323 企み
「ユイト君!?どこが痛むの?私に任せて頂戴」
「ぜ…全身が痛い…少しでも動いたらバラバラになってしまいそうだ…」
「鬼神化は元々身体への負担が大きいですからね。私も力を使われ過ぎてヘトヘトです…」
「ん~でも変ね?生命の指輪の力で只の筋肉痛ならこんな風にはならない筈なんだけど」
「身体を酷使され過ぎたみたいだ…なんと言うか身体の底から痛みが湧き出てくる…ちょっと動けそうに無いな」
生命の指輪は普段通りにダメージを癒す為に機能している。だがもう1人の俺の暴走で生命の指輪の回復力でもカバー出来ない程に身体はボロボロになっている様だ。正直こうしている今も眠ってしまいそうになる。
「ひとまずゆっくりしているといい。コレはエルフに伝わる滋養強壮にいい飲み薬だ、ゆっくり飲んでみておくれ」
「ありがとうございますオウルさん。…ぷはっ、飲みやすくて美味しいです」
オウルさんが手渡してくれた瓶入りの液体を口に含むと微かに甘い爽やかさが広まった。気のせいかも知れないが身体の疲れが少しはマシになった気もする。
「本当に皆には迷惑をかけてました…そうだ!?カイト達は?」
すっかり忘れそうになっていたがまだ何の問題も解決してはいない。邪竜ルシオンの封印を解こうとしているカイト達はまだこの場に留まっているのだ。
「心配せずとも私は貴方のお仲間に約束をしました。私はこの山の封印には手をだしません。不本意ではありますが…」
「鬼ぃさん…こんな大事になるとは思っても見なかったよ。僕も今回は大人しく引き下がる事にするよ」
少し離れていた場所に立っていたカイト達が俺に語りかける。信用ならないが今から再び戦いになるのは避けたい。今は2人の言葉を信じるしか無い。
「まさか君達が約束を守ってくれるとは思わなかった。感謝するよ」
「心外ですね。私にも誇りはあります。自分から一度口にした事は守りますよ」
「レブが勝手に約束した事だけど今回は仕方ないね。偽神は怒るだろうけど」
「…お前…何か隠していやがるな?」
シグマさんが立ち上がりレブを睨みつける。カイトも何が起こったか分からずにキョトンとしているが何か企んでいるのだろうか。
「おやおや?気付かれてしまいました?流石に歴戦の強者」
「いいから白状しやがれ!何を企んでやがる!?」
「何も企んでなどいませんよ。只…私の仲間が上手くやってくれただけです」
何が嬉しいのかレブは薄ら笑いを浮かべいる。仲間だと?カイトとレブ以外に誰かこの大空洞に偽神の仲間がいると言うのか?




