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344 救える命

「酷い有様だ…あちこち建物が崩れてるな…」


『どうしますユイトさん?いきなり街の中に降りたらまた捕まっちゃうかも知れませんよ』


「確かにその恐れはあるけど街がこの状況だと一刻も早く怪我人の治療に当たらないと手遅れになって…アレは!?」


眼下に広がるのは半壊したアレプデスの街並み、普段なら多くの人で賑わっているであろう大通りでは住居を壊された人々らしき人々が寄り合い街のいたる所で煙が上がっている。

近くの壊れた建物へ目をやると腹部を木材に貫通された老人が今にも息を引き取りそうになっている光景が飛び込んで来た、迷っている場合じゃない。


「お…おい!アンタ一体…」


「話は後です、メリッサ、憑依を解いてこのお爺さんを頼む」


生命の指輪から光が溢れてメリッサが姿を現す、住民の救助に当たっていた3人の兵士はあんぐりと口を開けて立ち尽くすしか出来なかった。


「もう安心して下さいね。貴方は助かりますから…ユイト君、治療の邪魔になるお腹の木材を抜いて欲しいの。私がキュアーを掛けるからゆっくりと抜いて頂戴」


「わかった、少し痛いかもしれないけど我慢して下さい」


「ごぶっ…どうせこのままだと助からん…お前さん達のやりたい様にやっておくれ…」


メリッサが老人の傷口に手をかざし癒しの力を発動させると見る見る傷口が塞がり始めた、完全に塞がると腹を貫通した木材が抜けなくなる、少しづつ塞がる傷の具合に合わせてゆっくりと木材を引き抜いた。


「なんじゃ…痛みが引いていく…儂の腹は一体どうなっとるんじゃ…?」


「なかなかグロい事になってるんで見ない方が良いと思います…っと!メリッサ、全部抜けたぞ!」


「じゃあ傷を塞いじゃうわね…良し!これでもう大丈夫よ」


阿吽の呼吸で木材が抜けると同時にメリッサの掌から放たれる癒しの光が強くなる、と同時に傷口が一瞬で塞がった。


「痛みが完全にひいた…じゃと?」


「あ…アンタ…今のは回復魔法か?それに空を飛んだり光の中から人が現れたり…ともかく俺達の敵、じゃないんだよな?」


呆然と立ち尽くし老人の治療を見ていた兵士の1人が話し掛けてきた、どうやら問答無用で俺を捕らえる様な事は無い様だ。


「はい、俺はこの街の救援に来た旅人です。貴方達の敵ではありません」


「色々聞きたい事はあるけど話は後だ、良かったらその瓦礫をのけるのを手伝ってくれ。下敷きになっている人がいるかも知れないんだ」


「分かりました、それにしても酷い有様ですね…皆、憑依解除だ!1人でも多くの人を助けるぞ!」


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