094 恨み
ジーの身体身体が完全に燃え尽き炎が消える、次の瞬間鋭い殺気を感じた。
「よくもジー様を!許さん!許さんぞぉぉぉぉ!」
半身を青龍に氷漬けにされたゲルトが俺へ突撃して来る。
「お前達だって今まで人間の命を奪った事はあるだろう!?因果応報だ!」
「黙れ!私にとってジー様は兄であり上官でもある大切な方だったのだ!それを…それをよくも!」
「クッ!何て力だ!?青龍が効いていないのか!?」
流星撃で突っ込んで来たゲルトを正面から迎え撃つ、半身が凍えているので撃ち落とせると思っていたが力が衰えている様子はない、むしろ先程よりも強くなっている様だ、俺達は海面で武器を交えて競り合いになった。
「やはり私ではお前に勝てないのか…かくなる上は我が命を持ってお前を道連れにする!」
狩猟神の耳飾りが警鐘を鳴らす、ゲルトの力が強まっている。
「まさか自爆!?何を考えているんだ!?」
「敵わぬならばせめて最後に一矢報いてやる!共に地獄へと旅立とうではないか!」
ダメだ、今のゲルトは魔力の塊になり臨界寸前、このままでは自爆に巻き込まれてしまう。
「はい、そこまで、危ない危ない、命は粗末にしちゃいけないよ?」
「なっ!?カイト様?何故っ…」
空中に突如現れた穴からフードを被った人物が出てきた、ゲルトの首に手刀を打ち込み意識を刈り取る、パフィン村で出会った少年だろうか。
「危なかったね鬼いさん、勝負の邪魔して悪かったね、謝るよ」
「その呼び方、やはりパフィン村で出会ったヤツか?何をしに来た?」
「覚えててくれて嬉しいよ、2人を通じて鬼いさん達の戦いを見てたんだけどゲルトが良い具合に負の感情に支配されたんで死なすには勿体なくなっちゃった」
フードの少年は気を失ったゲルトを肩に担ぐ、今回も俺と戦う意思は無さそうだ。
「今回は鬼いさんの前に姿を現わすつもりは無かったんだけどね、じゃあ僕は行くよ、海魔神との戦い頑張ってね」
「待てっ…!ダメか、また逃げられてしまった」
再び現れた穴へとゲルトを担いだ少年が入ると穴はすぐに姿を消し辺りは静まり返った。
「なんなんだよ、それにしてもゲルトを逃したのはマズイな、アイツは俺の事を相当恨んでいる」
あの少年はゲルトの命を救いに来た、恨みを抱かれた相手を逃したのはかなりの失敗だ、この先いつ俺を狙ってくるかわからない、常に警戒する必要が出てきた。
「身体の半分は青龍でボロボロになってたししばらくは大丈夫かな、気持ちを切り替えて戦いに集中しよう、まずはサクヤ達を手伝おう」




