70話 新たなる装備
だいぶ遅くなりましたが
あけましておめでとうございます!
今年も皆様よい年になりますように!!
フロストリザードマンの里に新たなプレイヤーが到着してから数日。明日土曜日は、いよいよ秋イベントの開催だ!!
闘技大会の準備については、源三郎さんたち忍者の人達や里に新たにやって来た二人との模擬戦をして貰って対人戦に結構慣れたし、スキルのアドバイスなんかもしてもらって色々強化出来たと思う。ふっふっふ、闘技大会ではフロストリザードマンの力や特訓した新スキルを駆使して本戦まで勝ち残ってみせよう! また、未エントリーだった芸術コンテストについても、昨日ギリギリでなんとか登録してきたよ。
中々コレだ!というものが作れなくて苦労していたんだけど、モブ田さんがアドバイスをくれたおかげで、良い感じに仕上げられたと思う。ちなみにテーマは四つの内から「秋」を選び、フリボで買った『ポンポン栗』と自力採取の『スノウアップル』で作ったなんちゃってアップルマロンタルトを出品したぞ! 店で小麦粉が買えないからケーキとかタルトとかは無理だと思っていたんだけど、クッキーを砕いてタルト生地が簡単に作れるとモブ田さんに教えてもらい、カフェで買ったクッキーを使って作ったよ。ホクホクの栗とクッキーから作ったサクサク生地にシャリシャリで時々ひんやりするリンゴがナイスなハーモニーを奏でる不思議なデザートになった。モブ田さん様々だ! ありがとう! 自信作だから、上位は狙えなくても入賞はしたいなぁ。
後は、メンマさん達に頼んだ新装備だな。あの『スノウワイバーンの皮』を筆頭に氷属性素材の加工に色々苦戦しているみたいで、イベント前日の今日に受け取る事になった。厄介な注文をしてしまってすみません……。そんなわけで、以前に装備会議を行なったフィフローの冒険者ギルドに再集合だ。もちろん、ここまでの道のりはフード付きローブをきっちりかっちり着込んできたぞ! ギルドに着くと源三郎さんと影丸さん、サテンさんにアドハムさんが揃っていた。あれ? メンマさんは?
「お疲れ様です、みなさん。お待たせしてしまってすみません。あとはメンマさんだけですか?」
「お疲れ様ですますプラナさん。はい、メンマちゃんはちょっとトラブルで遅れるそうです! 先にレンタル生産室に行っていて欲しいそうです。」
「そういうことじゃから、先に入るぞ。もう、予約はしとるからついて来い。」
メンマさん、トラブルって大丈夫かな? 不安に思いながらもとりあえず源三郎さんの後に続いてレンタル生産室に入る。その後は試着タイム! 武器は源三郎さんから、防具はサテンさんから受けとる。(頭装備とアクセサリー系は後からメンマさんが持ってくるとのこと)ちなみにゲームなんだから試着なんて必要無いのでは?と思われがちだが、アトオンはこの辺に妙なこだわりがあるらしく、多少のサイズ差は自動調整されるものの、それ以外は手動での調整が必要となる。
また、生産自体についても規定のレシピがあるものなら、オート・セミオート・マニュアルを選んで作れる。オートなら殆ど失敗しない代わりに品質はそこそこ。マニュアルは少しのミスで失敗したり型が崩れたりするが、ちゃんとやれば高品質なものが作れるという感じ。セミオートは、オートとマニュアルの中間の仕様。そして、レシピの無い物を作る時は、原則的にマニュアルでしか制作できない。ちなみにマニュアルにて一回作ったらオリジナルレシピとしてマイメニューにレシピ登録ができる。このオリジナルレシピをギルドに売却すると、他の人でもそのレシピが使える様になるとか。
というわけでこの新装備は前の毛皮装備と同じく、サテンさん達が主にマニュアルで作成してくれた渾身の一作であり、微妙な部分の調整は手動で行わなくてはいけない。さてと、あの『スノウワイバーンの皮』を含む諸々の素材からどんな装備ができたのかな? カッコいい革鎧とか、鉱石類もいっぱい渡したから金属の軽鎧かもしれないな。いったいどんな感じか…な……?…?!…(o_o)?
な? なな??
ちょっと予想外なアイテム名を思わず二度見して、サテンさん達を振り返る。力強く頷くサテンさんの目に促され、とりあえずメニューから装備したのだが。
頭:
胴体:玲瓏なる氷雪の騎士服
インナー:秀逸な新雪のチェニック
腕:秀逸なスノウディアーのレザーガントレット
腰:秀逸なスノウスネークの剣帯
足:玲瓏なる新雪のスラックス
靴:秀逸な氷鉄のグリーヴ
右手:卓越した氷晶のツインアイスダガー
左手:卓越した氷晶のツインアイスダガー
アクセサリー①:
アクセサリー②:
……うん。玲瓏だの秀逸だのの名前がついてるのは高品質の証だから素晴らしい出来なのは、わかる。でも、騎士服??! 鎧でもローブでも無く、騎士服?! え、あの『スノウワイバーンの皮』はどうなった? 装備して腕や足を見てみると、ひんやりした肌触りの良いと青と白を基調とした美麗な布装備が目に入る。うわっ、服に銀糸の刺繍や水晶が縫い付けられてて、キラッキラしてるんだが?? 剣も柄や鞘になんか細かい装飾がされてる? びっくりしながら目を前に向けると、「カッコいいですます!」と目を輝かせているサテンさんに対し、プルプル震えながら笑いを堪えている男性陣が目に入った。……おおう,何笑ってるのかなぁ? げーんざーぶろーうさぁあああん??( *`ω´)
「遅れて〜ごめんなさい〜! あ〜、もう〜試着始まってるのね〜。じゃあ〜、これとこれと〜これ〜! ついでにコッチも投げるから〜プラナさん許可してね〜。微妙だったら〜直せるから〜」
そんな空気を断ち切る様にやってきたのはメンマさん。サッとトレード申請をして来た上で、何やら操作したかと思えば、自分の目の前にもポップが現れる。
『「おつまみメンマ」様より【整髪】スキルの使用許可が申請されました。許可しますか?』
うぇ?! 【整髪】? 何だそれ?! 名前からして髪を弄れるスキルってことか? 自分でやるキャラメイク以外にもそんな事が出来るのか??! と、とりあえず許可っと。
「あ〜、頭装備も〜 一緒に対応するから〜それだけ先に〜装備して貰ってもい〜い?」
「は、はい」
頭装備、頭装備っと。さっきトレード申請して来たのはこれか『玲瓏なる雪化粧のコールドリボン』……リボン?? 確かに長髪だけど、自分は一応男性アバターなんだけど……! くっ、もうどうにでもなれ! 『玲瓏なる雪化粧のコールドリボン』をメニューから装備だ!
すると、通常ならそのまま頭に自動で装備されるリボンがメンマさんの手元に現れる。端にシャラリと金属細工が付いたツヤツヤしたリボンで、色合いは真ん中が濃い青で両端にいくほど真っ白なグラデーションになっている。よく見ると白色は、布地の色では無く白い雪結晶の刺繍がだんだん増えていってグラデーションになっていた……あれ、サテンさんが刺繍したのかな? 金属細工も凄い細かいし、みんな凄いな……と思っているうちにメンマさんがテキパキと手を動かし、瞬く間に髪が結い上げられていく。ハッと気付いた時にはもう作業は終了していたようだ。髪はどうやらリボンを編み込んだポニーテール?みたいに結い上げられたみたいだった。やり切った様子で満足気にしているメンマさんに促され、追加のアクセサリーも装備していく。最終的に全身装備はこうなった。
頭:玲瓏なる雪化粧のコールドリボン
胴体:玲瓏なる氷雪の騎士服
インナー:秀逸な新雪のチェニック
腕:秀逸なスノウディアーのレザーガントレット
腰:秀逸なスノウスネークの剣帯
足:玲瓏なる新雪のスラックス
靴:秀逸な氷鉄のグリーヴ
右手:卓越した氷晶のツインアイスダガー
左手:卓越した氷晶のツインアイスダガー
アクセサリー①:玲瓏なる氷麗のレースベネチアンマスク
アクセサリー②:秀逸な氷麗のスノウワイバーンのペリース
例の『スノウワイバーンの皮』は、ペリースとやらのアクセサリーになった様だ。ペリースって何だろうかと思ったら、肩に付ける片側だけのマントだった。青灰色の渋い色合いが滑らかに輝く、良い感じのマントで肩の留め具には恐らくフリージア様っぽいドラゴンの顔が彫られていた。それからレースベネチアンマスクは、何故にまたアイマスク?! 露出OKって話した筈なんだけど、あれかな? あんまり目立ちたく無いのを察して気を使ってくれたのかな? ちなみに白い糸で出来た繊細なレース編みのアイマスクは、ちゃんと目元の藍色の鱗が表に出るように模様の隙間が空いており、顔にピッタリフィットしたよ、職人技凄い。後ろで結ぶ用の紐部分も金色の糸でビーズ?みたいなのが縫い付けてあり、デザインセンスがプロ並みだった……自分じゃ到底作れそうにない繊細さだ…ガチ生産職ヤバい……。
さて、新装備を全部身に纏ったところで、いつの間にかアドハムさんが出していた姿見で全身の様子を確認すると……うん…何となく予想していたけど……あれだ! 少女漫画に出てくるキラッキラしてる王子様?みたいな感じになってるぅうう?! いや、この服は騎士服みたいだから騎士様か? まあ、その辺はどっちでも良いけど、凄い凄く少女趣味が爆発している気ががっ!! 待ってくれ、自分は中身も男なんだ! 確かにこの装備はかっこいいけど、どっちかというと女子目線のかっこよさだよな?! ちょっとこの格好はいくらゲーム内でも恥ずかしいんだがっ?!?
くっ、ハイタッチしてるメンマさんとサテンさんは良いとして、震えながら突っ伏してる忍者2名と、耐えきれなくなって「アヒャ!アヒャヒャ!」と床で笑い転げてるアドハムさんは共犯だなっ?! 制作途中で流石に止めてくれよ! いや、作って貰った側が文句言う事じゃないんだけど、流石に夢見る王子様ルックは予想外だ! あ、でも性能はめっちゃ良いな。鎧じゃなくて服なのに防御力がかなり高いし氷属性強化値が凄い、追加で水属性強化と精神力強化も入ってる上に火耐性まで……。んっ? このアイスダガーに、こんな追加効果が?! うわっ、本当に凄い。
「うんうん〜、こうして全身フル装備を見ると〜感慨深いね〜」
「カッコいいですますプラナさん! この髪と鱗の色合いに服がちゃんと合って良かったですぅー!!」
「いやぁ、似合ってるねぇ!! アヒャヒャヒャ!」
「これでショートソードか細剣あたりを腰にさげていたら完璧だったんでござるが……」
「ぶふっ、そ、そんなこともあろうかと剣も一応あるぞ。プラナよ、こ、これを着けて……ぶははっ!! ダメじゃ、想像しただけで、ぶはははは!」
なぜか源三郎さんが綺麗な装飾の入った西洋風のショートソードを笑いながら出して来たんだが。装備しないからな! 絶対!!
「プラナさん〜着心地はどう〜?」
「見た目が予想外でしたが、着心地は問題ないですよ。皆さん、忙しい中こんなに凄い装備を作っていただきありがとうございます」
「難しい素材が沢山だったので、大変でしたけど逆にやり甲斐が有って楽しかったですます!」
「ヒッヒッヒっ、サテンなんか途中で火が付いて集中しすぎてログイン時間の上限アラートなるまでノンストップでやってたりしたぜぃ。俺が横で声をかけても、糸を補充しても、全く気づかなかったのは笑ったなぁ! アッヒャッヒャ!」
「あー! それは恥ずかしいから言わないでっ! アドハムくん!!」
アドハムさんとサテンさんは仲良いなぁ。リアルも知り合いなのかな? あっ、そうだ。ちょっとコレは聞いておきたいな。
「そういえば『スノウワイバーンの皮』は、このペリース?って言うマントになったんですね。てっきり革鎧とかに使うかと思ってました」
「最初はそうしようと思っていたのでござるが、革鎧用に切って整形しようとしたら、切ろうとした時点で直感的にもうヤバいと感じたんでござるよ。サテン殿やアドハム殿と協力して他の方法も試したんでござるが、やる前から上手く行かなさそうな感じだったんでござる」
「そうなんですます! こんなの初めてだったですよ!」
「ヒッヒッ、それで整形が難しいならいっそ、そのまんまの形を活かそうって事で、ペリースにしたわけだ」
「肩の留め具は〜、私の自信作だよ〜。スクショで〜見せてもらった〜フリージア様を彫ってみたの〜。どうかな〜?」
「やっぱり、フリージア様の横顔でしたか! 凄い良いですね! それにしてもやる前から上手くいかなそうな直感が働くってこの素材のせいなのか、皆さんの直感が凄いのか……」
「まあ、どっちもじゃないかのぅ? 今のVR機器はかなりリアルの感覚を反映できるようになっとるから、リアルの直感も働き安いじゃろうし。その『スノウワイバーンの皮』は、明らかに今現在扱う事が出来るアイテム群のレベル帯より上の素材じゃろうしな」
「なるほど」
そんな感じで、各装備の製作秘話を聞いたり、追加効果について説明を受けたり、動きの確認をしたりしたよ。最後あたりは、戦闘訓練室に移動して【竜人化】スキルを使った状態でスクショ撮影会が開かれたり、何故か別途作成されていたミントとコユキの自分とお揃いみたいな青と白を基調としたアクセ装備と鞍を渡されて3名(1人と2匹)でセット撮影をされたりした。ミントに跨ってポーズとかとったけど、これは猫騎士?になるんだろうか??
最初は、この王子様?騎士様?ルックはちょっと恥ずかしかったんだが、撮影会をしてたらなんか慣れてしまった。まあ、ゲーム内だしこういうのもありか。ポニーテールにしたおかげが、あの某ゲームのラスボス感は大分薄くなったしな。ちなみに、里へ帰ってフリージア様にも新しい装備を見せたところ、予想以上に大好評だったよ。(「おお! 凛々しくなったのう! うむうむ、良き氷の気配もしておる。腕の良い職人が作ったようだの。おや? 肩のコレは竜かの?! 我の加護を授けたお主に竜の飾りを用いるとは、分かっておるのう! 良きかな良きかな!!」)
よし、明日はいよいよ闘芸祭開幕だ! 先ずは闘技大会の予選、バトルロワイヤルで生き残るぞ!!
華麗なる氷の王子(騎士?)プラナ爆誕!!
ちなみにメンマさんのトラブルは、家の中でずっこけた際に横にあった本棚に激突し、中の本が雪崩れ落ちた事でした。メンマさんは、痛みに耐えつつ泣きながらなんとか本をある程度片付けてからログインしたそうな。(なんで本とかって一冊落ちたら他のも一斉に雪崩れるんだろうね……ちょっとの事から大惨事になるあの絶望感は半端ない……)
ちなみに【整髪】スキルについて。アトオンのキャラメイクは、基本的に初回時や種族転生時などの時のみですが、髪型や化粧・爪などの一部位のみのキャラメイクはスキルで変更可能となっています。そのため、サドンなどの町中ではNPCが経営する美容院やネイル屋さんなどがあったり、メンマさんみたいにプレイヤーがそのスキルを持っている場合は、相手の許可ありで他プレイヤーの外見を一部変更できるのです。意外な場所に意外なお店があるかも? フィールドだけでは無く、町中巡りもとっても楽しいアトオンです!




