64話 転生の儀
フリージア様から其処を動かないようにと言われ、緊張しながら直立する。すると、最初に洞窟へと辿り着いた時と同じく、フリージア様がフゥッとこちらに軽く息を吹きかけた。冷たい風が頬をなでたのを感じると、不意に足元に青く光る魔法陣が描かれた!
「我が名はフリージア! この星を創造せし、大いなる女神ピーリア様よりこの地の守護を任されし、雪と氷を司るもの!! 今、我が加護を賜らんと欲するものがここにあれり! その力、その魂の輝きを我は認めたり! よって、ここにリザードマン・プラナを我が眷属たるフロストリザードマンへ転生せん!!」
高らかにフリージア様が宣言する。すると足元の魔法陣からキラキラと青みを帯びたダイヤモンドダストの様なものが立ち上がり、あっという間に身体中を覆ってしまった! その奔流に思わず目をつぶってしまうと、厳粛な儀式に似合わない電子音がピコンッと鳴ったのが聞こえたような気が……。
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ん? と思ったのも束の間、目を開けるとゲーム開始前にキャラメイクを行った真っ白な空間にいた。不思議に思い、首を傾げると『パンパカパーン!!』という祝福の音が辺りに鳴り響き、真っ白な空間に映える色鮮やかな紙吹雪が舞った。
「プラナ様! 初めての転生、おめでとうございます!」
そう告げたのは久しぶりに見るピンク色の球体。ナビゲートシステムAIのナインだ。
「あれ? ナイン? 久しぶり! ここはキャラメイクをした時と同じ場所?」
「はい。転生後はアバターの見た目も変わりますので、こちらで再度キャラメイクを行っていただいております! 今回プラナ様は「フロストリザードマン」への転生ですね? では、鱗や尻尾があるのはそのままですが、鱗の色の制限が青系統に変化します。鱗の色が変わりますので、これを機に髪色や瞳の色も変えてみたらいかがでしょう? 制限時間などはございませんので、ゆっくりお考え下さい!」
ナインの言葉が終わると懐かしいキャラメイク画面が表示された。表示されているアバターは、現在の自分のアバター(装備は見やすいようにか、初期インナー装備だった)に鱗が水色になっただけの状態のもの。なるほど、これをベースに変更を加えていくんだな? えっと今は髪は長めな優男風で髪色はグレー、目の色は琥珀色、そして尻尾と肌の鱗の色が薄緑から水色になってるな。どれどれ? 鱗の色はどんな風に変更出来るのかな。青系統ってナインは言っていたけど……、へえ、白に見えるうっすい水色からかなり濃いめの藍色まで変更できるのか。
うーん、どうしようか。そうだな、ここはフリージア様の鱗みたいに薄氷が被さったみたいな青白い鱗が良いかな。肌の鱗の位置はそのままで、うん、こんな感じだ! ついでに髪色も銀色にしてみよう!! うっ、髪が銀色だとなんだか顔も冷たそうに見えるな。うーむ、髪色もちょっと青みを入れるか。鱗より青みを増した銀色にしてっと。
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……ダメだ、ダメだ! どうやっても、青系統だと冷たくて近寄りがたい雰囲気が抜けない! どうしよう、リアルみたいに初対面の人に怖がられるようなアバターにはしたくないんだが。
うーん、こうなりゃヤケだ! いっそクールでカッコいい方面にしよう! 青系統ならそっちの方が自然だろう。目つきも優男風からキリッとさせて、髪の長さも前より長く! 肩より下までくる青銀の長髪だ!! リアルじゃ男の長髪なんて目立つし、手入れも大変だからできないけど、ここはゲームだからな! ここをこうして、うん! 良い感じだ!
……なんだか、某ファイナルなゲームのボスみたいな感じになったけど、だ、大丈夫だろう! あんな長い剣は持ってないしな。あとは、目の色はこのままで良いか。元々爬虫類っぽい感じをイメージして琥珀色にしたし、髪や鱗の色合いにも合ってるし。あ、鱗って一部だけ色を変えることも出来るのか。じゃあ、目元にちょっと藍色の鱗を足してみよう。
うん。中々良いんじゃないだろうか? デザインとかはさっぱりな方だが、これは上手く行った気がする!!
「ナイン、キャラメイク終了だ」
「お疲れ様でした! では、最後に設定した見た目にアバターを変更いたしますので、最終確認をお願いいたします!」
身体がポゥっと光ると、あっという間に尻尾の鱗の色が設定した通りの青白い色に変わった。また、サラリと頬に落ちるのは長くなった髪。これでアバター全体が変更されたんだな? ふと前を見ると大きな姿見が現れていたので、それで全身をチェックする。くるりと姿見の前で一回転。今まで薄緑色だった尻尾やグレーの髪が、ガラッと変わってしまったので少々違和感はあるが、これはこれでカッコいいと思う。満足したのでナインに最終確認もOKの旨を伝える。
「最終確認OKですね、承知しました! フロストリザードマンの注意点としましては、耐寒耐性が付いた代わりに、通常のリザードマン以上に暑い場所が苦手になっており、暑い場所だとヤケド状態や渇水状態になりやすいですのでお気をつけ下さい。また、火耐性も下がっておりますので、火属性の相手と戦う際もご注意下さい! 詳しい種族特性につきましては、ログイン後にメニューよりご確認下さいませ」
「ありがとうナイン。後で確認してみるよ」
なんとなく予想していたが寒さに強くなった分、暑さや火に弱くなっているみたいだ。まあ、その辺はまた装備やアイテムでなんとかしよう。とにかく、当初の予定通り、リザードマンの弱点であり俊敏力が低下してしまう寒さには強くなれたんだ! 一歩前進だな!!
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ナインにお礼を言って、通常空間に戻る。先ほど儀式を終えたポータル前だ。心配そうにこちらを向いているフリージア様に無事に転生出来た事を伝えよ……
『おめでとうございます! 種族転生を成し遂げました! 称号「転生を成し遂げた者」を取得しました!』
『おめでとうございます! フロストリザードマンに転生いたしました! スキル【氷魔法】【凍結耐性】を取得しました!』
『おめでとうございます! 里の守護竜であるグランアイスドラゴンのフリージアに、その力を認められました! 称号「聖氷竜の寵愛」を取得しました! スキル【竜人化】を取得しました!!』
うわっ?! 一気にポップアップがきたな??! えーと、転生したことによって称号とスキルが取得できたんだな。お、予想通り【氷魔法】が取得できてる。サンドリザードマンに転生した砂漠のリザードマンさんも【砂魔法】取得していたからな、自分なら【氷魔法】が覚えられると思ってたよ。これから、闘技大会までコユキと一緒に【氷魔法】を鍛えないとな。
えーっと、それから……称号「聖氷竜の寵愛」? スキル【竜人化】? なんだこりゃ???
「プラナ、大丈夫かのう? 痛いところなどないか?」
「えっ、は、はい。大丈夫です! あの、フリージア様? 無事に転生はできたみたいなのですが、変な称号と【竜人化】というスキルも一緒に取得したみたいなんです。こちら、何かわかりますか?」
「おお! ちゃんと【竜人化】も取れたかの! 良かった良かった! 大丈夫じゃろうとは思っておったが、上手く行ったようじゃ。先ほど言うたであろう? サプライズがあると。通常なら我の眷属たるフロストリザードマンになってから、試練として我と戦い、力を認められた者だけが上位種族であるアイスドラゴニュートの力を一時的に使える特殊スキル【竜人化】を取得できるのじゃ。じゃが、お主は我が直ぐに転生させようとした時にピーリア様から神託があって、転生のための試練をこなすはめになったじゃろう? 苦労をさせてしもうた代わりに転生用の試練の一つに、【竜人化】用の試練も混ぜ込んでみたのよ。我の予想通り、転生したら一緒に【竜人化】も与える事ができたの! これならピーリア様からも横槍は入れれまいて」
ふんすっとドヤ顔をするフリージア様。あー、神託で転生キャンセルされた時、フリージア様ちょっと不満そうだったもんなぁ。本来なら転生後にまた試練クエストしないといけない奴を一緒くたにやっちゃったのかあ。え、これ大丈夫なんだろうか? まあ、無事に取得できてるし、システム的にも問題はないんだろう。結果オーライ!!
ピーリア様「あぁ〜?!! そんな抜け穴が?! え? ちょっとナビちゃん達! システム的にあれは大丈夫? エラー起きたりしてないかしら?! 緊急チェックよー! マスター(運営)にも報告ーー!! もう〜フリージアちゃんったら、やり過ぎよー!」
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……この後、現実サイドの運営でも一騒ぎが起きましたwww
通常の転生試練クエストでは、里の守護を担う聖竜・聖獣・聖人とのバトルは発生しません。通常だと、好感度上げ→転生試練クエスト→種族転生→好感度上げ→力試し試練クエスト(里の守護を担う聖竜・聖獣・聖人とのバトル)→称号「〜の寵愛」と上位種族の力を一時的に得る特殊スキル取得の流れです。
今回は、フリージア様との好感度がかなり高く、またフリージア様のAIがシステム的な抜け穴に気づき、やれるならやってしまおうと実行した結果です。
この後、運営にて廃里のポータルを復活させたプレイヤーに対する、廃里のNPCの好感度の上がり方や今回の抜け穴に関して再調整が入ることになりますが……そんな事になっているなんて、今のプラナは全く知りません。知らぬが仏……。
因みに大半のプレイヤーの隠れ里に行く主な目的は、基本的に転生 or 特殊アイテム貰えるクエスト or 里固有のアイテム購入などです。そのため、目的を達したら里を離れる事が多いです。なので、力試しクエストの存在は殆ど知られておらず、称号「〜の寵愛」を持っているプレイヤーは、主人公プラナを含めて現時点で ーーー 約2名。
※因みに同じ【竜人化】スキルでも、使うプレイヤーがただのリザードマンなら、使える力はドラゴニュートの力になります。サンドリザードマンならデザートドラゴニュート。リザードマン系列以外の種族も異なるスキル名ですが、それぞれの上位種族の力を得られる特殊スキルが有ります。




