14話 花の大迷宮での再会
イベントエリアに移動すると、そこは町のポータル広場と同じような広場になっていた。ただし、ポータルの水晶玉の色は緑色になっていた。
目の前には、花まみれの巨大な生垣で出来た大迷宮の入り口がそびえ立っており、次々にプレイヤーが転送されて来ていた。
「すっごいなー。生垣の迷宮とか、テレビでやってる外国の庭園とかでしか見た事ないや」
そう大迷宮を見ながら感動していると、後ろから突然声をかけられた。
「あ、あの! もしかしてプラナさんですか?」
「えっ? 貴方は、昨日エリアボス戦で一緒だった、テイマーの……?」
声をかけて来たのは、少し身長低めで童顔っぽい男性アバターのプレイヤー。確かウサ丸の飼い主の、名前は……
「はい! 昨日ご一緒させていただきましたソルメイです! また、お会いできるなんて、良かったぁ」
「ソルメイさん。昨日はありがとうございました。あれ? 横にいるのは、シカ??」
そうそう、ソルメイさんだ。ウサ丸の印象が強くて、名前が直ぐに出てこなかった。ソルメイさんの横を見ると、昨日は居なかったフォレストディアーが佇んでいた。(ウサ丸は、フォレストディアーの背中にちょこんと腰かけていた)
「フォレストディアーのシカ太郎です! 昨日のエリアボス戦で【従魔法】のレベルが上がって、テイム枠が増えたので、早速仲間にしました!」
シ、シカ太郎……? ウサ丸といい、シカ太郎といい、あんちょ、いや、素直なネーミングセンスだな!!
「あの、それでプラナさんに会えたら、聞きたかった事が有りまして、そのストラップは何処で買えますか?! あ、もし秘密なら大丈夫です!!」
「え、このストラップです? いや、秘密とかじゃ無いので大丈夫ですよ。これはセカドのポータル広場の露店で買いました。まだセカドに居るかは分かりませんが、ファー付きのエプロンを着ていたプレイヤーのお店でしたよ。」
「ありがとうございます! 見かけたら寄ってみます!」
情報が聞けて嬉しそうなソルメイさん。この『ラビラビストラップ』は、見た目が可愛い系だけど、平気なんだろうか? 自分は結構、躊躇ったけどなあ。
そんな雑談をしていると、またもや声をかけられた。
「あれ〜? 見覚えのあるお顔〜?? お兄さん達、お久しぶり〜」
この独特な話し方は……メンマさん?! 今日はやけに顔見知りに会うな、って、お兄さん達??
「メンマさん、お久しぶりです。ソルメイさんともお知り合いで?」
「この前露店で〜、そこのウサちゃん用のアクセサリーについて、相談受けたんだ〜。実は私【細工】スキル持ってるんだよね〜」
「あの時は、ご相談に乗っていただき、ありがとうございました!」
「いいよ、いいよ〜。こっちも楽しかったし〜。あ、そうだコレ試作品なんだ〜。相談内容聞いて、作ってみたんだけど、買わない〜? 試作だから、お安くするよ〜」
へぇ、メンマさんは【細工】スキル持ちだったのか。メンマさんが見せたのは、艶光りしている茶色い紐を太めの三つ編みに編み込んだ小さな首輪?だった。何の素材から作られているのか、分からなかったので聞いてみると、何と銅の針金の束を編んで作っているそうだ。
セカド森から取れる木材やモンスター素材由来のアクセサリーはよく見るけど、全部銅製で作ったアクセサリーは珍しいな。
「うわぁ〜! ありがとうございます! 防御力凄い上がってる! 凄いです!! 勿論買わせて下さい!」
ソルメイさんは、かなり喜んで購入していた。何でも、従魔用アクセサリーはそもそもの販売個数が少ない上に、草原や森フィールドの素材は、俊敏力や精神力重視で、あまり防御力が上がるものが少ないそう。
防御力アップ効果が見込めるフォレストビートルの素材も、ラビ用まで小さくすると、防御力はかなり下がってしまい、素材としての効果を充分に発揮できないとの事。
そんな中、リアルで金属を紐状にして編み込んだアクセサリーを見たソルメイさんが、露店で銅製アクセサリーを売っていたメンマさんに、同じようなものを作れないか相談した結果が、あのアクセサリーだった。
真っ白な身体に艶めいた銅の三つ編み首輪が映えていて、デザイン性もバッチリだ。ウサ丸も自慢げにしている。
「サイズもちょうど良さそうだね〜。後は、動きの邪魔にならないか見たいけど……。ねぇ〜、もし良かったらこのメンバーで、今日一緒に大迷宮潜らない〜? ここで会ったのも何かの縁ということで〜」
「僕は大丈夫ですけど、プラナさんは……?」
この2人(+2匹)と一緒にイベントか。まあ、2人とも悪い人では無かったし、問題ないかな。
「はい、自分も大丈夫ですよ。お二人とも、今日は宜しくお願いします」
そんなこんなで、初イベントは再開パーティにて巡ることになった。ちなみに2人ともフレンド交換したぞ! アトオン初めてのフレンドだ!
(パーティを組む時にソルメイさんが経験値配分がどうとか言って、シカ太郎を帰還させようとしていたが、自分もメンマさんもその辺りは気にしない方だったので、2匹ともパーティに入った)
* * *
大迷宮の道は、街道と同じく広々としていて戦闘の邪魔にはなら無さそうだ。また、所々に花が咲き乱れている生垣は、高さ4メートルくらいあって、登るのは難しそうだった。
中に入ると、複数の道に枝分かれしている。とりあえず、真ん中の道を進むことにすると、早速イベントモンスターであろう、花冠を被ったスライム?が現れた。名前は「フラワーフェススライム」。花祭りだからフラワーフェスか。
最初のモンスターだからか、大して強くなく、ウサ丸のキックで瞬殺だった。
その後も名前が「フラワーフェス◯◯」であり、花飾りをつけたラビやドッグが出て来たが、苦戦する事なくどんどん進み、最初のチェックポイントまでやって来た。
「ここまでは順調ですね!」
「そうだね〜。ただ、モンスターが弱すぎて大体一撃だから、ウサちゃんの動きの確認があんまりできないな〜」
「確かにな。あ、確かにですね。」
危ない危ない、よそ行きモードが崩れかけてる。
「ん〜? プラナさん、喋りにくかったら無理しなくて大丈夫ですよ〜」
「いや、大丈夫ですよ」
フレンドとは言え、まだ2回目だからな。タメ口はちょっと気が引けるよ。
チェックポイントから、更に先に進むと、またフラワーフェススライム・ラビ・ドッグが出て来たが、今度は少し手強い上に、一度に複数現れるようになった。
シカ太郎がタンクとして立ち塞がり、そこを前衛の自分とウサ丸で攻撃する。撃ち漏らしは、後衛の2人がすかさず仕留めた。
やっとパーティ連携みたいな動きは出来たが、まだ敵が弱いため直ぐに終わってしまう。偶にフラワーフェスボアも出て来たが、同様だった。(ボア系についてはセカドの森でも見た事があったので、冷静に対処できた)
「まだ、ここも弱いね〜。じゃんじゃん行っちゃお〜!」
「あ、待ってくださいメンマさん! あそこ、採掘ポイントじゃないですか?」
ソルメイさんが指し示す場所には、一部に花が咲いているピンクの岩。分かりやすくする為とはいえ、ピンク色かあ……。
「ソルメイさんナイス〜。ではでは、ガツンと一発!」
メンマさんは【採掘】スキルも持っているらしく、ツルハシも準備していた。スキルがなくとも採掘は出来るが、道具がないと掘ることはできない。
その為、自分とソルメイさんも今回は見学だ。
「プラナさん。ファスやセカドの周りには採掘ポイント少なかったので、僕はツルハシは持ってなかったんですけど……やっぱり一通り採集道具は持ってた方が良いんですかね?」
「んー、まあイベント中は少なくとも、幾つか用意してた方が良かったかもと、今更ながら後悔してますね。昨日は消費アイテムしか準備してなくて、採集道具系は失念してましたし」
そんな感じの事を話していたら、採掘を終えたメンマさんが戻ってきて、色々教えてくれた。
現在開拓されてる通常フィールド上では、採取・採掘・伐採・釣りポイントが発見されており、採取ポイント以外は道具が必要なので、簡易なものでもいいから持っておくと良いそうだ。
……釣りポイントなんてのも有ったんだな。草原フィールドの川辺りか?
* * *
2つ目のチェックポイントも無事発見。ここで、ソルメイさんに空腹の注意ポップが出たので、皆んなで食事タイムに入る事にした。
ソルメイさんと自分はどんぐりクッキー。ウサ丸とシカ太郎は、小松菜?的な葉っぱを食べていた。そして、メンマさんは端がぎゅっとなっている焼いたパンを出している。なんだっけ、ホットサンド??
「それ、ホットサンド?でしたっけ。そんなのもあるんですね?」
「むふふ〜。小麦は〜まだ見つかってないけど〜、パンはNPCから買えるみたいなんだよね〜。それで【鍛冶】スキル持ちのフレンドに〜、試しに銅でホットサンドメーカー作って貰ったんだよ〜。お二人さんも、お一ついかが〜?」
せっかくなので、ソルメイさんと一緒にメンマさんからホットサンドを貰って食べてみた。中身はちょっと硬めのお肉と玉ねぎ?だった。
「うわぁ! 美味しい、美味しいですよ、プラナさん、メンマさん!」
「確かに美味しいです。ありがとうございますメンマさん」
「喜んで貰えて何より〜。【料理】スキルを取ってみた甲斐があったよ〜。欲を言えば、チーズが欲しいんだよね〜。もし、見つけたら連絡よろ〜」
チーズか。確かにチーズが有ったら、もっと美味しいかもしれない。あ、ウサ丸がソルメイさんのホットサンドを狙って飛びついてるな。ソルメイさん、頑張って死守してくれ。
* * *
食事が終わったら、探索の続きだ。2つ目のチェックポイントの先では、今まで出て来たラビやドッグの他に、通常フィールドでも見たことのない系統のモンスターが現れた。
「あれは…… ハリネズミとマリモ??」
「え? マリモなら根っこは生えてなさそうですし、苔玉じゃないでしょうか??」
「苔にしては〜、葉っぱが普通の草っぽくない〜?」
現れたのは、花飾りがついたハリネズミ「フラワーフェスヘッジホッグ」と、まん丸な植物の身体に、茶色い根っこが足のように生え、上部に生垣と同じような花が咲いているモンスター「フラワーフェスプランツ」だった。
とりあえず、今まで通りにシカ太郎に前に出てもらったのだが、
「うわっ! シカ太郎?!」
「ヤバい! ハリネズミが後ろに抜ける!!」
なんと、このマリモもどきから蔓が伸びて、シカ太郎を絡め取ってしまったのだ! 更には、驚いた隙をついてハリネズミがダッシュし、後衛まで駆け抜けてしまった!!
「きゃっ!」
「キュウ!!」
メンマさんにハリネズミの体当たりが当たる寸前、ウサ丸が頭突きでハリネズミを横から突き飛ばす!
「よし! ウサ丸、ナイス! メンマさん、ソルメイさん、すみません!!」
「こっちは大丈夫〜。プラナさんは、シカ太郎のカバーお願い〜。ソルメイさん、ウサ丸と一緒にハリネズミを先に、やっちゃいましょ〜」
「は、はい! ウォーターボール!」
ハリネズミはあっちに任せて、とりあえずこの蔓を切ってしまおう。シカ太郎、動かないでくれよー。
蔓を切ったら、シカ太郎には一旦下がってもらい、マリモもどきと対面する。植物だから【水魔法】は効かない気がするし、とりあえず切りまくるか。
ワサワサ揺れているマリモもどきに剣を振りかぶると、また蔓を出して来たが、予測済みだ! ステップを踏んで、蔓を避けると、そのまま斜めに切りつける!! ダメージエフェクトが出たら、更に追撃で【スラッシュ】!
吹っ飛んだマリモもどきを、シカ太郎が突進して生垣に叩きつける! それでもまだ動いているマリモもどき。トドメとして【スラッシュウェーブ】を放つ!
――バシュッ
ようやっと動かなくなり、エフェクトを出しながら消えていく……。
「ふぅー。やっと倒せたか」
「そっちも終わったみたい〜?」
メンマさん達もやって来た。ハリネズミは無事に倒せたみたいだな。ここからは、敵も強くなっているようだ。気を引き締めていこう。
* * *
暫く、進んでいくと敵が強くなっているだけではなく、道も複雑になって行った。何回も行き止まりに着いてしまい、道中すれ違った他のパーティの人達と情報交換をして、1時間ほどかけ、やっと3つ目のチェックポイントに辿り着いた。
「やっと着きましたー! ウサ丸もシカ太郎もお疲れー!!」
「いや〜、確かにこれは大迷宮だね〜。私もうダメ〜」
チェックポイントに入ったとたんに座り込むソルメイさんにメンマさん。ウサ丸とシカ太郎も疲れたのか、ソルメイさんの近くにヨロヨロと近づいて、同じく座ってしまった。
かくいう自分もかなり疲れた。あのマリモもどき「フラワーフェスプランツ」だっけ? しぶといわ、攻撃が嫌らしいわで、一戦一戦が疲れる上に、迷宮の道が難しくなったことで、体力的にも精神的にも疲れてしまった。これは、イベント武器か、植物系に効きそうなスキルが無いときついな。
自分も座りながら、水を飲んで休憩する。
「う〜ん、皆んなバテバテだし、今日は〜ここまでにします〜?」
「そうですね。ウサ丸もシカ太郎も限界みたいですし、残念ですがここまでかと」
「ええ、自分もHP・MPともにヤバいですし、ここまでにしましょうか。今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ! ありがとうございました。プラナさん、メンマさん!」
「私も〜ウサちゃんのアクセの動作確認できたし〜、イベントいっぱい進められたし〜、2人ともホントにありがとね〜」
全員限界だったようで、今日はここまでにする事にした。ゲットしたイベント素材は、アクセサリーに使えそうな物はメンマさんに、薬に使えそうな物はソルメイさんに分配した。(ソルメイさんは【調薬】スキル持ちだった)
それら以外の素材は、自分多めの3分割にしてもらった。2人はもっと持っていってもいいと言ってくれたが、自分が持っていてもあんまり使い道がないからな。ポイントも積極的に集めたいわけでも無かったし。
チェックポイントからイベントポータルに帰れたので、イベントポータルまで戻ってからパーティ解散した。
* * *
そして、帰ってきたサドンの町。
まさか、あの2人と再会することになるなんて思いもよらなかったけど、イベント初日は良い感じに楽しめて良かった! この後は、一旦ログアウトして、リアルでもきちんと休憩しよう。
次は何をしようかな……
・ソルメイさんのプレイヤー名
プレイヤー名を決めるとき、迷いに迷って決められなかったので、姉さんにつけてもらいました! カッコいいですよね!(ソルメイ)
……だからプレイヤーネームだけ、普通のゲーマーっぽいのか。(プラナ)
・フラワーフェスプランツの呼び方
マリモもどき(プラナ)
苔丸!(ソルメイ)
葉っぱちゃん(おつまみメンマ)




