070 図書館
「どうだテミス?反応はやっぱり海の中からか?」
「…そうね、さっきからゆっくりと移動してるみたい、今は街からかなり離れた海の中から反応を感じるわ」
ザラキマクに到着してからの数日が経った、今日もテミスに失われた装備の反応を探ってもらっている。
「参ったな…海の中には手の出しようが無い、せめて海面なら船を出せばどうにかなるんだけど」
「たまに海面近くで反応を感じる時もあるけどすぐに海中に戻っているみたいなの」
「とりあえず良い案が見つかるまで現状維持だな、お疲れ様、出店で何か買ってこようか?」
俺達が海を眺めていた港の近くには多くの出店が軒を連ねている、街の喧騒と合わさりまるで祭りの様な賑わいだ。
「そろそろお昼ご飯の時間だわ、サクヤ達と合流してどこか食堂に入らない?あの子達もお腹を空かせているでしょうし」
「じゃあまずは図書館へ向かおう、何か判った事があればいいな」
テミスと2人で大通りを歩く、目的地は騎士団詰所に併設した図書館だ、ザラキマクの領主はどこかの領主と違って有能な様で荒くれ者の集まる港街なのにすこぶる治安が良い、図書館も領主の私財で建てられたそうだ。
「よう、サクヤちゃん達を迎えに来たのかい?2人共ゆでダコみたいに顔を真っ赤にして本を読み漁っていたよ、奥の窓際の席にいるぜ」
「ありがとうございます、そろそろ昼にしようと思って迎えに来ました、ご褒美に奮発しないといけませんね」
顔見知りになった図書館の職員に挨拶し教えられた席へ向かう、サクヤとアイギスは机にうつ伏せになってダウンしていた。
「あっ、ユイトさん、装備の反応はどうでした?こっちは今日もこれといった情報は見つけられませんでした」
「モンスターの資料も見たけどピンと来ない、主さま、頭がガンガンする」
「ありがとうな2人とも、俺達の方も特に収穫は無かった、今日はもう切り上げで午後からみんなで街を探索しよう、もしかしたら有益な情報が手に入るかもしれない」
サクヤ達にはこの辺りの神話や伝承について調べてもらっている、神様は自分の眷属が俺の装備の1つを所持していると言っていた、ザラキマクに有る装備はその眷属の持っているものだろう。
「ねぇアイギス、アンタの手元にある『気になる男をオトす100の方法』って本は何?調べ物とは関係ないと思うんだけど?」
「テミス、細かい事は気にしない方がいい、忘れるべき」
「アイギスちゃん!私に内緒で何を読んでいたんですか!?私にも読ませて下さい!」
アイギスが一冊の本を抱きかかえサクヤとテミスが引き剥がそうとしている、アイギスのヤツ何を読んでたんだ?
その時後ろから誰かが俺の肩をポンと叩いた。
「図書館では静かにしてくれないか?」
この後俺達は引きつった笑顔の職員さんに謝る羽目になった。




