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053 テミスの警告

手渡された耳飾りを右耳に装備する、アイギスを初めて装備した時と同じ感覚だ、自分の所有物である事がはっきりとわかった。


次の瞬間部屋中に眩しい光が満ちる。


「ユイトのバカ!いきなり居なくなるってどう言うつもり!?私捨てられたんじゃないかって心配したんだから!それにこの世界はなんなのよ!?」


突然現れた赤髪の少女は開口一番俺を罵倒した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いきなり何が起こったか分からず茫然とするストークさん一家にVRMMO(ナイアル)の事を含め話した、出来れば知られたく無かったが仕方ない。


「つまりテミスも何があってこの世界に来たかさっぱりわからないって事か」


「そう、ユイトがサクヤを当てて喜んでたのが最後の記憶ね、気がついたらこの村の祭壇に転がってたわ」


赤髪の少女、テミスは耳に掛かった髪をかきあげながら話す、気が強そうだが少し幼さの残る整った横顔に見惚れてしまいそうになった。


「そうそう!ずっと伝えられなくてモヤモヤしてたけどこの村ヤバいわよ、少し前から何か嫌な感じって言うか呪い?みたいなのをかけられているわ、誰かが村の人達から生命力を吸いとってる」


「呪い?そう言えばここ最近村のみんなが疲れやすくなって寝坊したりする人が増えているのよね、収穫期だから畑仕事で疲れてるだけと思ってたんだけど」


「だからオイラ村のみんなに力が出る物を食べさせたいって思って狩りに出たんだ、肉を沢山食べたら疲れも取れるって思って」


耳飾りを装備した時から感じ始めた害意、意識して見ると僅かにだが自分の体から力が抜けているのが感じられた。


「確かにこれなら普通気づかない、テミスが居なかったら俺も分からなかった、村からそう離れていない所から害意を感じるな、今日明日どうにかなる様なものじゃないが放置していたらマズい、その内きっと犠牲者が出る、早めに呪いの発信源を排除しないといけない」


狩猟神の耳飾りの持つ2つの固有スキルの内の1つ『危機感知』の効果だろう、自分に向けられた敵意や害意を察知する事の出来る常時発動型のパッシブスキル、VRMMO(ナイアル)では乱戦時での狙撃や罠等の不意打ち対策として重宝していたスキルだ。


「やっぱりユイトなら危機感知は発動するわね、ストークさんは『時詠み』は何度か無意識に発動していたけど危機感知のほうは無理だったみたい」


「最近私の占いの調子が良かったのはテミスちゃんのお陰だったのね、自分でも怖いくらい当たるから不思議だったのよ」


「じゃあお母さんがこの前フェザントさんと話していた村の危機の話ってこの事だったのかな?」


「もう1度占ってみようかしら、今夜は星が綺麗に見えているから丁度良いわ、呪いの元を調べるにしても今日はもう遅いから良かったらユイト君達も私の占いを見にこない?」


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