ハアハア
「ハァハァハァ‥」
宿を背にノエルが仁王立ちでこちらを見ている。
「あんただらしないわね
普段どんな生活してんのよ?
ちょっと走っただけじゃない」
息も絶え絶えになりながらもなんとか答える
「いやいや‥ハァハァ‥ちょっとって距離じゃ‥ハァハァ‥なかったぞ‥ハァハァ
それにお前‥ハァハァ‥結構足早いのな‥ハァハァ‥」
「ハァハァハァハァキモい!」
そう言うとノエルは向き直り両開きの扉に手をかけて
ガチャン!という音と共に勢いよく開かれる。
「おばさんただいま!ネムは?」
カウンターの拭き掃除をしていたおばさんがノエルに気づき営業スマイルを浮かべている。
「おかえり!
ネムちゃんならカウンターの裏の部屋の掃除を手伝ってくれてるよ!」
『あらそう』とノエルは答えるとカウンターの裏の部屋に回り込み呼び掛ける。
「ネム心配したのよ!
なんで何も言わないでいなくなったの!?
しかもこんな男と二人でなんて!」
最後の一文は引っ掛かるがめんどくさいから訂正はしない。
テーブルを拭いていた手を止めて
「あっ‥ノエルちゃん‥‥!
ごめんなさい‥
疲れてるみたいだったから‥
本当に‥ごめんなさい‥」
体の前で人差し指を付き合わせて
開いたり閉じたりしている
それを見たノエルは、はぁと息を吐き出すと
「まあいいわネムが無事だったなら
それで‥‥‥」
ノエルは俺の方を向くと指をさしネムにこう訪ねた。
「この男に変な事は何もされなかった?
場合によっては鉄拳制裁もいとわないつもりなんだけど」
なにか物騒な事を言っているがそんな心当たりはない!
‥いやないよな‥‥‥
‥ないと思いたい‥‥
背中を一筋の雫がつぅーと伝ったのがわかった。
ちらっとこちらを見てからネムが答える
「大丈夫‥何もなかったよ‥ノクティ優しいし‥!
むしろ‥助けて‥くれたんだよ‥!」
ネムちゃんマジ天使
今俺の目から見たネムの背中には翼がはえている。
「そう、それなら良かった
被害者は私だけって事ね」
「被害者‥?」
「そう被害者よ
この男はね私のトイ‥んー」
最後まで言い終わる前にノエルの口を両手でふさいだ。
これ以上悪評が広がるのは避けたい。
別に覗こうとして覗いたわけではないのだ。
「とい‥?」
「いやなんでもないんだ」
ジタバタ暴れるノエルを押さえつけながらそう答える。
「あら‥あなたたちなにしてるの?」
いつからそこにいたのか部屋の入り口に立つおばさんがノエルと俺を交互に見ながら不思議そうな顔で訪ねて来た。
「いやなんでもないんだ
なあネム!
あははは」
「えっ‥あっ‥うん‥‥えっ‥?」
よくわからないといった感じだが反射的に返事をしてしまったようだ。
ノエルは唸り声あげて抗議をしているが俺は気にしない。
「そうかいそれならいいんだけどね
あっそうだった
ネムちゃんちょっと休憩にしようか
お菓子も持ってきたからみんなで食べよう」
そう言うおばさんの手にはクッキーの用なものが盛り付けられた皿が握られている。





