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68話 最終決戦・開幕

後書きにとあるプレイヤー達の会話があります。

 暗い表情で話し合う王達の一方で、やる気に満ち溢れるプレイヤー達。

 そんなプレイヤー達にクッコロが同盟通信を全員に繋ぎ、作戦会議が始まった。



「みな聞いてくれ!今回作戦はない……これから向かう【冥闇の地】がどんな地形か、敵の数や陣形、色々な情報が不足している事もあり、作戦を立てるより臨機応変に動くべきだと考えた。そのため今は主に戦闘班、製作班に分かれ、パーティを組む者を各々決めてほしい。どの国に属しているかなど最早関係ない。理想のパーティを作ってくれ」



 タンク、近遠魔火力、ヒーラーを中心とし、そこにバッファー、デバッファーなどが加わり続々とパーティが出来ていく。採取、生産ジョブのプレイヤー達には戦闘ジョブだがレベルが少し低いプレイヤーが護衛としてパーティに加入するようだ。



 俺もかなりの人数にパーティに入ってくれと誘われたが、プレイヤーと組んだ事が無く、プレイヤーとパーティを組めば召喚士としての強みが活かせないと、全て断っておいた。



 パーティが組み終わり、今まで準備しておいた回復アイテムや食料などを全員で分け、ライドに乗って【冥闇の地】を目指す事になった。シルクスなど一部のライドを持っていないプレイヤーは二人乗りで向かうようだ。



 しかし意気揚々と出発の準備をしていたところで聖獣達に声を掛けられる。



『みな、待つのじゃ!』


『貴方達が馬より速い移動手段を持っているのは分かっているなのです』


『うむ、しかし【冥闇の地】は馬を休まず走らせても半日はかかる道のり。今から向かえば夜が来よう』



 おっと、それは確かにマズい。セーフティエリア外でログアウト、もしくは強制ログアウトさせられた場合、"3時間"脆弱のデバフが付与された状態でリスポーン地点に送還されてしまう。



 俺もアマテラスの聖域がセーフティエリアとは知らずにログアウトをしたが、それはデメリットがそれ程無いように思えたから出来た事だ。



 今の状況でホームに戻され、3時間動けないのは痛すぎる。



 こんな事態も想定し、とある物を用意してはいるが150人のプレイヤーなど、とてもじゃないが賄えない。さて、どうしたものか……



『ほほぅ、珍しく困っておるな!愉快、愉快。だが案ずる事は無い。我ら崇高なる聖獣が力を貸そう!』


「……有難いんだが、そういう事は時と場合を考えて早く言ってくれ!」



 どうやら聖獣達は守護領域内でなら結界を張り、一時的にセーフティエリアを創り出せるようだ。



 しかし相応のリスクもあり、セーフティエリアとなるくらいの結界……それは簡易的な聖域に等しいようで、聖獣達はかなり力を消耗するそうだ。

 そしてあまり【冥闇の地】に近付き過ぎると聖獣の半身である黒い雲に見つかる可能性があるため、目的地からは程々に距離を開く必要があるそうだ。



 それでも大助かりなのは間違いない。すぐに街を出て【冥闇の地】に全員で向かう。

 そして【冥闇の地】の手前にある山の麓で聖獣達に結界を貼ってもらい、順次プレイヤー達がログアウトしていく。



 イベント6日目である翌日。



 山を越え、ここからは徒歩でその先にある森を進んでいると、森の木々が途中から枯れ木に変わり、綺麗な夜空からどんより淀んだ空に変わっていく。



『みな、ここはすでに冥闇の地じゃ。十分注意することだ』



 アマテラスの言葉に全員が気を引き締め直し森を進む。そして森を抜けた先の崖からの光景は凄まじい事になっていた。



 見渡す限り黒く染まり、赤い光が点々と存在している。どんな地形なのか分からないほど黒に塗り潰されている。



「あぅ……まさかアレら全てが魔獣だというのか……馬鹿げてる」



 隣に立つクッコロがそんな事をポツリと呟いた。



 クッコロだけでなく多くのプレイヤーが辺り一面を埋め尽くす魔獣の数に唖然としている。



「凄まじいな……ざっと数万から10数万ってところか?集合体恐怖症の奴がいたら卒倒もんだ」


「…………」


「……クッコロ?…………お前まさか」


「くっ……いっそ殺してくれ!」


「……まぁ無理はしないようにな」



 崖を下り開けた場所に一旦集まる。ここは丁度魔獣達からは死角になっているようだ。



「あー皆、クッコロは体調が悪くなったみたいだから俺からになるんだけど、数は想像以上に多いけど当初の予定通りいこう!ある程度みんなで数を減らしたら俺達が城に突入する」



 シンプルな作戦だが、当然待ち伏せは予想していた事だ。数を減らし退路を確保しつつ俺、クッコロ、ドラ、ミラ、セラ、アマテラスのパーティと、ツクヨミが率いるパーティ、スサノオが率いるパーティ、このフルパーティ3組が城に突入する事になっている。テラとレラはパーティから外し【同化】してもらっている。



 そこに久々登場の勇者アルが懸念を口にする。



「ゼルさん、しかし魔獣はあの数です。さすがに物量で押し切られますよ……いくら僕達が疲れない体だとはいえ、HPやMPを回復する暇も無いとなると……回復出来たとしてもあの数の魔獣相手だとアイテムもすぐに底を尽きます」


「その通りだ。しかし聖獣達には私達についてきてもらわねば、私達の方がやられてしまうぞ」


「クッコロ、ちょっとは元気になったか?……まぁ任せとけって。丁度良い物持ってるからさ!」



 そう言って俺はプレイヤー達から少し距離をとり、広く空間を確保する。



「転送、リゲル」



 俺の隠し玉その2だ。といっても完成まで程遠い代物だが、この状況では役に立つ。



「これは……キャンピングカー……ですか?」



 俺が転送したのはアルの言う通り、キャンピングカーの様な超大型のライドだ。本来は移動出来るホームのような性質を持つライドを想定した物だが、スキルレベルや素材、あらゆる物が足りず、走行する事も出来ないが【リゲル】の内部にはあらゆる作業台を設置している。



「未完成だけど、中に設置している作業台は全部使える。一応装甲も厚くしてあるし、多少なら攻撃にも耐えられる」


「つ、つまりこのライドを簡易的な拠点として魔獣を殲滅する訳ですか!」


「そういう事だ!共有収納箱も設置しとくから、素材が有る限りアイテムを製作出来る」


「……ゼルさん、あなたは未来から来たネコ型ロボットか何かですか?」


「ふふん、なかなか気がきくだろ?」


「これ完成したらぜひ僕にも売ってください!言い値で買いますから!」


「まぁ考えとくよ。それより魔獣だ!アイツらは人型魔獣と違って経験値が美味しいからな……ガッポリ稼がせてもらおうぜ」



 ともあれこれで準備は整った。



 採取、生産ジョブのプレイヤー、護衛につくプレイヤーを【リゲル】の周囲に待機させ、その他のプレイヤーは横一列に並び展開する。



「ここまで全員で来たのだ!誰一人欠けることなく突破する!フレンドリーファイアはない。思う存分能力を発揮してくれ。いくぞ、かかれーーーー!!!!」


「「うぉおおお!!!」」


「やったらぁーー!!!」


「挽肉にしてやんぜぇ!!」



 遂に最終決戦、開幕!!

~決戦少し前、とあるプレイヤー達の会話~



「しっかしあのゼルって人のライドすげぇな......」


「それな!ライドとか移動手段くらいにしか思ってなかったわ」


「それにここに来るまでの道中、一人だけ世界観違ってたもんな。モンスター軍団の中に一人だけバイクてっ!!」


「しかもあのバイク、くっそ速いからな!余裕で引き離されたわ」


「オマケになんだよキャンピングカーって!マシンライド万能過ぎかっ!?」


「俺も知り合いに機工士いるから頼んでみようかなぁ」


「そういえばテラちゅわんがロボットに乗って戦ってたってハーヴェストのヤツに聞いたけど......」


「いやさすがにそれはデマだろ!ロボットって、それもうライドじゃないし。それにテラってNPCだろ?有り得ないだろ」


「いや、NPCだって武器使うんだから有り得なくはないだろ。まぁ俺も半信半疑だけど」


「まぁ、お互い生きてたら直接聞いてみようぜ!」


「おー、あ、ぅう"ん......敢えて言おう。死ぬなよ!」

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