22.体験2日目
職業体験2日目は宮廷魔術師体験だ。
こちらは城の敷地内に寮があり、泊まり込みで仕事ができるようになっているそうだ。
最初に行くのは魔術師団の演習場だ。
午前中はそこで訓練に参加し、午後からは城で誰かの護衛をすることになっている。
マリアンナとフィリップは直接演習場を訪ねることになっていた。
研究所と違って入るまでに何重も検問があったりすることもなく、直接演習場を囲む門の中に入ることができる。
ただ学園のように簡易なものではなく、一見砦のような場所だった。
馬車を降りて入口に向かうと、魔術師のローブを着た人がこちらに向かって手を振っていた。
「え?!」
「エドガー先生?!」
思いがけぬ人物の登場に、マリアンナとフィリップは驚きの声を上げる。
「おはよう。今日は私が案内するよ」
マリアンナはちらりとフィリップに目をやる。
エドガーが宮廷魔術師ということは特に隠さなくてもよいのだろうか。
「え、先生は…学園はいいのですか?」
「ああ、言ってなかったかもしれないけど、本業はこっちなんだ。
教師は臨時で依頼されて、なんとなくそのままズルズルと先生やってるんだけどね。
今日は6年生は演習がないからこっちに来た」
フィリップはそうだったんですか、と目を丸くした。
「まずは中を案内してやりたいところだけど先に訓練が始まる。行こう。
訓練用の服を貸すから、更衣室に案内する」
マリアンナたちは学園のローブの下は制服で来ている。
「「はい」」
マリアンナは女子更衣室に案内され、中に入ると女性の魔術師が待機していて使い方を教えてくれた。
体格に合わせて用意してくれていた服を身に着ける。
いつも鍛錬の時に着ているシャツとズボンとあまり変わらない感じで動きやすい。
守りの魔法陣が刺繍されているローブも借りて上に羽織った。
更衣室を出ると、エドガーとフィリップも同じ格好に着替えて既に待っていた。
男女で服装が変わったりはしないらしい。
エドガーについて演習場に行くと、ずらりと魔術師が並んでいる。
「副師団長、体験に来た学園の生徒で、フィリップとマリアンナです」
「ああ、エドガー…久しぶりだな」
「…本当ですね」
エドガーがマリアンナとフィリップを副師団長に紹介し、二人は挨拶を交わす。
副師団長は40代くらいだろうか。ローブを着ていてもがっしりとした体格が分かる。
「まずは準備運動をして走り込みだ」
マリアンナは魔法を使った訓練は見学することになったが、体力作りは参加することにした。
たとえ魔術師であっても基礎の体作りは重要だ。
一旦ローブは置いて動きやすくし、準備体操をしてからひたすら走る。
いつもの早朝鍛錬より少しきついくらいで、訓練というには物足らないくらいだった。
「ふう、気持ちいいね」
「…はぁ、はぁ…」
何とか遅れずについて行っていたもののフィリップは虫の息だ。
「…フィリップ、ちょっと体力なさすぎじゃない?
ちゃんと鍛錬もしてる?」
「ま、マリーが…はぁ、はぁ…そんなに、動けるとは」
まさかフィリップは時間があったら勉強ばかりしているんじゃないだろうか。
「毎朝鍛錬してるし」
「…寮のどこで」
自慢しようとして墓穴を掘ってしまった。
「…寮の中庭が…丁度いい広さなの」
中庭はあったが走り込みができるような感じではない。
だが寮の中など用がないフィリップ相手なら誤魔化せたようだ。
それ以上突っ込んでこなかった。
「気持ち悪い…」
…休みたくてそれどころじゃなかったのかもしれないが。
将来文官が第一希望だったとしてももう少し体力はあったほうがいい気がする。
オリヴィエにしっかり申し渡しておこう。
その後少し休んで魔法を使った訓練に入った。
マリアンナは魔力が少ないことになっているのでゆっくりと見学する。
回復薬はすべての訓練が終了してから飲むことが出来るらしく、体力が回復する間もなかったフィリップは集中力が低下したのかボロボロにやられていた。
疲れていると狙いも外れて大変そうだ。
相手をしているエドガーはかなり手加減しているようだが赤子の手を捻るようにフィリップをやり込めている。
うん、やっぱり魔法をメインで使う魔術師であっても体力作りは大事だ。




