058 土人形
「ユイトさん、道はここで終わっているみたいですね」
俺達はパフィン村から西に伸びた道を辿り森の中を歩いていた。
「行き止まり、まだ先に行く?」
「そうね、まだしばらく先に呪いの元があるわ、禍々しい気配が強くなってる」
「あぁ、村にいた時とは段違いに生命力が吸われて行くのが分かる、きっと気づかれない様に用心して離れた場所に仕掛けたんだろうな、狡猾なヤツだ」
サクヤとアイギスはまだ呪いの効果を体感できないでいるみたいだが明らかに呪いの効果が強くなっている事が分かった。
「!?何か来る!みんな気をつけて!」
テミスの声と同時に俺も何者かの敵意を感知出来た、魔族か?それにしても数が多い。
「先手を取られるとマズいわ、私が牽制する!」
そう云うとテミスは近くの木の枝に飛び乗った。
「来た!喰らいなさい!『ウィンドカッター』!」
テミスが手をかざすと俺達の前方にある茂みに向け風の刃が放たれた、俺の真空波に似ているが少し小振りな刃だ。
「仕留めた!…?」
ガサガサと茂みが揺れる、その直後土で出来た様な成人男性程の人形が姿を現した、片腕が鋭い刃物で切られた様に切断されている。
「なんだコイツは、生気がまるで感じられないぞ?」
ゾロゾロと同じ様な土人形が大量に茂みから現れ俺達の方に近づいてくる。
「アイギス!サクヤとテミスを守ってくれ!サクヤは攻撃が周りの木に燃え移らない様に気をつけるんだ、テミスは脚を狙え!」
俺は仲間達に指示を出すと咲夜を抜き敵の集団に突っ込む。
「切るのがダメならこれはどうだ?『旋風』!」
俺は集団の中心部に中規模の竜巻を発生させる、土人形は体をバラバラにしながら空高く巻き上げられ落下していく、これなら効果があるだろう。
「ユイトさん!足元です!」
サクヤの叫び声に反応しその場から飛び退く、見るとバラバラになった破片が地面へ吸い込まれ新しい土人形が姿を現した。
「コッチも復活してる!切っても焼いてもキリがないわ!」
「主さま、2人は私が守る、安心して」
見ると土人形達は自分の身体の一部を砲弾の様にしてアイギス達を攻撃していた、土の砲弾がアイギスのシールドに弾かれる。
どうする?鬼神化してこの辺り一帯を吹き飛ばすか?ダメだ、まだこの後には魔族が控えている。
「いい加減しつこいんだよ!」
後ろから殴りかかって来た土人形を乱暴に斬りつける、何だ?今変な感覚があったぞ?
「これは…魔核か?」
斬りつけた土人形は復活しなかった、残された土の塊に混ざって掌サイズの黒い魔核の様なものが真っ二つに切断されていた。




