12任務は果たされた
前回までのあらすじ
タキシン王国王太子アムロドから、『ニューガルズ公国軍の後方かく乱』を命じられたアルト隊は、ニューガルズ公国に潜入した。
そしてアルト隊は、王太子アムロドの敵である王弟へ送られた援軍のための兵糧を、屁理屈込みで横取りすることに成功した。
兵糧はいたいけな公国民のために行商人が運ぶことになったが、公国宰相キャンベルは強硬手段として行商人から小麦を強制接収するように、『首都防衛連隊』に命ずる。
不幸にもその命令が回ってきてしまった公国軍ノイマン軍曹は、中隊を率いて首都を出立したアルト隊と行商人を追う。
対するアルト隊は首都近郊の林でこれを迎え撃つ。
策を使いノイマン中隊を分断することに成功したアルト隊は、ノイマン率いる小隊を直接迎え撃ち、そして勝利した。
ただ、その戦闘中の不幸によって、アルトは愛刀『胴田貫』を折ってしまった。
ニューガルズ公国首都近郊の林の中で、18名からなる公国兵が縛り上げられていた。
時間はすでに夕食時、首都の街壁内で暮らす人々の家ではほのかな明かりを囲んだ団欒が繰り広げられている事だろう。
対して縛られた公国兵、詳しく述べるなら『首都防衛連隊』所属のノイマン中隊は、林の中にキャンプを張った行商人の集団と、冒険者の1隊が、焚き火を囲んで楽しげに繰り広げている粗末な晩餐を遠目に覗っていた。
「ノイマン隊長、腹減りましたね」
「ああ、縛られていては携行食を採る事もできんしなぁ」
覗いつつも、そんな暢気な会話をしていられるのは、彼らを負かし捕らえた冒険者たちが、彼らを殺すつもりが無い、と言うことが判っていたからだ。
とは言え、このまま縛られていれば、遠からず干上がるか、凍えてしまうだろう。
何とかせねば、と思いつつも、すべてはあの冒険者たち、アルト隊の思惑に掛かっているのでどうにも出来ないノイマン軍曹であった。
そうして恨めしそうにしばし食事風景を眺めていたノイマン中隊の元に、1人の冒険者が寄って来た。
『漆黒の外套』に身を包んだ、眼鏡の青年魔道士だ。
どうも冒険者たちのリーダーは、『ミスリル銀の鎖帷子』を着込んだアルトという名の少年サムライのようだが、彼は今、ノイマン中隊とは焚き火を挟んで逆側の暗がりで、1人膝を抱えて放心しているようだった。
そして寄って来たカリストと言う名の青年魔道士は、このアルト隊の参謀的な役割を担う人物と見受けられた。
「飯、くれますかね?」
「どうだろうな。そうだといいが」
林の闇に溶け込んでしまいそうな漆黒の青年を眺めつつ小声でやり取りを交わすが、それに明確な解答を持つ者はノイマン小隊にはいなかった。
そして青年魔道士カリストが胡散臭くも爽やかな笑みを浮かべながら口を開く。
「さて公国兵の皆様方、不幸にも交戦してしまった訳ですが、私たちとあなた方は本当に敵同士でしょうか?」
唐突にその様な事を問われ、ノイマン中隊一同は面食らった。
「何を言っている? 我らの任務を妨害したのはお前らだろう。敵でなくてなんだと言うのだ」
彼らのこの度の任務は「行商人達から強制的に小麦を接収すること」であり、それを妨げるアルト隊の面々は「敵」だと思っていたからこその交戦だった。
だが、そんな根本を問われたのだ。困惑せずにはいられない。
「なるほど。今回の任務、と言うミクロの視点では確かに敵と言えるでしょうが、『ニューガルズ公国民と王家を守る』という公国軍本来の目的においてはどうでしょう?」
この問いには、困惑しつつも目を逸らす者が多数いた。
ノイマン軍曹もその1人だ。
公国宰相に就任した法王キャンベルの命に従うと言うのは、組織的には間違っているわけではない。
だが、公国民の食料となる小麦を強制接収し、また幼い女王を傀儡とさせている現状からして、『公国民と王家を守る』という任を果たしているとは言いがたい。
これは人により意見が食い違うだろうが、目を逸らした者たちはそう思った。
「ではここで問題です。現状に屈するのではなく未来志向で行きましょう。ニューガルズ公国を良き方へ進ませる為に何が必要でしょう?」
この問いは誰もが心に解答を秘めていた。だがそれは、平民や下級貴族が容易に口出しできるものではない。
ゆえにノイマン中隊の面々は気まずそうに視線を交し合った。
その上で、代表としてノイマン軍曹が答える。
「『ラ・ガイン教会』の影響排除だろう。しかし今や法王キャンベル卿が公国宰相だ。それに『教会警護隊』は150名からなる軍勢だぞ。簡単な事ではない」
これは何もノイマン中隊の心情を代弁しただけではない。ニューガルズ公国民の大多数がこの様な思いと諦めを胸に秘めているのだ。
下級貴族や平民にとって、「国を動かす」、「国体を改善する」などと言うのは想像もつかない話であり、それを考えるのは上級貴族や王、または公国宰相や大臣たちだ。
なので彼らの様な力と知恵無き民衆は、ただ暴風雨が過ぎ去るのを待つかのごとく、いつか来るかもしれない良き采配者の世を待つだけなのだ。
また『教会警護隊』を排除するには、公国軍の数も足りなかった。
ニューガルズ公国軍は騎士階級を含め300名の軍勢だ。
とは言え、その内訳は、各領地を治める貴族の領兵が大半を占める為、集団としてすぐに『教会警護隊』を上回る事ができる隊は存在しなかった。
「『教会警護隊』のうち、100名はタキシン王国王弟派の援軍として、すでに発っていると聞いています。それに残り50名も、全て首都にいる訳ではないでしょう?」
悲壮な返事に対するカリストの言葉はもっともだ。
『教会警護隊』150名とは言っても、すべてが首都大聖堂に詰めている訳ではなく、公国内の大きな教会がある都市に分散している。
実際、アルトたちがお尋ね者として追われていた時も、西の聖都レナスで18名の『教会警護隊』に囲まれた事もある。
しかも150名の内、100名がすでにニューガルズ公国内から発っているので、普段より圧倒的に数が少ない。
つまり首都ニューガルズ市においては、『首都防衛連隊』40名で当たれば排除も非現実的とは言えないだろう。
ただ、王直轄のはずの『首都防衛連隊』もまた、建前上、王の代弁者である宰相キャンベルの配下となっているのが現状なので、やはり事はそう簡単では無かった。
「ふむ」
カリストは、自らの発した問いですっかり黙ってしまったノイマン中隊を、思案顔でしばし眺める。
「では話題を少し変えましょう。キャンベル氏を公国宰相に任命したのは誰ですか?」
「それは女王陛下に決まっているだろう」
ニューガルズ公国において、宰相や各大臣の任命権は国王が握っている。
これはどの国でもたいていの場合は同じで、国政を少しでも知っている者には自明の理だった。
なのでノイマン軍曹は即答した。
「ではその女王陛下は、なぜ王となったのですか?」
カリストにとって、その即答は想定内だったのだろう。すぐに続けて次の問いが出た。今度の問いもまた簡単だったが、それゆえにノイマン軍曹は言葉に詰まった。
簡単すぎて、実は何かの引っ掛けがあるのかと警戒したからだ。
だが、そもそも中隊長を拝しているのも分不相応だと思う程度の自分では、下手に考えたとして大した答えが出ると思えなかったので、溜め息と共に言葉を吐き出した。
「前国王陛下が亡くなれば、継承権を持つ御方が戴冠するものだろう」
これもまた自明の理であった。
世襲である封建的な王制において、国王が引退、あるいは亡くなれば、その子が跡を継ぐ。これは国政を知らぬ民衆においても常識であった。
「ではここで少し難しい問題です。あなたの言う『前国王』は引退宣言を出しましたか? あるいは亡くなったのですか?」
「なっ」
この問いを聞き、ノイマン軍曹は絶句した。
いや、ノイマン軍曹だけではない。このやり取りに耳を傾けていた中隊員すべてが無言で固唾を呑んだ。
確かに前国王オットール陛下は『行方不明』であり、引退、死亡のどちらでもない。
ただ現在の幼き女王陛下を戴冠させたのは、黒い噂の絶えない法王キャンベルだったので、誰もが口に出さずとも『おそらくキャンベルの手の者が暗殺したのだろう』を思っていた。
だからこそ、女王陛下の即位に誰も異を唱えなかった、と言う側面もあった。
「まさか、オットール陛下は生きておいでなのか?」
ここに至り、今度はノイマン軍曹が震える唇で黒衣の青年魔道士に問いた。
「さて、もしそうなら、キャンベル氏の寄って立つ足元は、どうなんでしょうね?」
だが明言せず、カリストはいかにも楽しげに笑った。
カリストの言う通り、もし前国王オットールが生きていたならどうなるのか。ノイマン中隊の面々は即座に状況を思い描いた。
公国民の大多数が「オットール陛下は暗殺された」と思っていたが、その本人は実は暗殺の難を逃れ、どこかに緊急避難していたとする。
だとすると、現在玉座におわす女王陛下は王位に即する根拠を失う。なぜならオットールは「前」ではなく、そもそも現在もニューガルズ公国の王なのだ。
ならば幼き女王、いやただの王太子である王女はあくまで代理人であり、任命権など持たない。
つまりキャンベルの宰相という地位は砂上の楼閣どころか、蜃気楼でしかない。
さて、眠れる獅子と言われたオットール陛下が、ただ座してこの状況を見ているだろうか?
そして、ノイマン軍曹は強い視線を青年魔道士へ向けた。
また、この青年が男爵だと名乗ったことを思い出したのだ。
確かキヨタヒロム卿。
そうか、彼はオットール陛下の密命を帯びてこの地へ来たに違いない。
そのように考え至った。
「卿よ、この縄をほどいてくれ。俺は公国に忠誠を誓った身だ。陛下に従うあなたに剣を向けたことを謝罪し、改めて陛下に剣を捧げよう」
同じ様に考え至ったノイマン中隊の面々は、やはりノイマン軍曹に続き頭を垂れた。
カリストはその様子を満足そうに見渡してから、大きく頷いた。
「はい、よく出来ました」
少し離れた所で、そんなやり取りを見ていたのは白い法衣の乙女モルトと、酒樽音楽家レッドグースだった。
「キヨタって、どっちか言ったらキャンベル派のお人やなかったっけ?」
「まぁそうですな。そこは、空腹と不安で思考力が低下したところで誘導したカリスト殿のお手前、と言うことでしょうな」
「そんな上等なもんやろか」
はたして、この呟きのような会話を聞いた者はいなかった。
間接的にではあるがアルト隊に恭順を示したノイマン中隊は、早速と拘束を解かれ夕食にありついた。
そうして気持ちがほぐれると、各隊員からは次々と現政権への愚痴がまろび出た。
一応、公国男爵として彼らの矢面に立ったカリストと、年の功からか聞き上手な面を披露するレッドグースがこれに当たり、公国兵によるボヤキ大会は夜半まで続いた。
もちろん、モルトやマーベルは早々に逃げて、明日の朝には別れる予定の行商人たちに続いて就寝する。
まぁ、元々男性陣とはテントが別なので、特に差し支えは無かった。
差し支えがありそうなのは、同テントを使っているアルトだったが、彼は何も言わず黙々とテントを立てたかと思うと、黒猫のヤマトを抱えて毛布に包まった。
ヤマトは大層迷惑そうな表情だった。
翌早朝。
東の空が紫色になるより早く出立の準備を整えた女商人ベネッセは、未だ眠そうに目を擦るアルト隊の面々に別れを告げた。
「世話になったね」
そう、長いキセルを手に清々しい笑顔を浮かべるベネッセの後ろでは、次々と林の外へ向けて動き出す幾台もの馬車が通り過ぎる。
どの馬車の者たちも、笑顔でアルト隊の面々にへを振っては去ってゆく。
彼らはこれから公国各地にある村々へ、積荷の小麦を売り歩く旅に出るのだ。
「色々落ち着いたら、首都の小麦商組合を訪ねておくれよ。一杯、奢らせてもらうよ」
最後の馬車が過ぎ行ったのを見送ったベネッセは、地味な顔した下男が引いて来た馬に乗って、自らは行商人とは逆の方向へと去って行った。
それは首都ニューガルズ市の方角だ。
彼女は小さいながらも商会の頭目でもあるし、小麦商組合の幹部でもあるので、今回は行商に同行せず街で待機だそうだ。
行商人がすっかりいなくなると、今度はノイマン中隊がアルト隊の前にやって来た。
「では、我々はいかがしましょう?」
降伏し、生還する予定のニューガルズ公国王に従う事になったは良いが、かの公国王がいつ、どのように帰還するのかは聞いていない。
昨晩はすっかり愚痴に盛り上がってしまったから、詳しい話はまだなのだ。
「ふむ、どうしますかな? カリスト殿」
そもそも前に出るタイプではないレッドグースが、この中では身分的に最も高い公国男爵キヨタこと、黒衣の魔道士カリストを振り返る。
カリストは眼鏡をクイっと直しながら一瞬思案して口を開いた。
「ではノイマン軍曹達はこのまま何食わぬ顔で首都へ戻って下さい」
「ふむ、いざという時、すぐに城門を開く為か」
戻れ、と言われてノイマン軍曹はすぐに頷いてそう返した。
この状況で彼ら中隊が首都へ戻るなら、役割は王帰還の準備を整える事だろう。
現在、ノイマン中隊を除いた首都にいる戦力と言えば、『首都防衛連隊』が1個中隊約20名、それから『ラ・ガイン教会』の『教会警護隊』が2小隊12名、後はやはり『ラ・ガイン教会』所属の『聖職者』が数名、と言ったところだ。
帰還する王を迎えるのにこれらを蹴散らすには、ノイマン中隊だけでは数が圧倒的に足りない。
純粋戦闘力で上回るアルト隊を加えたとしても、攻城戦において攻撃側の数が少ないのでは如何ともし難い。
そこでノイマン中隊が敗北した事を隠して首都へ戻り、ひとまずいつも通りの任務を続ける。そしていざ、王の帰還となったら街門、城門を開き王を迎える、という寸法だ。
「そうですね。オットール陛下がスムーズに入城できるかは、あなた達の双肩にかかっています」
頷き、カリストは力強くノイマン軍曹の肩を叩いた。
そんな様子に、ノイマン軍曹だけでなく、中隊各位もまた受けた任の遂行を誓って大きく頷いた。
こうしてアルト隊は再び林から去る一団を見送った。
「良かったのですかな? 敵方に勘の良い者がいれば、彼らが犠牲になるやも知れませんぞ?」
「まぁ僕たちの任務は『ニューガルズ公国軍の後方かく乱』だからね。それはそれでいいかなー、って」
「なかなか黒いわ。カリストのあんちゃん」
「服も腹の中も真っ黒にゃ」
もちろん、そんな会話をノイマン中隊が知る由もない。
「で、ウチらはこの後、どーするん?」
林の中にポツンとアルト隊の面々が残され寂しくなった所で、モルトが一同に問いかけた。
「『ニューガルズ公国軍の後方かく乱』については、兵糧購入の邪魔と、『首都防衛連隊』所属中隊を離反させた事で十分な成果と言えるでしょうな。任務完了として、タキシン王国へ戻りますかな?」
モルトの問いを補足するように言葉を継いだレッドグースだったが、その言葉に異をとなえたのは意外にもマーベルだった。
「ダメにゃ」
「なぜですかな?」
「鹿15頭、狩って来るまで帰れないにゃ」
「ああ、それがあったね」
一瞬、首をかしげた一同だったが、すぐに思い至って手を叩いた。
鹿15頭とは、今回の仕事を手伝わせた『ゴブリン王』、ゴブライ・ゴブルリッヒ3世へ約束した報酬であった。
「ではどのように動くか。リーダーであるアルト君に決めてもら…、あれ、そう言えばアルト君は?」
と、ここでふと思い出したカリストが仲間を振り返る。朝からずっと我らがリーダーであるアルトの姿を見ていない。
「にゃ」
するとその問いに返事をしたのは、誰でもない彼の使い魔である黒猫だった。
『魔術師』の魔法により縁を結んだ使い魔は、主人の任意で感覚を共有する事ができる。
使い魔の見聞きしたものを、主人である『魔術師』が同様に見聞きする事ができるのだ。
だがこの時、カリストは使い魔のヤマトと感覚共有していなかったので、すぐ見つける事が出来なかった。
ただ何か予感があり、すぐに感覚共有しなかった。
はたして、黒猫ヤマトどこにいたかと言うと、野営地の隅で膝を抱えてただずんでいるアルトに、憮然とした表情で抱えられていた。
「慢心の反動にゃ?」
「いや、愛刀破損の影響でしょう」
ねこ耳童女とベルトポーチから半身を晒した薄茶色の宝珠によるやり取りであった。
そう、ノイマン軍曹たちとの戦闘の際、自信満々意気揚々と飛び出したは良いが、その直後に『致命的失敗』を発生させ、カッコ悪く転倒したばかりか、愛刀『胴田貫』を折ってしまったアルトだった。
「GM、武器の修理って可能かな?」
消沈しつつも、自分に向けられた声に気付いたアルトは、咄嗟に薄茶色の宝珠へと問いかける。
この世界を支配する森羅万象については、彼こそがこの中で最も詳しいのだ。
「今回の場合は、無理でしょうね」
我々の住む世界において、折れた日本刀の修理が可能か、と言われれば、それは可能であり、また不可能である。
これはどう言う訳かといえば、「飾りとして形を戻す」ことは可能であっても、「実用品としてはもはやどうにもならない」と言う意味だ。
刃が小さく欠けた場合などは、研いで欠け部分を削り取る事も可能だが、それでも元通りと言うわけではない。
そもそも、我らの住む世界以上に武器の破壊が少ない世界である。『致命的失敗』による『確定不運』で、『アイテム破壊』を引き当てない限りは壊れない。
なので修理に対する技術は圧倒的に低かった。
「やっぱダメかぁ」
顔を上げて一縷の望みに縋ったアルトは、再びヘナヘナと力なく突っ伏した。
「元通りは無理でも、方法が無いわけではないであります」
皆がアルトの落ち込み様に「どうしたものか」と思案する中、そう声を上げたのは、カリストの『外套』のポケットからひょっこり顔を出した人形サイズの少女、『人形姉妹』が四女、ティラミス嬢だった。
「最近見ない思ったら、そんなとこにおったんか」
「呼ばれないからあちこちで隠れて寝てたであります」
どうやらカリストの『外套』だけでなく、様々な隠れ場所があったらしい。
とにかく、そんなティラミスの言葉に希望を見出したアルトが、ギラついた目で小さな彼女を見た。
「どんな方法があるんだ?」
「昔、プレツエルがやってたでありますが、残った部分を削って小さな刀に仕立て直すであります」
プレツエルは彼女の姉に当たる『人形姉妹』が次女のことだ。
「ござる」が口癖の武人肌で、以前見えた時は長巻拵えの大太刀と巨大な『薙刀』を持っていたのを思い出す。
ただ、提案された方法は打刀サイズを小太刀や脇差、または小刀にすると言う、いわばリサイクルだったので、アルトはやっぱり消沈した。
「しゃーない、ベルにゃんが狩してる間、街まで新しい刀、買いに行こ。ウチが付き合ったるから」
何処までも沈み行くアルトに気をもんで、モルトは溜め息交じりにそう提案する。涙目ながらにアルトはそんな彼女を見上げ、無言で頷くのだった。
「ではワタクシはマーベル殿のお手伝いをしますかな。なに、ワタクシが身に着けている『盗賊』スキルを応用すれば、罠も作れますからな」
「ではその様にしようか」
「カーさんは何するにゃ?」
決定とばかりにカリストがまとめに入ると、すかさずマーベルが首を傾げる。
「僕? そうだな。ここで留守番しながら、『放蕩者たち』と何とか連絡取ってみるよ」
「そんなんできるん?」
その問いに、無言で黒猫ヤマトを掲げるカリストだった。
ヤマトの表情は、相変らずとても迷惑そうであった。




