命名「ヒナ」
城下町を後にしてまっすぐ続く一本道をひたすら西へ西へと進んでいる。
遠くに見える山脈は近づいてくる気配は一向にないが着実に距離を縮めているはずだ。
俺はいつものように荷台の一番後ろ-荷物の積み降ろしをするための段差-に腰かけて移り行く景色を眺めている。
ネムはいつも通り馬車の操縦
ノエルはと言うと新入りのヒナにエサを与えている。
それにしてもこのヒナ不気味である。
「なあノエルそいつほんの数日ででかくなりすぎじゃないか?」
産まれた時はノエルの顔くらいの大きさだった-
-のだが今はもう抱きかかえるのにも持て余すほどの大きさまで成長しているのだ。
「ん?そいつってヒナの事?
別に普通なんじゃない?
ユニだって急に大きくなったって聞いたわよ!」
この世界の常識は知らないが
俺の持ちうる常識を総動員してもそんな早さで成長する生き物なんて聞いたことがない
「そうなんだけどさ
なんか異常というかなんというか‥‥‥
気味悪くないか?」
ムッとしたのかノエルがトンと背中を押してきた。
バランスを崩して荷台から落下しそうになるがすんでの所でなんとか幌をつかみなんとか事なきを得る。
このスピードで走る馬車から落下なんてしたら‥‥‥想像しただけであれがキュと縮み上がった
「おい!お前殺す気かよ!
危ないだろ!」
ふんと鼻をならしてから
「私のかわいいヒナを侮辱した報いよ
ねっヒナ」
ヒナと呼ばれた新入りは呼ばれたのを理解してるのかどうなのか
ノエルには目もくれずエサのギロトカゲを貪り続けている。
「ところでそいつの名前ヒナにしたのか?」
「そうよ!かわいいでしょ」
「由来は?」
「鳥のヒナだからよ!」
今ですら風貌的にはふてぶてしさすら感じさせるそいつに
そんな名前をつけるとは安直すぎるな。
まあ俺に関係ないからいいんだけど。
「なによその顔は?なんか文句ある!?」
「いや別に
いいんじゃないか」
「なんかむかつくわね!
納得いかない!」
また俺の背中を押そうとしているのかじりじりとこちらに迫ってくる。
「ノクティ‥ちょっといい‥?」
ノエルと戯れていたら前方の操縦席に座るネムが振り向きこちらに何事か呼び掛けている。
「うん?なんだ?」
「あれ‥見て‥」
ネムが指差す前方
彼方になにかがうごめいている。
後ろからではよく見えないのでネムの横まで移動して目を凝らしてよく見てみる。
「人の集団か?」
10人や20人なんてもんじゃない
道を遮るように溢れんばかりの人だかり
「どうする‥?」
「どうするったって道はこれしかないんだ
行くしかないだろう」
「そうだよね‥わかった‥」
まあ相手が人なら通してくれと頼めば退いてくれるだろ
まだ動物やモンスターじゃなくて良かったよ。
そんなのんきな事を考えていた。





