異界化
7月21日、中学校3年生は塾で夏期講習を受講して高校受験に備えるそうだ。
「エリシアさんも、中学3年で編入という形になるけれど、高等学校に進学するよね?」
純一園長にそう聞かれ、あたしはうなづく。
一般的には高校に通うのが当たり前であるし、これから日本で生活するならばどうあれ高校の学歴は必要であると、教えてもらっていたからだ。
それに、朋美や蘭子たちと同じ高校に通いたいと思っていた。
「うん、そうする予定です」
「なら、費用は出すから佐川さんたちと一緒に夏期講習を受けてくると良いよ」
そういう感じで、あたしは朋美たちと一緒に塾に夏期講習を受けることになったのだった。
そして、夏休み初日、あたしは塾のオリエンテーションに参加するために、朋美たちと共に高校受験に強い塾に来ていた。
「……となります。カリキュラムは……」
オリエンテーションというだけあり、塾のシステムの説明、タイムカードの説明、タイムスケジュールの説明を受ける。ほぼ一日拘束されることになるようだが、あたしとしては現代日本のことを勉強できるので結構楽しみだった。
個人的な不満点としては、日本の神話とかの授業がないことだろう。当たり前のことなのかな? フェルギンでは母親から国の成り立ちを教えてもらい、教会でも教えてもらった記憶がある。建国神話は受験の対象科目ではないんだなと考えると、日本で育ってない人でも受験に不利にならない配慮なのかと考えた。
教科は、国語、数学、理科、社会、英語である。
英語……Englishはこれまで学んでなかったので、大変そうである。この世界の共通語がEnglishなので、学ぶのは当然だけれども、試験に必要なのだなと感じた。その割に、朋美も蘭子も苦手そうな顔をしていたし、もっぱら日本語でしか話していなかったけれどね。
学力診断テストを含めてのオリエンテーションだったが、やはりというか英語はよくわからなくて壊滅、それ以外の科目についてはまあまあ、理科に関しては全部解けたという感じの感触を受けた。
そんな感じで、初めて学ぶことにウキウキしながら、オリエンテーションを終え、大量にもらった教科書類を鞄に詰める。
「高校受験だる~」
「これから遊びに行こうぜ!」
という男の子の声や、
「夏休み、どこ行こうかな?」
「やっぱり夏祭りとか? 着物とかレンタルしないとだね~」
みたいな勉強には無関心な女の子の話声が聞こえたりして、日本人にとっては勉強ってこの程度の認識なのかなと少し残念に感じてしまう。
「エリちゃん!」
朋美が話しかけてきた。
「朋美、どうしたの?」
「荷物置いたら、遊びに行きましょ!」
朋美もやっぱり、受験勉強に対してあまりいい感情を持っているようには見えなかった。だからこそ、現実逃避で遊びたいのだろう。一応、宿題も出ているし、朋美たちと違って課題にかける時間はかかりそうな気もするけど、無下にはできない。
「うん、どこ行く?」
「池袋に行こうよ。ボーリング────
不意に、朋美が固まった。
「……? 朋美?」
周囲を見ると、ほかの生徒も固まっている。まるで、時が止まったようだった。
「何が……」
窓の外がまだ明るかったはずが、真っ暗になっている。
晄ヶ崎都立高校に侵入したときのように、異様な雰囲気を感じた。
「まさか、異界化? なんで?」
晄ヶ崎都立高校とは違い、【門】があるわけでもない。
「朋美?!!」
あたしがパニックになって朋美の肩をゆすると、理由はわからないが朋美が動き出す。
────に行きましょ! ……って、何、この状況?」
朋美が動き出すと同時に、周囲の状況が砂となって崩れ落ちていく。
まるで、今までいた場所のヴェールが剥がれ落ちるように……、気が付けば塾の設備がぐちゃぐちゃに配置された空間にいた。
そして、別のクラスにいたはずの蘭子、輝明、小南、そして野球部で練習をしていたはずの十代が同じ空間にいた。
「あれ、なんでお前たちこんなところにいるんだ? てか、俺はグラウンドにいたはずだが……?」
「ちょっと! エリ! いったいどうなっているのよ?!」
「ってか、なんで戦力外の僕らまで?!」
全員が困惑するが、そんな暇はなさそうだった。
なぜならば、数字を組み合わせて抽象化したような謎の敵が出現したからだ。
「きっも! なんだよあいつ!」
十代がびっくりしながらバットを握る。
謎の数字は奇妙な動きをしながら、十代に突撃していく。
「十代!」
「なんだかわからんが、ぶちのめしてやる!」
数字のキモイ敵は、数字が白タイツに絡み合ったような感じで、進撃の巨人の奇行種みたいな感じの動きをしています。
イメージは、マザー2のムーンサイドです。
■装備========================
エリシア
武器:なし
防具:普段着
加賀美 十代
武器:金属バット(なぜか金属バットになっていた)
防具:野球部のヘルメット・野球部の選手着
紀里谷 蘭子
武器:喧嘩用のグローブ
防具:普段着
佐川 朋美
武器:なし
防具:普段着
時山 輝明
武器:なし
防具:普段着
笹川 小南
武器:なし
防具:普段着




