092 流星と死神
ジーが次々と繰り出す黒雲を真空波で迎え撃つ、段々と威力が強くなっているな、長期戦はこちらが不利になるが今は鬼神化を使う訳にはいかない、サクヤと一体化すれば雑魚を殲滅する火力が足りなくなる。
「上ががガラ空きだ!もらったぞ!」
「誘い込んだんだよ!間抜けが!」
ゲルトが頭上から流星撃で迫ってくる、しかしこれは計算済みだ、ゲルトと衝突する刹那牛を躱す闘牛士の様に体勢をずらす、ゲルトは勢い余り海中へと突っ込んで行った。
「これで少しの間お前1人に集中出来る、覚悟しろ!」
「舐めるなぁ!力を増したネクロマンサーの杖の力を思い知るが良い!」
俺は海面を蹴り上げ空中にいるジーへと斬りかかる、VRMMOでも杖を扱う魔術師タイプの敵とは何度も戦って来た、接近戦に持ち込めばこちらの有利な筈だ。
「喰らえっ!『風穿』!」
咲夜の先端に力を集め空中のジーへと突っ込む、ネクロマンサーの杖から放たれた黒雲が襲いかかってくるが刃先を中心に巻き起こる暴風で弾く事が出来た。
「ジー様をやらせるかぁぁぁっ!!」
「もう戻って来たか!イージスっ!」
ジーまで後少しの距離で海中から飛び出してきたゲルトが俺に向かって来る、ジーへの攻撃を諦め神甲アイギスのスキル『イージス』を発動した、光の壁に衝突したゲルトと俺は別々の方向に吹き飛ばされた。
「クソっ!後少しのところだったのに!」
「今のは殺られたと思ったぞ、ゲルト、危ないところを助けてもらった、礼を言う」
「ご無事で何よりです、それにしても異界の武器を持つ我ら2人と互角に渡り合うとは…、やはり侮れぬ相手のようですな」
再び空中で並びたつ2人の魔族、数の不利に加えて敵は空中を自在に飛び回る事ができる、やはり簡単には勝たせて貰えない様だ。
「まぁ良い、我々はアレがザラキマクの街へと到着すれば目標を達成できる、かなりの数の人間が死ぬだろうが1割でも生きて捕まえる事が出来ればそれでよい」
「そうはさせるか!あのデカブツとは海竜様が戦ってくれている!」
「例え海竜であろうと偽核を埋め込んだ今の海魔神には敵わんだろうよ」
「海魔神?あのデカブツの事か?」
「遥か昔海竜との激闘の末に海深くへと封印された理性無き我らの祖の1人よ、元々海竜との実力は拮抗していた、偽核の力を得た海魔神の力は前とは比べ物にならん」
遠くを見ると海竜様が海魔神へと青白いブレスの様な攻撃を放っていた、しかし海魔神には効果がない様で悠々と海を歩んでいる、これは思ったよりもマズい、早く加勢に向かわなければ。




