58話 湧き立つ人達
ログイン後、通常装備でフィフローにやってきた。掲示板で少し情報は読んでいたけど、実際に自分の目で見ると圧巻だなー! サドンとは異なり、住宅街メインというより職人街メインのようになっており、あちこちに工房のような建物がある。住人はヒューマンとドワーフが半々くらい。他の町に比べて確かにドワーフ比率が多い。町の中心部にある冒険者ギルドもなんだかゴツい見た目だった。
ちなみにフィフローでの目的の一つだった【建築】スキルのスキル講習チケットを貰える大工屋さんに行ってみたんだが、お手伝いクエストは受けることが出来なかった。何故かって? このお手伝いクエストを受けるに当たって、最低限ギルドランクはEランク以上じゃないと駄目だって言われたんだよ。ほら、自分は春イベントから後はずっと町や街道を離れて山への旅路に行ってたからさ。ギルドランクは、春イベ前に最初のGから一つ上のFで上げたっきり、止まっているんだよな。アハハハ( ´∀`)!
……うん、町に転移できるようになったし、試練クエストが終わったら、ちゃんとギルドの普通のクエストもやって行こう。
そんな事を思いつつ、ちょっと気落ちしながらもフィフローの町巡りをしていると、メンマさんとサテンさんに出会った。メンマさんから「あのローブが〜、逆に目立っちゃって〜ごめんね〜」と謝られたが、まあどんな格好でもミントを出したらどうせ目立ったので大丈夫だと返した。すると、サテンさんがミントを見たがったので、ギルドでレンタル生産室を借りて、二人にもコユキとミントをお披露目する事にした。
「はわわわわわわ!! 小さくて白くてふわふわですぅ! こっちは、おっきくてふわふわでにゃんにゃんですぅ!! はわ〜〜!」
「キュ〜ン……」
「ニャ〜ン……」
……2匹を出したら、サテンさんが壊れてしまった。2匹を見て一瞬固まったかと思うと、ガバリと飛びついて「はわ〜」と叫びながら2匹をモフモフし始めてしまったのだ。普段の大人しそうな雰囲気が消し飛び、恍惚の表情でひたすらモフモフしている。ちなみに2匹は驚いた後、逃げようとしたが、サテンさんのホールドが意外に強かったらしく逃げられなかった。今はもう無の境地に入っているようだ。
「あ〜。ごめんね〜プラナさん。サテンちゃん、可愛いもの好きなんだけど〜、今回はコユキちゃんとミントちゃんが可愛過ぎて〜、可愛いメーターが振り切れちゃったみたい〜」
「えっと、びっくりしましたが大丈夫ですよ。でもそろそろ解放して貰っても?」
「うん〜。ほらほら〜サテンちゃん〜、そろそろ正気に戻って〜。正気チョーっぷ!!」
「へぶっ?!」
メンマさんがサテンさんにバシッとチョップすると、漸くサテンさんが正気になった。
「ご、ごめんなさいです、プラナさん、コユキちゃん、ミントちゃん!! あまりの可愛さに我を失っちゃったですます!」
「も〜。サテンちゃんは〜可愛いもの見るといつもこうなんだから〜。ほら〜、せっかく見せてくれたのに〜、コユキちゃんと〜ミントちゃんが〜、怯えてプラナさんの背に隠れちゃったじゃない〜」
「あはは、この子達はまだあまり他人に慣れてないので、ほどほどにしていただければ……」
「ジジジジジッ」
「フシャー!」
うわっ、久しぶりに聞くコユキの威嚇音がする。これは、後で2匹を労らないとな。それを見たサテンさんはめっちゃ落ち込んでいるが、まあしょうがないだろう。とりあえず後ろで威嚇し続ける2匹をお手製ジャーキーで宥めつつ、椅子に座って3人で雑談タイムに入る。やはり、今日発表された秋イベントや大型アップデートについては、二人も気になっているみたいだ。
「秋イベントは〜、芸術コンテストの方だけ参加かな〜。私、あんまり戦闘は強く無いしね〜」
「わ、私も芸術コンテストで、参加予定ですます!」
「自分は、どっちも出てみようかと思ってます。闘技大会は自分の今の実力を確かめたいですし、実はもう少しで種族転生出来そうですから、転生後の能力も確かめたくて。本選までは行かないかもしれないですが、やってみようかなと」
「お〜! 転生するの〜! もしかして〜、あの廃里の〜? 楽しみだね〜」
「えっ?! プラナさんも転生チャレンジ中なんですか? わ、私も今、リリパットへの転生チャレンジ中なんですます! 闘技大会は、もしかしてコユキちゃんとミントちゃんと一緒にパーティで出るんでしょうか?!」
「い、いや、今回はソロ部門の方で出たいと思ってます。」
サテンさんが目を輝かせて、ずずいと迫りながら聞いてきたので、びっくりした。ソロ部門と言ったら目に見えて落ち込んでしまったよ。そんなにコユキとミントの活躍が見たかったのかな? でも今回は自分の実力を試したいから。すみません。
「闘技大会に出るんなら〜、早めに装備の打診をした方が良いよ〜。秋イベントの情報でてから〜戦闘勢のプレイヤーが〜、一斉に生産勢へ〜装備更新の打診してるから〜」
「全然有名プレイヤーなんかじゃない私なんかにも、既に何人かから連絡きてますですよ!」
「えっ?! イベントはまだ先なのにもうそんな風になってるんですか?? う〜ん、確かに武器や装備の更新はしたいですけど。転生してから、転生後のステータスに合わせて作りたかったんですよね。試練クエストのドロップ品も使いたいですし」
秋イベントの情報が出たのって今日なのに、もう他のプレイヤーは動き出してるのか。凄いなガチ勢。
「あらあら〜、確かに〜転生してから出るんなら〜転生後ステータスに合わせたいね〜。前にくれたあの属性水晶の欠片とか使いたい感じ〜?」
「属性水晶です? あ、プラナさんって確か雪山に居るんですよね? まさか、雪属性ですます?!」
「惜しい! 実は今いる所で『氷水晶の欠片』が取れるんですよ。あと、実は今いる廃里の名前が「フロストリザードマンの隠れ里」でして。名前からして転生したら【氷魔法】とか使えるようになるんじゃ無いかと」
「氷属性系統の種族の隠れ里だと〜思っていたけど〜、リザードマンの派生種族だったんだね〜。プラナさんがリザードマンだから〜ちょうど良かったね〜。砂漠のリザードマンさんといい〜プラナさんといい〜、自分に不利な環境に〜挑戦したリザードマンさん達へのご褒美なのかな〜?」
「フロストリザードマンさん! 氷属性のリザードマンなんて、クールでカッコ良さそうです! 『氷水晶の欠片』ですか、扱ったことのない素材ですから、検証とかしてから本番の装備とか作りたいかもですます」
検証か。そうか氷属性の素材なんて、今出回ってないもんな。装備をお願いするにしても、事前にいくつか素材を渡して検証して貰った方がいいのか。
「あの、もし手が空いてたらで良いんですが、お二人に闘技大会用の防具とアクセサリーを頼んで良いですか? とりあえず検証用にこちらをお渡しします」
そう言ってアイテムボックスから『氷水晶の欠片』や『スノウホーンラビの毛皮』や『アイスヘッジホッグの針』など雪山で取れたアイテムを出した。
「ああ〜、前に貰ったのに加えて〜更に見たこと無いアイテムが〜」
「ひぇっ、前の大量の毛皮に続いて、また新アイテムいっぱいですぅ! あわわわわ」
「ふふふ〜、サテンちゃんも〜この扱いに困るレアアイテム祭りに〜道連れだよ〜。あ〜ちなみにプラナさん〜、このアイテムを〜私とサテンちゃんの知り合いの〜【錬金】スキル持ちプレイヤーにも〜見せて良いかな〜? 属性水晶系とかは〜【錬金】スキルでの加工が必要だから〜。そのプレイヤーは〜性格は変だけど〜腕は確かで〜口も硬いから〜」
「はい、余り口外されないなら、大丈夫です。性格が変?なプレイヤーさんってのは、ちょっと気になりますが」
「ありがとね〜。うん、変人だけど〜その分、腕は確かというか〜凝り性というか〜」
「メンマちゃん。もしかして、それってアドハム君の事です? 確かに腕は良いですけど、こんな珍しい素材渡したら、はっちゃけて変な道具作りそうで怖いですます。この前も踊る金属バットとか作ってましたし」
「踊る金属バット???」
え、なんだそれ。どうやったらそんなものが作れるんだ? というか、それは武器として使えるんだろうか? ちょっと心配だけど、口は硬いとメンマさんが言ってくれているし、大丈夫だろう。だ、大丈夫だよな??
その後も色々話して、二人とも手はまだ空いてるので素材検証と本番の装備作成を承ってくれた。氷属性素材にも興味を持ってくれたしね。更に今回コユキとミントを怯えさせてしまったお詫びにと、氷属性では無いけど、別の素材で2匹の装備をささっと作って貰った。何故かサテンさんだけでなく、2匹を怯えさせていないメンマさんからもアクセサリーを貰ってしまった。メンマさん曰く、前に貰ったアイテムの試作品があるからという事と貰った検証用の氷属性素材の対価との事。いや、こちらから検証を依頼しているから気にしなくて良いんだけどな。
そんな感じで作って貰った2匹の装備がこちらだ!
コユキには、前にメンマさんに渡した『ハル石の原石』を磨いたものをトップにつけた青銅のネックレス。これは既にメンマさんが作っていた試作品のチェーン部分をささっとコユキ用に調整してくれたものだ。精神力と防御力が上がるらしい。前の装備ではコユキが元々高い俊敏力などを更に高めていたが、進化して【韋駄天】スキルが手に入ったからね。今回は低い方のステータスを上げる装備にして貰った。ネックレスを付けてドヤ顔するコユキ。うん、可愛いな。
ミントには不思議な質感の緑色の布を緑色の金属で出来た肉球型のピンバッチで止めたミニマントだ。この布は、なんとサテンさんが目の前で緑色の糸を織り機を使って織り上げてくれた! 織り機で布を作るなんて初めて見たよ。しかも、スキルを使っているのか、自動で糸巻きがビュンビュン動いてあっという間に布が出来上がってしまった。ちなみに使った緑色の糸は風属性の鳥モンスの羽を事前に【錬金】スキルで加工した糸らしい。糸を作ったのは先ほど話題に出たアドハムさんとの事。
さらに同じくメンマさんが【細工】スキルを使って、この場で作ってくれた肉球型ピンバッチ。こちらに使われている緑色の金属も『風水晶の欠片』を青銅インゴットに【錬金】した金属との事。風属性の布とピンバッチ、この二つが使われている事により、風属性の攻撃にかなりボーナスが入るらしい。【風魔法】を使うミントには、ピッタリだな。ピンも肉球型だし。うん、こっちも可愛い。
「ちなみに、武器は源三郎さんに頼もうと思っていたんですが、源三郎さんにも自分が今いる場所を明かした上で事情を話して、早めに相談した方が良いですかね?」
「源さんは〜忍者仲間の人達から依頼が来てると思うから〜相談するなら〜早めが良いと思うよ〜。確か今火山フィールドに〜いるみたいだから〜、涼しい防具が作れそうな〜氷属性素材をチラつかせたら〜喜んで依頼を受けてくれるんじゃないかな〜。前に〜火山フィールドは〜暑い暑いって〜嘆いてたからね〜」
「なるほど」
よし! なら善は急げだな! 今はログインしていないみたいだから、メールぽちぽちーっとな。『氷水晶の欠片』に加えて『ハルン鉱石』とかもありますよーっと。自分の事はあまり周りに言わないで貰えると助かりますーっとな。これで大丈夫だろう!
* * *
「は? はぁ?! はぁっ??!」
「どうしたんでござる? 源三郎殿?」
「い、いやスマン。ちょっと予想外なメールが来てたもんでな……」
「源三郎殿がそこまで慌てるとは、相当な内容なのでごさるな。もしかして、別の者達からのクラン勧誘とかでござるか? 源三郎殿には是非とも忍者スレの同志で作る忍者クランに入って貰いたいのでごさるが……」
「そっちは大丈夫じゃ。忍者クランには是非とも参加させてくれい! このメールは別件じゃから気にせんでくれ。(プラナよ、前からちょっと特殊な場所にいるらしいとは思っておったが、これは予想外すぎるじゃろう! あれか、前に火属性短剣を欲しがっていたのは、火山フィールドの新しいもの見たさで欲しがっておったんじゃなかったのか?! 氷属性モンスターを相手にするから欲しがっておったのか。うーむ、耐熱耐暑装備ができそうな素材は嬉しいが、周りに見せたら大騒ぎになりそうじゃのう。氷属性素材はフリボにも出しておらんようじゃし。どうするか)」
「お、ハンゾウ殿が来たでござるよ! さっそく忍者クランについて相談するでござる! 我らのクランの頭領は、エリアボス戦でもパーティリーダーだった、ハンゾウ殿が相応しいでござるよ!」
「ああ、そうじゃな影丸。ワシもハンゾウ殿なら頭領に相応しいと思うぞ。まあ、ハンゾウ殿が了承してくれればの話じゃがな。(ちょうど良い機会じゃ、皆、口は硬い方じゃし。プラナの名前は伏せてクランの事と一緒に氷属性素材についても相談してみるかのう。)」
・サテンさんの機織り
今回サテンさんが布を織る時には、自力取得した【機織り】スキルを使って、高速機織りをしていました。【裁縫】スキル持ちは多いけど【機織り】スキルを持っている人は実は少ないです。プレイヤー内では、布は基本店売りか羊毛などを【錬金】で布にしていました。糸系アイテムは、基本的に縫い糸扱い。
サテンさん自身は気づいていなかったですが、メンマさんやアドハムさんは、サテンさんの【機織り】スキルが珍しいのに気づいて、サテンさんに他のプレイヤーに群がられたくなかったら、余り外では言わないようにと忠告してます。
なんでサテンさんが機織りできるのかって? サテンさんはリアルでも手芸好きで、おもちゃの機織り機なども使った事があるので、ゲーム内でも割と普通に糸がある → よし、布を織ってみよう! と考えて使ってました。普通は、そんな思考にはならないよサテンさん……。
・エリアボス戦での忍者仲間
・ハンゾウ
水手裏剣使ってたプレイヤーで音無丸の主人。プレイヤースキルが高く、明るい性格。エリアボス戦では、パーティリーダーだった。
・影丸
【投擲】で小型爆弾投げてたプレイヤー。実はダークエルフの隠れ里を見つけた時にジャングル探索隊にいた忍者はコイツ。通常時もござる口調。プレイヤースキルは、パーティ内で2番目に高い。
・小太郎
【雷魔法】を使っていたプレイヤー。魔法系スキルを複数所持しており、忍術を魔法で再現しようと日々四苦八苦している。その為、見た目は忍者だがステータス的には魔法使い系プレイヤー。
・千代女
【捕縛術】を使っていた女性プレイヤー。高笑いが得意。ちなみに忍者服は暗い紅色に染めてある。【鞭術】も持っているが、決してSではない。Sじゃないからね!!
・源三郎
言わずと知れたドワーフ鍛治師忍者。武器は何故か鎖鎌を愛用。鍛治師プレイヤーとして腕が良いので、忍者スレ民以外も依頼にくるのだが、依頼品の受け取り時にそっと忍者グッズもおすすめされるので、強い意志で忍者を断れる人だけが依頼にくるとか……。この度ようやく主人公から掲示板の山の人である情報をバラされた。




