35話 夢中で霧中な山登り
あれから、コカトリスを避けて進めるルートが無いか探した。
山は別に柵とかで囲われている訳じゃ無いので、コカトリスから見えなさそうな場所まで離れてから、山に分け入ってみる。
山道っぽい所から外れた場所なので、自分で藪漕ぎしながら、まばらな疎林の中を登っていく。あのコカトリスがいた所から算出すると、ここを少し登れば山道に横から辿り着くはずっ!
途中で拾った良い感じの長さの木の枝を杖にしながら、ガシガシと山の斜面を登っていく。でも、落ち葉が積み重なった地面だからか、偶にずるっと滑って登りにくい!
足場がそんななのに、時々木の上からリスモンスが木の実を投げて来たり、荒れ地にも居たカラフル毛皮のお供ヤギが単独で現れては突進して来たり(こっちには、荒れ地には居なかった青色毛皮のヤギも居たぞ!)、キツツキ?みたいな鳥モンスが【風魔法】を使ってきたりして、登るのを妨害して来たもんだから、何度も斜面を転がり落ちる羽目になってしまった。
これじゃあ、いつまで経っても上に登れない! どうしたもんかと思って、少し考えていると、ゲーム内メールが届いた。
これは、メンマさんだ! ああ、イベント中に渡した『ジャル石の原石』を使ったアクセサリーが出来たのか。ちょうどいいな、アクセサリーをトレードするついでに、メンマさんに相談してみよう。
ちなみに、フレンド同士だったら離れていても、アイテムトレードは可能だ。フレンド登録の利点だな!
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メールを何度かやり取りして、メンマさんに相談した結果、ロープを木と身体に巻きつけて身体を固定しつつ、斜面を登るのはどうかという話になった。
この方法だと体勢を崩されて滑っても、途中で止まれるため、確実に登る事が出来る良い案に思える。ただ、ロープを切り替えながら登るため、沢山のロープが必要になる事が難点だ。
ロープについては、メンマさんが町で代理購入してくれる事になった。ありがとうメンマさん!
そして、本題の『ジャル石の原石』を使ったアクセサリーについては、こんな物になった。
『ジャル石のブレスレット』
研磨され輝きを放つジャル石が付いた、青銅の鎖のブレスレット。防御力+15。木属性攻撃をする際にボーナス。
木属性攻撃? 知らない子ですねえ……。
【木魔法】とかだろうか? そんな魔法があるかは知らないが。
メンマさんからは、微妙な仕上がりになってごめんなさいとメールが来たが、これはメンマさんの所為じゃなくて、自分が渡した『ジャル石の原石』の所為だと思ったので、メンマさんには気にしないで欲しい事を伝えてある。
メンマさん的にはどうにか木耐性などに出来ないか、色々試したみたいなんだが、どうにもならなかったとの事。ほんの思いつきで頼んだのに、何だか迷惑をかけてしまったようだ。
後でお礼の品として、荒れ地フィールドの採掘スポットで取れた『風水晶の欠片』を渡しておこう。風が吹き渡る渓谷とかならわかるけど、なんでここで風水晶が取れたんだろうな?
それにしても、このブレスレットはどうしようか。このまま自分が持っていても死蔵させる未来しか見えない。
うーん……。あっ! ソルメイさんの所のハナ子にあげたらどうだろうか? あの回復スキルが何かは分からないが、植物系モンスターだし。ハナ子ならこのブレスレットも役立ちそうだ!
ちょうどよく、メンマさんからロープのトレード申請が来たし、トレードついでにブレスレットをソルメイさんに渡しても良いか聞いてみよう。あと、お礼の品も渡さないとな。
……メンマさんからは、ブレスレットを渡すことについては快くOKを貰えた。もし、サイズが合わなかったら、メンマさんの所で調整相談も乗ってくれるとの事。
ただし、出所については秘密にするようソルメイさんに約束してもらう事が条件だそうだ。樹海に何人かプレイヤーが入ってはいるものの、まだまだ樹海素材はレアだからだ。確かにバレたら色々面倒くさそうだ。ソルメイさんに話を持ちかける時はその辺をしっかり伝えないとな。
よし、メンマさんからロープも貰ったし、山登り再チャレンジだ!
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ソルメイさんにブレスレットの件をメールした後、山に戻って斜面をまた登り始める。
今度は身体に巻いたロープに、もう一本のロープを結んで、そのロープを斜面の木に巻きつけて固定しながら進む。次の木に辿り着いたら、新しくロープを結んで、下の木のロープは身体から外していく感じだ。
途中でまたもやモンスターの攻撃を受けて、滑り落ちてしまったが、ロープのお陰で途中で止まることが出来た。体勢を立て直し、モンスターに反撃して撃退。また、斜面を登り始める。
暫くロープを使いながら斜面を登ると、ようやく平たい場所に出る事ができた。どうやら、やっと山道に出たようだ。
これで足場を気にせず登れるなと思い、周りを注意しつつ、水筒の水を飲んで一息入れる。
「まだまだ道は長そうだなぁ。ちゃんと途中でセーフティエリアがありますように」
緩い坂道になっている山道の先を見ながらそう思う。リアルみたいに、まったりバードウオッチングしながらハイキング出来たら良いんだけどな。
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山道でも、ヤギやらシカやらリスやら鳥やらがひっきりなしに襲って来た。みんな現実にはあり得ないようなカラフルな毛色に魔法やらアーツやら使ってくる。
まあ、斜面で攻撃されるよりは対処しやすいので、時には撃退し、時には逃げたりしてどんどん進んでいく。
心配していたセーフティエリアも、所々に山道に沿って開けている場所があり、そこがセーフティになっていたので安心だ。
サドンのカフェで話を聞いてから、待ちに待っていた山登りだ。夢中になってどんどん登っていく。雪はまだかな? まだかな?
……今は何合目だろうか? そろそろ現実時間的にもログアウトしなければいけない時間が迫って来てしまった。せっかくの山登りをまだ止めたくないなと思いつつ足を進めると、不意に霧が湧いて来て、辺りの視界が悪くなってしまった。
これは、足を踏み外さないようにしないとと思いつつ、そろそろと進む。しかし、登れば登るほど霧は濃くなっていくばかりだった。一寸先も見えない。
しかもなんだか肌寒い気がする。まさかと思って、ステータスを確認する。一応【鑑定】スキルのスキルレベルは、上がっており、【自己ステータス詳細鑑定】アーツも既に取得済みだ!
ステータスの空腹や水分ゲージがある所を見ると、そこには新しく体温ゲージが表示されていた。しかも、半分切るまでもうあと少しの所まできている!!
え? 雪フィールドに着く前に、もうバッドステータス付く感じか? どうしよう。ここでもうバッドステータス付くなら、耐性取得をこの場所で取るのも有りなんだが、個人的にはここまで来たし、雪がある場所まで登りたい。
考え込んでいると、いきなり腕をむにゅっと掴まれた! 一体なんだと思って腕を見ると、真っ白な霧が塊となって腕を掴んでいるようだった。これは何だ?!
よく見ると名前が表示されている。「ミスト」? 霧のモンスター??
びっくりしながらも、振り解こうと腕をブンブン振るが、全く取れない。しかも、なんだか腕が冷たくなって来た。これはヤバいのでは?! 急いで【ウォーターボール】を使って剥がそうと試みる。
どうやら魔法は通じるみたいだ。「ミスト」は、腕から離れて霧の中に逃げていった。
ホッとしたのも束の間。辺りの霧の中をよく見ると、所々により濃くなっている箇所があった。まさかと思い【気配察知】を使ってみる。
Oh……。周りが敵マークだらけだ。
数分後、見事に死に戻りしたため、今日はもうログアウトすることにした。調子に乗って進みすぎるとこうなるんだな……。明日は、ちゃんと【気配察知】を使いながら慎重に行こう。
・お礼の品を貰ったメンマさん
「ああああ〜?? 『風水晶の欠片』〜?! イベント以外での風水晶なんて〜、まだ何処にも見つかってないんだよプラナさん〜〜! 『ジャル石の原石』だけでも〜情報量がヤバいのに〜、お礼でこれはちょっと〜、どうすればいいの〜??」




