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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#10_ぼくらのダンジョン生活(最終章)

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おまけ-第十章開始時点のキャラクタシートと「ある創造主の過去」

こんにちはK島です。毎度のご愛顧ありがとうございます。

さて来週から始まる最終章(第10章)に先駆け、開始時点のキャラクターシートを公開します。

このページは見なくても、物語を読む上では特に支障はありません。

邪魔臭いと思う方は飛ばして下さい。


あと、キャラクタシートだけだと短すぎてシステム的に投稿できないので、ショートストーリーを1本掲載します。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



*******SS「ある創造主の過去」*******


 時は少し前。

 アルト隊が、タキシン王国の小王子と『錬金術師(アルケミスト)』の師弟を連れて、タキシン王国へ向かう途中の話だ。

 彼らは『天の支柱山脈』という名の、アルセリア島を南北に分ける長い山脈の端を越えるのだが、さすがに1日で越せるわけもなく道中でキャンプを張った。

「ヴァ、なんとかってどんなヤツなんですか?」

 そんなキャンプの夜中、交代で焚き火番をしていたアルトがそう質問を発する。

 同時間帯に組んでいたメンバーはと言えば、黒衣の魔導師カリストと、大きなつば広帽子と長い髭で顔を覆ったような『錬金術(アルケニア)』の祖、ウォーデン老だ。

「ヴァナルガンド、だね」

「そうそう、そいつ」

 未だ、その名を憶え切れていないアルトの言を、軽い調子でカリストが修正するが、アルトもまた特に気にせず首肯した。

 質問が向けられているのはウォーデン老だ。

 アルト達が現代日本から、このメリクルリングRPGのルールに支配された世界へやって来たのなら、彼はまた別の異世界よりこの世界へやって来た人物であり、その目的は件の『ヴァナルガンド』を追って来たと言うのだ。

 この世界で初めてヴァナルガンドの名を聞いた、または会ったアルトたちより、よっぽど、この世界の『真なる創造主』の事を知っているだろう。

「ふむ、そうさのう。ヤツの親父殿の話からするか」

 慣れた手つきで焚き火に薪をくべながらウォーデン老が髭を揺らして話し出す。

 アルトは「え、そこから?」と思いつつも、どうせ長い夜の暇つぶしにもなると、黙って彼の話に耳を傾けた。



 ヴァナルガンドの父は、かの世界では鼻摘み者であった。

 彼は酷く頭が回る人物であったが、その賢さを小狡いことにばかりに使う悪戯者だったからだ。

 たとえば、仲の良かったとある神の妻を丸刈りにしてしまったり、その髪でカツラを作って変装したり。

 特にこの『変装』について彼は一級品の技を持っており、小狡い知恵と変装術で、ウォーデン老のいた世界は彼に散々弄ばれた。

 それでも、その小狡い知恵を生かしいくつかの役に立つ宝物を世界にもたらす事もあったので、一部では英雄視される事もあった。


 そんな彼の息子の一人がヴァナルガンドだ。

 ヴァナルガンドには弟と妹がいたが、彼を含めて3人とも怪物の姿であった為、母はショックで亡くなり、父は大いに荒れて度を越した悪戯、いや悪事を働き、虜囚の身となった。

 その後、父は一度逃げ出したが、追っ手と討たれ永い眠りについた。

 その追っ手が、ウォーデン老の息子であったそうな。


 さて、そうして遺された3人の兄弟妹は、つまり母も父もおらず、そして虐げられる怪物の姿であったから、そんな境遇でまともに育つわけもなかった。

 特に長兄であったヴァナルガンドは凶暴で狡猾で、すぐに追われる身となった。

 だが彼は怪物である。

 彼と追っ手である『かの世界』の神々は、何日もかけて壮絶な戦いを繰り広げる。

 そしてついに最後の日、追い詰めたヴァナルガンドを捕縛する為にやって来たウォーデン老とその息子が揃って襲い掛かった。

 ウォーデン老の息子とは、奇しくもヴァナルガンドの父を永の眠りにつかせた者でもあった。

 ここでも昼夜をかけて死闘が繰り広げられた。

 さすがの魔狼ヴァナルガンドも神々に追い回され、そして『戦の狼』などとも言われたウォーデン老との戦いには、覚悟せざるを得なかった。

 だが、怪物ヴァナルガンドは、最期の時の際に、幸運にも新たな力を知る。

 それは次元の扉をこじ開ける業だった。

 このままでは虜囚とされる、そう悟ったヴァナルガンドは、最後の力と命を賭して、その業を使い、そしてアルト達の住んでいた元の世界へと逃げ延びた。

 そこからは、以前にカリストが語った通りであり、ウォーデンもよく知らないようだった。



「え、『戦の狼』って、誰が?」

「ワシじゃワシ。これで若い頃はブイブイ言わしとったんじゃよ」

 話が終わり、アルトのツッコみにも涼しい顔のウォーデンだった。




 ちょうどその頃、当の魔狼は同島の北東にて身を伏せていた。

 周りには彼の眷属たる多くの狼達と、彼に力を与えられた人狼(ワーウルフ)の上位種、『ウルフロード』が侍る。

「ヴァナルガンド様が気にされていた老人が、冒険者を護衛に連れてこの国に向かっているようです」

 凶暴な性質とは裏腹に、穏やかな初老の人間の姿をとった『ウルフロード』が畏まって主たるヴァナルガンドへと言葉を届ける。

 丈の長い黒背広(スーツ)姿のその男は、まるで執事のようでもある。

「ギャリソンか。ふん、ウォーデンなどすでに物の数ではないわ。ヤツの力はあの戦いで殆ど奪ってやったのだ」

「左様でございますか」

 ヴァナルガンドが『かの世界』を脱する前のあの戦いは壮絶なものだった。

 互いに満身創痍で、ウォーデン老の息子の一人もヴァナルガンドが大半を食った。

 当のウォーデン老の半身も食ったが、それにより彼は新たな力を大量に得た。

 その一つが次元を超える業であり、世界を創造する業であった。

「だが、油断はならぬ。ヤツは『魔術と狡知の神』とも呼ばれているからな」

「はっ、ではこの先の行動も注視するようにしましょう」

「うむ任せたぞ。春だ。春まで時間を稼げれば、ヤツどころか、『かの世界』の神々が束になって掛かってきても怖るるに足らぬほどの力が手に入るのだ」

「『夕闇と暁が釣合う刻』ですな。お任せを」

 そう、命を受けて、ギャリソンと呼ばれた『ウルフロード』はその姿を消した。

 ヴァナルガンドは大きな頭をあげ、暗鬱な灰色の雲を見上げる。

「この世界をヤツの牢獄としてやろう」

 彼は呟き、大きな口でニヤリと笑った。

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