(似顔絵が見つかった)
文化祭が近くなってきた。
普段汚い美術部の部室も、お客さんが来でも大丈夫なように、綺麗にしておかなければならない。
そしてその掃除の係に、僕はなってしまった。
「はい、どんどんやるよ」
幼馴染の夏奈保に強引に誘われて。
めんどくさいー、という気持ちしかないはずだ。
でも、夏奈保と二人で部室にいると、奇跡的にそれはあまり主張してこない。
けど、やっぱ疲れるなあ。
そう思いながら、部室の隅に積み上がっていた絵の数々を運んでいると、一枚の絵が落ちた。
「え?」
「どーしたの春星」
「あ、お?」
僕は落ちた絵を見て固まっていた。
夏奈保がこっちにきた。
僕は夏奈保の顔と、落ちた絵をぱぱっと見た。
おお。この絵、夏奈保の似顔絵だ。
ていうか誰が描いたんだろう?
「あー、私の絵だ! これ誰描いたの?」
「知らないよ、騒がしいなあ」
「あっ、もしかして、春星が描いたんでしょ。私が可愛すぎるから」
「なんでだよ。かわいくても毎日朝から夕方まで見れるし」
「あ。可愛いとは思ってるんだ、なんか嬉しい」
「そんな思ってねー」
「うわ失礼」
幼馴染と雑やなりとりをしてから、もう一度絵を眺めた。
「いやー、丁寧に描いてくれてるね。これ描いた人、私のこと好きなのかな?」
「え、え、好きなのかな?」
「え、なんで春星が動揺してんの? あ、もしかして春星私が好きなの?」
「いや」
たしかになんで一瞬焦ったんだろう。
誰かが、夏奈保のことを好きかもしれないっていうのは、何も驚くことではない。
いるでしょうそういう人は。夏奈保は可愛い女の子なんだし。
でも、僕は……そういう、夏奈保のことを好きな人なのだろうか。
最近それがちょっとわからない。
違うな。最近、気づいたんだ。
たぶん、夏奈保が好きだって。
いや、でもそれにしても誰があんなに丁寧に夏奈保の絵を描いたんだろうか。
夏奈保が冗談混じりに言っていたとおり、本当に、夏奈保のことが好きで描いたのかもしれない。
だとしたら、やっぱり、誰が描いたのかは気になるな。
美術部には全部で二十人ほどの部員がいるけど、こんな絵を描きそうな人は……誰だろう?
これは、追求してみたいけど……。
難しいな。
そんなこと考えながら、メッセージアプリを立ち上げると、
『私の可愛い絵描いてくれた人誰か知らないけどありがとうー!』
なんかめっちゃ夏奈保がしゃべってるよ。
ちなみに『?』しか返信は返ってきていない。
いやでもきっとこの中に、夏奈保のことが好きな人がいるはず……!
誰だろうまじで。
ってなんでそこまで気にしてるんだろう僕。
そもそも他の誰が夏奈保が好きなのかとか関係なく、自分が本当に好きかどうか整理しないと。
僕はそう思いながら、夏奈保との思い出を振り返ったりしていた。
すると、またメッセージアプリに新着があって、今度は個人的に夏奈保から来ていた。
『明日行きたい場所があるんだけど、空いてる?』




