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069 海風の吹く街

太陽が燦々と照らす港街、大通りの喧騒に圧倒されそうになる、パフィン村を出発し10日程で俺達はザラキマクの街へ到着した。


「うわぁ、アイロンスティールとはまた違った感じで賑やかな街ですね!」


「私はパフィン村しか知らないけど陽気な街ね、色々とお店を見て回りたいわ」


「テミスは初めての街だもんな、気持ちはわかるよ、その前にまず宿の確保をしないとな、どこか適当な宿を探そう」


ザラキマクの街はアイロンスティールとは違い行き交う人々は武器を装備した冒険者風の人が多い、海のモンスターが大量発生しているとの話だったが討伐依頼が多いのだろうか。


「主さま、あの宿はどう?テラスが素敵」


「あの建物か?近くに店も多いし中々良さそうだな、空き部屋があるか聞いてみよう」


俺達は大通り面した一件の宿屋に入る、店の看板には『幸せの白鯨亭』と豪快な字で書かれてあった。


「おう、いらっしゃい!綺麗処を3人も連れて羨ましいお兄さんだ、食事かい?それとも宿泊?」


いかつい顔の親父さんが俺に話しかけてくる、筋骨隆々で如何にも港街の男って感じだ。


「宿泊なんですけど部屋は空いてますか?できれば1人1部屋でお願いしたいんですけど」


アイロンスティールではサクヤ達に押し切られ大部屋での生活になったが俺の精神衛生上出来れば個室にしてほしい、俺だって健全な男子だ、美少女3人と同室だと色々と不都合がある、特に夜は中々寝付けない。


「すまねぇな、4部屋は空いてないんだ、3階の大部屋を貸切するなら朝飯と晩飯付きで1室1泊金貨2枚でどうだい?部屋に風呂もついてるぜ」


街には冒険者風の人が多かったのでダメ元で聞いてみたがやはり空いていなかったか、サクヤとアイギスは大丈夫だと思うがテミスはどう思うだろうか。


「テミスは俺と同じ部屋でも大丈夫か?抵抗がある様なら俺だけ別の宿を探すけれども…」


「な、何を言っているのかしら?私は別にその…構わないわよ、そ、それにユイトになら覚悟は出来てるっていうか…」


テミス顔を赤くしモジモジし始めた、後半は上手く聞き取れなかったが同室でも構わない様だ。


「とりあえず10泊分お願いします、お風呂はすぐに入れますか?さっき街に着いたばかりで汚れを落としたいんです」


アイテムバッグから金貨を20枚取り出し親父さんに渡す、アイロンスティールで荒稼ぎしたおかげで所持金は十分すぎる程に余裕がある。


「まいどあり、大浴場は夜の10時までならいつでも使ってくれ、部屋の風呂は24時間いつでも使ってくれ、コイツは部屋の鍵だ」


「わかりました、荷物を置いたら早速大浴場を使わせてもらいます」


「晩飯は新鮮な海の幸を振る舞うから期待しといてくれよ」


「海の幸ですか!?お肉も好きですが魚も大好きです!大盛りでお願いします!」


サクヤが海の幸と云う言葉に喰いついた、アイギスとテミスも目を輝かせている、これは滞在中の食費が凄い事になりそうだな。


「親父さん、すみませんが滞在中の食事は全員大盛り…イヤ特盛でお願いします、とりあえず追加料金です、足りなくなったら教えて下さい」


追加で金貨3枚を差し出す、親父さんはきょとんとした顔をしていたがその日の夕食後には俺の言葉の意味を理解してくれた様だった。

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