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65話 立ち上がるモノ達

本日は2本に分けて投稿します。1本目

 イベント4日目。



 昨日は同盟を組んだ後、少しだけ【オーガスト】の街を見て回ったが、【ハーヴェスト】と【マジックラフト】の良いところを合わせ持つような街だった。

 街並みは西洋風だが自然との調和がなされ、魔法技術を用いた堅固な城壁で外敵から護られている。



 そんな街を歩いていると、ふと【ハーヴェスト】に設置した【転移扉】の場所が気になった。



 今はNPCダッツの家とアマテラスの聖域に【転移扉】を設置しているが、聖域からでは街まで遠く、ダッツの家を経由するとひっきりなしにプレイヤーがダッツの家を通り過ぎることになる。

 ダッツは気にしなくていいと言っていたが、この際なのでもう1つ【転移扉】を街の中に設置することにした。



【ハーヴェスト】に残っていたプレイヤーが街で発生したクエストをクリアし、都合よく空き家を借りれることになっていたようで、この空き家をプレイヤー達の活動拠点にし、【転移扉】などを設置しておいた。



 その作業中、アマテラスからツクヨミとスサノオを交え、夜中にでも邪魔が入らない場所で話がしたいと申し出があった。



 場所は【転移扉】を設置している事もあり、アマテラスの聖域に決め、その話し合いに今からクッコロと向かう事になっている。クッコロだけでなく、ネヴィラとのり助も参加するようだ。



 アマテラスは先に聖域に戻り待ってくれているようで、【ハーヴェスト】のプレイヤーが全員ログインした事を確認してクッコロと2人で聖域に向かう。



 聖域につくと、先にネヴィラとツクヨミが到着しており暫し雑談を交わす。



 少しすると【転移扉】の扉が開き、のりスケとスサノオがやってくる。俺もスサノオと会うのは初めてだったが、のり助の隣を手乗りサイズの真っ黒なネコ?のような生き物がフワフワと飛んでいる。



『ふはははは、先に待っておるとは殊勝な心掛けだ!そう、我がスサノオである!』


『来おったな女の敵め!』


『会って早々うるさいなのです』


『ふはははは、我が正気に戻れたのもアマテラスとツクヨミの助力があってこそ!今度昔のように可愛がってやろう』


『……妾に指1本でも触れたら、殺すぞ』


『同意見なのです。なんなら今すぐ腕の1本くらいちぎっても問題ないなのです』



 なんとなく……言動からしてスサノオは女癖が悪そうな気がする。主に俺の偏見なのだが……



『ゼルよ、スサノオには気をつけるのじゃ!あやつは"両刀使い"じゃからな』


「うぉい、マジかよ……っていうか俺に振るな」



 スサノオは欲望に素直な奴のようだが、なぜこうも聖獣達の味付けが濃ゆいんだ!ケツがキュッとなってしまった。あまり深く考えるのはやめよう。



「話を戻すけど、今回の話し合いはスサノオが言い出したって聞いてる。要件はなんだ?」


『うむ、見ての通り我は黒豹という生まれながらに崇高な存在である。しかし我を模した下賎な輩が現れたと言うではないか!断じて我慢ならん!』



 ネコじゃなくて黒豹だったのか……しかし似てる存在といえば、やっぱり魔獣か。黒い四足獣という点では確かに似ている。



『我に似ておるだけでも許し難いが、あまつさえこの地の者達を襲っておると聞く。根絶やしにしてやらねば我の気が収まらん。そこで何か良い案は無いかと思ってこうして集まってもらったのだ』


「そこは俺達任せなんだな……まぁ、魔獣は俺達にとっても邪魔でしかないからな」


「うむ、黒幕が動きだしたと同時に魔獣も現れた……恐らく魔獣は黒幕の尖兵なのだろう」


『つまり崇高な我を罠にはめ、ばかりか我の姿を模した兵を操る者がおるのだな?そ奴を連れてまいれ。我が八つ裂きにしてやろう!』


「それが出来ないから異界の冒険者である俺達はコッソリ手を組んだんだよ!それに、お前随分ふんぞり返ってるけど、出し抜かれたのはお前自身だぞ?もうちょっと用心しろ」


『どうせオナゴと乳くりあっていた所でも襲われたのじゃろ……情けない』


『まったくなのです!こんな色ボケたケダモノに襲われた者の方が可哀想なのです』


『ゼル……我……われ、悲しい……』


「自業自得だ…………それよりだ!1つ作戦、というか思い付いた事がある。上手くいけば黒幕が顔を出すかもしれない」


「ほぅ、是非聞かせてもらおう」


「えっとだな__」



 俺の思い付きを説明すると、この場にいる全員納得してくれたようで、そこからは段取りを詰めていく。



 その最中、人数が多くなり緊急時以外では使わないように決めていた同盟チーム通信が複数のプレイヤーからほぼ同時に届く。



「大変だ!ハーヴェストに魔獣が攻めてきた」


「マジックラフトにも来てます!」


「オーガストもだ、ヒャッホー!」



 どうやら3国同時に魔獣が攻めてきたらしい。



「俺の作戦、やるなら今だな!」


「待て、だがそうなると……」


「良いよ別に……言い出したのは俺だし。それより皆、作戦はさっき説明した通りだ。上手くやってくれ!」



 こうして俺達はそれぞれの国に戻り、魔獣との戦闘に入った。

 前回攻めてきた魔獣のレベルは全て15だったが、今回はなんと30。一気に倍まで魔獣のレベルが上がり、苦戦するプレイヤーが多くいる。



 そのため今回は、前回の襲撃時のように平原に打って出ることはせず城壁を利用しての防衛戦となった。前々から準備していたバフ付きの料理をNPC含めた全員が食べているためLv30付近の戦闘ジョブプレイヤーは問題ないだろうが、生産系のプレイヤーやLv20台のプレイヤー達が心配だ。



 クッコロの適切な指示を受け全員で交代しながら街を守る。

 NPC達の頑張りもあって、魔獣の数が減ってくると一気に打って出て魔獣を殲滅した。



『我々の勝利だーーー!!!』


『おぉーーー!!!』



 兵士達が勝利の雄叫びを上げている。しかしすぐ見張りをしていた兵士が声を荒らげた。



『まだだ!まだもう1匹大きいのがいるぞ!!!』



 その声を聞き城壁の外に視線を向けると、数倍大きな体躯の真っ黒な塊が見えた。



「俺が行く……住民を頼む」


『いや待ってくれ、あれは……』



 俺は兵士の声も聞かず真っ黒な塊のもとに向かい対峙する。

 真っ黒な塊は9本の尻尾がユラユラと不気味に蠢き、赤い鋭い目で俺を睨みつけ襲いかかってきた。



 少しの戦闘の後、首を刎ね飛ばす。

 その直後、静まり返った街に声が響いた。



『あ、あれは……あれは聖獣アマテラス様ではないか!!!なぜ聖獣様を討った!!答えよ冒険者!!クッコロ、何故貴様が居てこんな事になった!!』



 そんな声が聞こえ城壁の方に視線を向けると、ハーヴェスト王が隣に立つクッコロに鬼気迫る勢いで問い質していた。



 必死に説得をしているクッコロを眺めつつ街の方に戻ると、再び大声が響く。



『ゼルさん!!!貴方は、貴方はなぜ…………貴方達を信じていたのに!!!』



 涙を流しながらダッツが俺に迫り首元を締め上げてくる。



『あれはこの地の聖獣アマテラス様だ!……私達の敵は聖獣様ではない!!』


「はっ、調子いい事ばっかり言うな。ほっといたらアレは間違いなくこの街を、この街に住むお前達を襲ってたんだ。何もせず街に引き篭ってた奴が今更出てきて何を……っ!」



 ダッツに殴られ1歩後退る。

 肩を上下させ、震えるほど拳を固く握ったダッツはそのまま振り返ると、騒ぎを聞きつけやってきた住民達に向け声を張り上げる。



『皆見たか!これが他所の力に頼った結果だ!!この地に寄り添い、私達を導いてくれた聖獣をコイツらは悪びれもせず手にかけたんだ!…………ここは私達の街だ、私達の手で守るべきだ、そうだろう!』


『そうだ!!』

『俺達の国だ!!』

『俺達が守るんだ!!』



 ダッツの呼び掛けに応じ、住民達が一斉に沸き立ち、再び俺に向け振り返るダッツと視線が交わった。



「そうかよ……好きにしろ。転送、シリウス」



 俺はそのままライドに乗り、街を後にした。

読んで頂きありがとうございます。

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[一言] 前話はノリ助 この話以降はノリスケ
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