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影の御子  作者: 山口遊子
第3章 皇帝

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第27話 準備


 二人は何事もなくアパートに帰り着き、ケルビンは荷物を片付けて昼食の準備を始め、ビージーは井戸から水を運んでケルビンの手伝いをした後、腹筋や腕立て伏せといったトレーニングを始めた。


「ビージー、メシの支度ができた」

「はーい」



 昼食を食べながら、ビージーが自分の考えをケルビンに話し始めた。

「皇帝を暗黒の塔から引きずりだすため、まずは審問官の数を減らそうよ。そうすれば、今までに考えられなかったことが帝都で起こって、皇帝が塔から出てくると思うんだ」

「続けてくれ」


「今日見た審問官は五人だったでしょ。その五人が助けを呼ぶ前に斃してしまえばいいんだよ。そうだよね?」

「その通りだ」


「だから、一瞬のうちにケルビンが三人斃して、わたしが二人斃せばいいんだよ」

「ビージーの言う通りだ。

 ただ、俺もお前も明るいところでは、一人だって簡単に審問官を斃せないってことが問題だな」


「もっと空が暗くなればいいのかな? 夜になってから襲えばいいんじゃない?」

 ケルビンは頷き、

「暗闇の中でなら、俺とビージーで一人ずつ、最初の二人までは簡単に斃せると思う。しかしその後、残りの審問官に気づかれて仲間を呼ばれるだろうな」


「ということは、審問官が二人のところを襲うか、わたしたちの仲間がもう一人いればいいってことじゃないかな?」

「審問官はたいてい3人から五人で出歩いている。二人だけで歩いていることはまずない。

 それと、俺はビージーが『影の御子』だったことでさえ奇跡と思っている。さらにもう一人『影の御子』が見つかるとはとても思えない。

 万が一見つかったとしても、そいつが俺たちの仲間になるとも限らない」


「『影の御子』じゃないとだめなの?」

「そうだな。『影の御子』でなくとも審問官程度の能力があれば十分かもしれない」

「それだったら、審問官を仲間にできないかな?」


「うーん。ビージーは俺には想像もできないようなことを思いつくな。

 確かに連中の大部分は帝国、特に自分を捕まえて審問官ばけものに変えた審問官に恨みを持っている可能性もある。そこは考えておこう。

 こっちが3人になったとして、一瞬で全滅させられなければ、仲間を呼ばれてお終いだぞ?」


「そんなこと分からないよ。今は夕方霧雨が降るだけだけど、もしかしたら大雨が降って仲間を呼ぶ声が聞こえなくなるかもしれないよ?」

「ビージーは大雨を見たことがあるのか?」

「一度だけ。空も周りも夜みたいに真っ暗になって雨の音しか聞こえなくなった」


「そうなのか。俺は都で長年暮らしているが、今まで一度も大雨に出くわしたことがない。なので大雨といっても想像することしかできない。

 大雨の中だと音が聞こえないのなら、審問官との戦いに少々時間がかかっていいから、俺とビージーで5人は斃せるな。運次第だが、そういう時が来たら積極的に仕掛けてもいいかもしれない」


「そのつもりでいればチャンスはきっと来るよ」

「そうだな。そのつもりでいよう。出歩くときは少々危険ではあるが、ナイフを持っていこう。

 そういえばまだビージーにナイフの研ぎ方を教えていなかったな。昼からはナイフの研ぎ方を最初に教えるか」




 食事を終え、片付けも終わったところで、さっそくナイフの研ぎ方の講義が始まった。


「こっちの目の粗い方が荒砥(あらと)、こっちのつるつるした方が仕上げ砥(しあげと)だ。そして、目が中ぐらいの砥石が中砥(なかと)だ。

 刃こぼれしていると荒砥で全体を均して、中砥で大まかに均して最後に仕上げ砥で研ぐが、まだビージーのナイフは刃が欠けてはいないから仕上げ砥だけでいいだろう」

「刃が欠けてると、全体を均しちゃうから刃が薄くなって小さくなるんじゃないの?」

「その通りだ。刃が欠けているということは、ナイフの本体にひびが入っていることもあるから、買い替えなくちゃならない。それまでのつなぎだな」

「わかった」


「ビージー、まずはダガーナイフからだ。

 お前のダガーナイフを寄こしてくれ」

「はい」


 ビージーが自分のダガーナイフをケルビンに渡した。


「それで、仕上げ砥だが、最初に砥石に水をかけて、ナイフをこんな風に持って手前から押し出すように磨いていく。刃と砥石の角度はこんな具合であまり浅くもなく深くもなく」


 右手にナイフの柄を持ち、左手の人差し指、中指、薬指の三本の指で刃先を抑えてケルビンがビージーのダガーナイフを磨いていった。


「四、五回磨けば十分だ。両刃だから裏返して同じように磨いて、持ち替えてまた磨く。……。

 よし、こんなところだ。

 次はスタブナイフを寄こしてくれ」


 ビージーが手渡したスタブナイフを持ったケルビンが、

「スタブナイフの場合、刃がないから先端だけを荒く磨くだけでいい。ということで中砥なかとに水をかけて先端を回しながらこんな具合に磨くだけでいい」


 数回スタブナイフの先を中砥なかとの上で滑らせただけでスタブナイフの研ぎは終わってしまった。


「こっちは簡単なんだね」

「硬いものに突き刺せばスタブナイフでも先端が傷むが、よほどじゃなければ大丈夫だ。スタブナイフはダガーナイフのような刃もないし相手の武器を受けたとしても太いから折れにくい。

 こんなところだ。

 これからはナイフを使ったら簡単でいいから刃を磨くようにしろ。自分で刃を磨いていれば、戦闘の時でも知らず知らずのうちに刃先に注意が向き、刃先を大事にするようになる」

「分かった」


 ケルビンからスタブナイフを受け取ったビージーはダガーナイフと一緒に自分の物入れにしている木箱の中に仕舞っておいた。




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