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まったりお散歩?VRMMO珍道中  作者: 苺蜂蜜
四章 月落ち竜啼いて 霜天に満つ
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63話 最後の試練(後編)


 現在、フロストリザードマンに転生するための最後の試練として、フリージア様との一対一での力試しバトル中。だが、開始早々に使われた【氷結領域フリージング・リージョン】のせいで視界は吹雪によってかなり見えにくい状況。アイテムを使わなければ毛皮装備でも体温ゲージが減少する中、フリージア様が作るツララを避けながら、氷柱のオートガードをもかわして、フリージア様に一撃を入れなければいけないという、かなり厳しい状況だ。




 …………冷静に考えて、無理では?




 いや、諦めたらそこで試合終了だ! 諦めてはいけない! なんとか、自己暗示で自分を奮い立たせつつ、実は考え込んでいる間もバシバシ飛んできていたツララを避けたり、短剣で逸らしたりしながら、打開策を考える。一応、避けながら時々投げナイフなどを【投擲】しているのだが、やっぱり氷柱ガードで防がれている。


 フリージア様、試練の開始から一歩も動いていないのではないだろうか? いや『ネズミ花火』を使った時に数歩後退してたな。唯一、有効打的なものが『ネズミ花火』って……。しかも、あれは初見で驚いただけだろうし、同じ方法で2回目は通じないだろうな。うーん、どうにかあの氷柱を掻い潜れないものだろうか。



 ……あの氷柱、確か地面から生えてきていたな。なら、飛び上がってフリージア様の背中の上とかから切りかかれば、氷柱に邪魔されずに攻撃できるのでは? とはいえ、この場所って岩とか木とかは無いので、飛び上がるための足場も無いんだよなあ。どうするか。


 一応打開策みたいなものは思い浮んだが、実行するための方法がわからない。悩んでいるとフリージア様が「まだまだゆくぞ?【氷凛の輪舞】(イエロ・デ・ロンド)」と言うやいなや、今度は氷で出来たミニドラゴンみたいなものまで飛ばしてきた! 直線上に飛んでくるツララと違って、氷ミニドラゴンは不規則に軌道を変えてぶつかってくる! しかも、当たった場所が凍って、動きを阻害してくるオマケ付きだ!! 厄介だな!


 右からくるツララをステップで避けて、曲線を描いて突っ込んできた氷ミニドラゴンをのけぞって避けて、ついでに左から2連続で飛んできたツララを転がりながら避ける。そろそろ効果時間が切れそうな『ヒートパウダー』を隙を見て使用。急いで立ち上がり、体勢を立て直すが真正面からツララが迫ってきていたので、反射的に短剣で弾く。くそぅ! 弾幕ゲーかリズムゲーをやっているみたいだ!! 全く反撃に移れない!


 氷ミニドラゴンとツララの猛襲に、このままだと確実にやられると感じた。しかし、せっかくフリージア様が対戦してくれたのだ、このまま黙ってやられるのはちょっと悪い気がする。当たって砕けろ精神で先程思いついた打開策を試してから、潔く散ってみよう。足場はどうするって? ふふっ、あの氷柱ガードを利用してみせよう! というか、それ以外で足場にできそうなものが思いつかない!




 小声で「チャージ」と唱え、ステップを踏みながら、飛んでくる氷ミニドラゴンを避けて、前進する。1、2、3! いまだ!!


「そこだっ!!」


 前進しながらフリージア様の右後ろ足あたりに投げナイフを【投擲】。予想通り氷柱が地面から生えてくる。そこを見計らって、伸びてきた氷柱の上に足をかけ、もう片方の足で地面を思い切り蹴ると、ぐらつきながらもなんとか氷柱の上に身体を持ってこれた! そのまま伸び続ける氷柱にタイミングを合わせて、伸び切る直前に氷柱の上でジャンプ!!


 ジャンプする直前、投げナイフを投げた方の手にアイテムを再補充。あらかじめ登録しておいた投擲系アイテムを直ぐに補充できる【投擲】スキルの【速補填】という便利アーツだ。投げるのは源三郎さんの仲間が作ったという、隠し玉。雷魔法が込められているという花火玉の『昇銀竜付滅芯花万雷三式』である。それを、ジャンプした自分を見て驚愕しているフリージア様の顔目掛けて【強投擲】しておく。貰った時も思ったけど、なんだこの無駄に長いアイテム名。白い尾を引いて飛んでいく『昇銀竜付滅芯花万雷三式』だが、フリージア様がクワッと口を開くと顔の手前で雪が集まり大きな雪の結晶の様な盾が形成されて、それに当たってしまいフリージア様自身には当たらなかった。だがしかし、この花火玉の真骨頂はこれからだ! 盾に当たった『昇銀竜付滅芯花万雷三式』がバチバチバチィイ!!と派手な音を立て、弾ける。そして広範囲に複数の雷電の火花を咲かせた。まるで大きな線香花火の様だ。


 真っ白な世界に花開いた金色の火花に驚いたフリージア様を横目に、自分は頭から落下しながら【投擲】で使っていなかった方の手にずっと構えてチャージしていた火属性短剣を突き出す! 狙うはフリージア様の背の上! 思った通り、地面の上で無ければ氷柱オートガードは発生しないらしい。フリージア様からのツララなどによる妨害も、あの『昇銀竜付滅芯花万雷三式』が目眩しになっていて、全く無い。つまり、今現在のフリージア様の背中は、全くの無防備! 最初で最後の絶好のチャンスだ! くらえ! 【短剣術】スキルでやっと習得した、チャージ系アーツ! 【星の一撃(ステラ・ストライク)】!!!




 ギャリギャリギャリィイィイ!!!



 無防備な背中に短剣が当たる瞬間、雪が集まり雪結晶の盾が形成された。フリージア様がギリギリで盾を出現させたようだ。しかし、しかし! まばゆい目眩しによって、その行動はあと一歩遅かったようだ! 【星の一撃(ステラ・ストライク)】によって強化された短剣の一突きは、盾が形成完了する前にその切先をすでに貫通させており、結晶を纏わり付かせながら威力を減衰させられて尚、刃をその美しい青銀の表皮に届かせていた。手応えあり! そう喜んだが、次の瞬間聞こえてきたのは、短剣が刺さっている雪結晶の盾がひび割れる音。あ、これは不味いのでは? いまの自分は下向きの体制で、雪結晶の盾に突き刺さっている短剣で体が一時的に支えられている状態だ。それが割れたら?



 パキッパキキッ!



 自分の不安をよそに無慈悲にも雪結晶は砕け散り、支えを失った自分はそのままパタリとフリージア様の背中に倒れ込んでしまった。ヤバいと思って立ちあがろうとしたが、見上げた顔の前には、こちらを向いているフリージア様の凛々しいお顔。あ、これは詰んだな……。



「ホホホッ! よくぞ我にキズをつけることが出来たのう! よくやった!!」


「へ?」




* * *




 あの後、ひとしきり満足そうに笑ったフリージア様から合格判定をもらい、無事に里のポータル前まで帰ってくることが出来た。どうやら、あの一撃で微かだがフリージア様にキズを付けることが出来ており、試練はそれでOKだったらしい。良かった、あんな無防備な状態で攻撃されたら、ひとたまりも無かった。



「プラナよ、よくぞ三つ目の試練を乗り越えた! 良い戦いぶりだったぞ。さて、先ずは試練の報酬じゃ。コレを受け取るが良い。」


 そう言ってフリージア様が自身の肩に爪を当てて、何かをぺリンッと剥がして、ひょいっとこちらに渡してきた。


「うわっととと。えっと、コレはフリージア様の鱗??!」


 渡されたのは自分の顔ぐらいのサイズがある一枚の青銀の鱗だった。鑑定すると『聖氷竜の鱗』と表示される。ひぇえ!!



「それで武器なり防具なり作ると良いぞ。我の力が籠っておるから、強い氷の力を発揮できるじゃろう。因みに我のオススメは、お主が前に里内で拾うた剣の修復じゃな。元々アレは我の鱗から作られたが故に、修復するには再度我の鱗を使うのが一番じゃろうて」


「剣? 剣って、ああ! あの真っ二つになっていた剣ですね!? ご助言ありがとうございます」


 フリージア様の鱗なんて畏れ多いとびっくりしていたのに、更に驚きの情報だ。因みにフリージア様の言っている剣とは、自分が里の中をしばしば探索している中で見つけた、やたらジャラジャラと装飾が付いていて、なんか凄そうな感じだったのに残念ながら入っていた箱ごと真っ二つに折れてしまっていた剣の事である。アイテム名は『壊れたフロストリザードマンの儀氷剣』。フリージア様曰く、里の祭りや儀式の際に使われていた物らしい。それを聞いて大事な物だと思いフリージア様に渡そうとしたが、使える者が持っていた方が良いと言われ、そのまま貰ってしまったのだ。


 修復には、かなりの腕と特殊な素材が必要だと言われていたが、フリージア様の鱗が素材の一つだったのか。……源三郎さんに頼んだら修復してくれるだろうか? 真っ二つになってるし、半分ずつで研いでもらって、双短剣とかにしちゃダメかな? そのまま剣の形で修復した方が良いんだろうか? うーむ、悩む。うん! どう修復するかも合わせて源三郎さんに相談しよう!!


 一人で驚いたり喜んだり悩んだりと、百面相していると、フリージア様が世間話のついでみたいな気やすさで話しかけてきた。



「して、プラナよ。これで転生のための条件は揃ったが、直ぐに転生するかの?」


「は、はい! お願いします!!」


 そうだった! 今日の目的は転生だった! 鱗や儀氷剣の事は一旦置いておいて、思いもかけず一発で最後の試練をクリアできたんだ。もう、このまま転生までやってしまおう! 遂に楽しみにしていた転生の儀だ。どんな風に転生できるんだろうか? フロストリザードマンになったらどんな特性がつくのだろうか? ワクワクするな!


「うむうむ、良い応えじゃ。我も久方ぶりに眷属を迎え入れれること、ほんに嬉しいことよ。それにの、転生したらちょっとしたサプライズもあるからの、楽しみにしておれ」


「サプライズ、ですか??」


「そうじゃ。何、変な事ではないから心配するでない。それではゆくぞ!」


 最後の試練の内容を秘密にしていた時と同じ、悪どいお顔で笑うフリージア様。サプライズとはなんだろうか? ワクワクしていた気持ちが少し不安になってきた。だ、大丈夫だよな? そう思いながらポータル前にて、いざ転生の儀を受けることに……。



・チャージ系アーツについて


 【剣術】とかの他の武器スキルだったら、大体5〜6個目くらいでチャージ系アーツを習得できる。プラナの【双剣術】も【ダブルチャージ】を5個目のアーツで習得済み。しかしながら【短剣術】スキルでは、急所攻撃時に威力が上がる【ピンポイントアタック】やら、状態異常時に威力が上がる【タナトスアタック】やらの変わり種なアーツを覚える代わりに、チャージ系アーツなどの通常武器スキルで早めに習得できるアーツが出てこなかった。


 「スノウワイバーン(手負)」戦後にやっとこさ習得したチャージ系アーツが【星の一撃(ステラ・ストライク)】である。ミントの進化を喜んでいた裏で、実はこっそり習得できていた。


 ちなみにチャージ系スキルは、まず「チャージ【アーツ名】」と口に出すとチャージが始まり、一定時間チャージをしてから高威力の攻撃が出来るアーツである。チャージ時間やチャージ中の条件はアーツごとに異なる。チャージ中の条件は、チャージ中に一歩も動けなくなるものや、チャージしている手で別の攻撃をしたり攻撃を受けたりしなければ、別に動き回ってもOKなものなど様々。更には口に出す文言も、ショートカット登録すれば「チャージ」だけでチャージ開始可能。戦闘スタイルに合わせて、どんなスキルを育てて、どんなアーツを使うかはプレイヤー次第である。



・『聖氷竜の鱗』

 創生神ピーリアより、直接加護を授けられたグランアイスドラゴン・フリージアの鱗。薄氷が被ったような青銀の美しく儚いような外見だが、見た目にそぐわず強固で秘めた力は計り知れない。素材として使用すると強い氷の力を付与できるだろう。



・『壊れたフロストリザードマンの儀氷剣』

 はるか昔、フロストリザードマンの里が出来た時に守護竜であるグランアイスドラゴン・フリージアが授けた鱗より作られた儀式用のつるぎ。代々里の長が受け継ぎ、祭りや儀式にて使われていた由緒正しい剣。しかしながら、長の家が崩れ落ちてしまった際に、落ちてきた瓦礫によって真っ二つに折れてしまった。里が滅び、刀身も折れ、自身が有る意味も遠き忘却の彼方に消えた。今はただ、静かにその身が朽ちるのを待つばかり。……触るとちょっとヒンヤリする。



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― 新着の感想 ―
試練突破に喜んでるフリージア様かわよ
クリア!おめでとう! フロストリザードマンはどんな見た目になるのか、 ひょっとして火山帯ではバテバテになるのか、 いろいろ気になる事がてんこ盛りですね。
更新お疲れ様です。 プラナ君、フロストリザードマンおめでとう ございます! コレは源三郎さんが困惑する事間違いなし そして他にもグランドドラゴンがいる可能性が 出てくるかもしれませんね
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