125 繋がり
どうしてライノさんが侯爵派と魔族の繋がりを知っているのだろうか、真剣な様子を見るに当てずっぽうを言っている訳でもなさそうだ。
「実は今朝七星核を持って店を出る前にあっしの店にブーチって若造が怒鳴り込んできたんでやす、何故七星核を侯爵派に売らなかったのか大層な剣幕でやした」
「エナハイ家のバカ息子だね、あの家の連中は平民は無条件で貴族の言う事を聞くべきだって勘違いしている、全く嫌なヤツらだよ」
「奥様やペーギの旦那は良くご存知だと思いやすがあっしの店の入り口には来店した客が邪悪な人間かどうかを判定する仕掛けがありやす、あの若造が来店した瞬間…その仕掛けがぶっ壊れやした、こんな事は初めてです」
「あの仕掛けは私が考えアンタが作った物だ、良く知ってるよ、ちょっとやそっとの悪意を感じたくらいで壊れる様なヤワな術式を組んだつもりは無いんだけどね、偶然じゃないのかい?」
ライノさんの店にそんな仕掛けが有るなんて知らなかった、七星核の様な高級品も扱っているから防犯上当然かもしれないな。
「それだけじゃありやせん、あの若造は帰る前に吐き捨てる様に言っんです『人間風情が調子に乗りやがって』って、それであっしはピンと来やした、この若造はこの前見たユイトさん達の芝居に出てきた魔族に違いないと」
「平民じゃ無く確かに人間って言ったんですか?」
「間違いありやせん、はっきりと聞きやした」
「どういう事だろうね、確かにあの家の連中は腐った性根の連中ばかりだけど貴族だけあって出自は確かだ」
俺がこの前ブーチを見た時には変な魔力や邪気を感じる事は無かった、もしライノさんが有ったブーチが魔族だとするとここ数日の間にエナハイ家の周辺で何かが起こった可能性が高い。
「失礼いたします、奥様少しよろしいでしょうか?」
遠くから訓練場の俺達を見守っていたペーギさんが近づいてきた、手には白い封筒を持っている。
「何か有ったのかい?別にこの場にいる連中になら聞かれても構わないよ」
「王城から奥様宛に手紙が届いております、こちらで御座います」
ラッカさんはペーギさんから手紙を受け取るとその場でビリビリと封を破き読み始めた、相変わらず豪快な人だ。
「ユイト、例の日程が決まったよ、それについては後で話すとしてペーギにまた一つ調べて欲しい事があるんだ、ちょっと危ない仕事になるかもしれないんだけど…」
「私に出来る事であればなんなりとお申し付けください、しかし奥様が遠慮なさるとは珍しい」
「エナハイ家についてどんな事でもいい、あの家の連中に最近変わった事が無かったか調べて欲しい、もし少しでも身の危険を感じたらすぐに戻ってくるんだよ、約束しておくれ」
ラッカさんの話を聞くとペーギさんは優雅に一礼し訓練場から去って行った、魔族とエナハイ家、果たして本当に繋がりがあるのだろうか。




