18 魔眼VS魔眼
「……相殺してる……!?」
驚愕で黄金の両目を見開く会長に、私は答えずただ微笑を返します。
属性が光と光ならば、衝突して強い方が残り、決着は一瞬でしょう。けれど光と闇──照らすか陰るかなら、質より量の勝負になります。
だからこの日この時のために、私は魔力をひたすら溜めこみました。
いちばん魔力への変換効率がいいのは直接の吸精。これは朝の日課の痴漢狩りと、庄司先輩や合気道部のお二人にも、ちょっぴり協力していただいて。
とは言えそれだけでは限界があります。
そこで、潜夢の要領で意識を飛ばし、不特定多数の夢に潜り込んでの遠隔吸精。
これこそ夢魔の本領、なのですが、これはこれでいろいろ問題があり……まあ、そのへんの話は後ほど。
とにかく私が彼女に立ち向かうために準備したのは、ひたすらかき集めた膨大な魔力量でした。
「──よくもまあ、それだけかき集めたものね」
「天王洲先輩にお褒めいただけるなんて、苦労した甲斐があります」
「呆れているだけよ」
「どうやって集めたか興味ありません?」
「話すことはないと言ったはず」
お互い魔眼は逸らさずに、見詰めあったまま言葉を交わす。
「つれないですね。それじゃあ、こう呼べばお話してくれるのかしら? てんのちゃん」
「……ッ……!?」
──彼女の言う、無差別大量石化のための「舞台」とは何か?
それを究明すべく、私はSNSにおける私──マニアックバーチャルJK咲葉スズコの頼りになるフォロワーさんたちからも、情報をかき集めました。
そして知ったのは、件のオークPが現在メジャーから地下まであらゆるアイドルから選抜した最強のグループ「最終女神計画」──サイメガプロジェクトの選考委員長を務めているということ。
サイメガは年末の国営放送の某大型歌番組にて一夜限りのパフォーマンスが予定され、その企画のために立ち上げられるユニットらしい。
正式発表はまだですが、アイドルにとても詳しいフォロワーさんからの信頼できる情報です。
そして、その件を深掘りするなかでひとつの動画が目に留まりました。
アイドル然としたひらひらのスカートをひるがえし、ハーフアップの髪型でまぶしい笑顔を振りまき舞い踊る美少女。
フォロワーさんが「サイメガのセンターに大抜擢される可能性のある地下アイドル」として情報提供してくれた彼女こそ、三人組アイドルユニット『Heavy Cream』──通称へびくりのセンター、天乃です。
完璧なビジュアルと身にまとう高貴なオーラ、歌も踊りもハイレベルなのに気取らない神対応ぶりが界隈で熱狂的な人気を獲得しており、オークPも最注目のアイドルとしてインタビューで名前を挙げていたのだとか。
──動画を一時停止してまじまじと見つめる。こんな満面の笑顔は見たことがないし、キラキラのメイクでさらに美しさが増していたけれど。
それは明らかに、いま私の目の前にいる生徒会長・天王洲 瞳巳そのひとでした。




