ヨキ
「魔法?‥治す?
そんなものが存在するなら医者は必要なくなるね」
ふんと鼻で強く息を吐き出すしぐさをしてからそう言った。
ネムは急に話を振られて「えっ‥」とか「うー‥」なんて言っている。
大事な時にポンコツである。
ネムがそんな様子だから代わりに俺が抗弁を試みてみる
「いやいやばあちゃん
そうは言うけどさ実際に俺も傷がみるみる塞がるのを見たことあるんだよ」
「私も瀕死の人が回復するのを見たのよ!」
ここぞとばかりにノエルも加勢
しかし‥‥‥
「なにを言われても今は家族以外は会わせる事はできないね
悪いけど出直してちょうだい
ほらほらお帰りはこちらだよ」
老婆の勢いに押され
促されるままに宿の入り口の扉前まで押されて来てしまった。
「病人がいるんだ
悪いけど騒がないで帰ってちょうだい」
そう言われるともう何も言えない。
「わかったよ
また来る」
ネム、ノエルも同様のようで大人しく引き下がり宿を後にした。
宿の横の空き地まで歩いて行くと
ネイソンが落ち着かないのか右往左往して馬車の前をいったり来たりしている。
「おいどうかしたのか?」
こちらが声をかけるまで気がついていなかったようでビクッとしてからこちらに向き直る。
「なんだお前居たのか
してどうだった‥‥‥?」
「どうだったっておばちゃんの事か?」
こいつも気になっていたのか
「会えなかった‥」
ネムがシュンとしながら代わりに答える
「姐さんそれはなんでなんです?」
俺とノエルに対する態度とは大違い
すぐさまネムに跪くような姿勢でネムの顔を覗きこむような形で問い掛ける。
「お医者さんがいて‥家族以外は‥会わせられないって‥言われたの‥」
「医者?
もしかしてヨキ婆さんか‥‥‥?」
「なんだお前知り合いなのか?」
「姐さん確認なんですが
家族なら会わせるって言っていたんですね?」
俺の問は無視
まあいつもの事だ。うんうん
「うん‥そう言ってたよ‥」
「そうですか‥‥‥」
ネイソンは少し考え込むようにうつむきぶつぶつと何か言ってから顔をあげ
「俺も覚悟します
行きましょう姐さん!」
そう言うとネムの手を引いて宿の入り口の方に歩き始める。
「ふぇ!?
行くって‥どこに?」
しどろもどろになりながらもネイソンのなすがままに引っ張られていくネム
「おいネイソン!ネムをどこに連れていくつもりだ?!」
「そうよ急にどうしたのよ?」
こちらに振り返りもせずネイソンは答える
「着いてくればわかる」
ネイソンは宿の扉を開くと迷う事なくおばちゃんが寝かされている部屋の扉の前までたどり着く
トントンとノックすると「はいはい」
と中から返事があり扉が開け放たれる。
「なんだい!またあんた達かい!
また出直してくれとは言ったけどこんなすぐにこられてもね!」
目を逆三角形にして捲し立てるようにそう言ってきた。
そらそうだこんな事されたら俺だって怒る。
「やっぱりヨキ婆さんだったか
久しぶりだな」
そんな事気にする様子もなくネイソンが口を開く
「うん?どなただい‥‥‥
って!あんたその目はまさか!?」





