、目が逸らされている。


「ディオもそろそろ女の子に慣れたほうがいいわ。

美少女にしか見えないけどマリオなんだし、これもいい練習よ。ね?」


「でも、大丈夫ですか兄さま?気持ち悪かったりしませんか?」


ディオは、ふーっと深呼吸をした。


「大丈夫だ。少し驚いただけだ」

「ほう、これは確かに言葉を失うほどの可愛さだ」


ディオに続いて部屋を覗いたエドガーだ。


「そうでしょう?ああ着替えるのが勿体無いわね」

「今日はもうドレスを合わせるだけですか?」


マルグリットとアマンダが気合を入れすぎたせいでかなり時間が経っていた。

マリアンナはお姫様になったようで少し興奮したが、着せかえに疲れてしまっていた。


「そうね、今日は練習はもう無理ね…着替えはもう少し後でもいいかしら?」

「…人間には…状態保存の魔法は効かないんだったな…」

「折角可愛いんだからもう少し着ていてもいいんじゃないか?」




えっ!近くにいたからぼそっと言ったの聞こえましたが、兄さま!?どういう意味ですか!?





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