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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#08_僕らの潜入生活

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121/208

08進め行商人群

前回のあらすじ

タキシン王国内乱に介入する為の兵糧を、レッドグースの策によりインターセプトされたニューガルズ公国宰相にして『ラ・ガイン教会』法王のキャンベルは、どうせ敵に渡るのなら、と、商人の倉庫から小麦を接収するように、治安維持に携わる『首都防衛連隊』へと命を下した。

が、『首都防衛連隊』所属小隊を率いて倉庫へ夜襲をかけたノイマン伍長は、アルト隊の活躍によって「盗賊一味」として突き出されるという憂き目にあった。

 ノイマン伍長率いる()()()を『首都防衛連隊』へと連行したアルトとモルトが戻ってくると、倉庫ではまだ夜明け前だと言うのに、大小様々な荷馬車へ小麦の袋を次々と載せているところだった。

 それぞれの荷馬車は小麦商組合に属する行商人たちのものであり、持ち主である行商人たちと、雇われた人足たちが忙しく行き交いしている。

「ずいぶん早くからやってんだな」

「『行商人の朝は早い』ちゅーやつ?」

 まさかこんな事になっているとは知らなかったので、アルトが物珍しそうに作業を眺めつつ呟けば、モルトも相槌を打ちながらそう返した。

 アルトたちに気付いてふらりと寄って来たのは、身体のラインが判るような色気のある服を着た女性だ。

 小麦商組合の幹部、女商人ベネッセである。

「もう行商シーズンも終わりかけだからね。急いで持って行ってやらないと、各地の寒村が飢えちまうよ」

 言われて見れば季節はもう冬。

 本来なら秋の収穫シーズンが終わればすぐに各地へ散っていた筈の行商人が、その商品である小麦と共に、未だ首都ニューガルズ市に止められているというのがすでに異常事態だ。

 それもこれも、小麦を買い占めようとしていたニューガルズ公国首脳のせいである。

 もちろん、現在の公国首脳陣と言えば、イコール『ラ・ガイン教会』首脳陣の事だ。

「それにあの兄さんたちが『早く行った方がいい』って急かすしね」

 そうベネッセは続けながら、倉庫の中二階で荷の積み込みを眺めている大小2名の男を指した。黒い『外套(マント)』を着たカリストと、酒樽髭紳士レッドグースだ。

「早く行った方がいい、って何でだろ」

「何でやろね?」

 先に述べられた「各地の人々が待っている」というのは良くわかる理由だったが、続いた言に思い当たらず、両名は顔を見合わせて首を傾げた。

 ただ、傾げていても解らないので、2人はすぐに訊ねようと中二階へ向かった。

「わ、なんだ」

 向かい、中二階へと続く階段を途中まで登った所で、アルトは何かに躓き声をあげた。まだ夜明け前で倉庫内の足元はかなり暗い。その中での想定外に、アルトの小さな心臓は縮み上がる思いだった。

「痛いにゃ」

 蹴飛ばされたのは、階段の途中で丸くなっていたねこ耳童女マーベルだった。

「おまえ、何やってんの?」

 ホッと胸を撫で下ろした後で、アルトは抗議じみた視線を向ける。

「夜通し警備してたにゃ。もうお(ねむ)にゃ」

 そう、今晩はかのノイマン小隊が来ると知っていたので、皆で待ち構えていたのだ。

 その襲撃も先ほど迎え撃ち、ノイマン小隊一同を「夜盗」と断じたまま官憲に突き出してきたところだ。

 徹夜なのはアルトたちも同じだったが、先の戦闘で身体が興奮状態のため、まだ眠気は襲ってこなかった。

「つーか、マーベルお前、猫だろ。夜行性じゃないのか?」

「猫じゃないにゃ」

 半分呆れた様子でアルトが言えば、今度はマーベルが抗議じみた半眼を向けながらそうのたまった。

 実際の所、草原の妖精族ケットシーは、ねこ耳ねこ尻尾を備えた容姿をしているが、獣としての猫の特性を持っているわけではない。

 なので夜は人間と同じ様に眠るし、夜目も人並みにしか利かない。

「うん、しゃーないわな。やけど、もうちょっと向こうで寝ようなー」

「そうするにゃ」

 それはともかく、はからずもアルトに蹴られたのはそこそこ堪えた様で、マーベルはモルトの言葉に素直に従って寝床を変える事にした。

 そうして3人は連れ立って中二階へとあがり、ここでマーベルとは別れてオッサンコンビへと歩み寄る。

「僕はまだ20代だよ。オッサンじゃないよ」

 歩み寄るアルトたちの視線に何か感じたのか、カリストは開口一番にそう言ったのだった。


「で、なして急ぎ出荷する必要があるん?」

「ふむ」

 合流した所で、モルトが早速疑問を口にすると、どう説明しようか、という素振りでカリストとレッドグースは顎を撫でた。

「まぁ、つまりですな、少人数で失敗したら、今度は大人数でやって来る。ということですかな?」

「さすがに正規の手続きを取った上で、大人数で昼間の倉庫を包囲されたら、さっきの『盗賊め』みたいな誤魔化しは利かないからね」

 アルトとモルトは合点が行ったと頷く。

「なるほど。出来れば大人数相手の立ち回りなんて、したくないですね」

 ところが、アルトのこの言葉にカリストは静かに首を振る。

「いや、『首都防衛連隊』ごときが多少増えたって、そんなのは問題じゃないんだ」

「え?」

 予想外の返答に、アルトは思わず振り返る。

「まぁ前衛に立つアルト君は色々面倒だろうけど、『首都防衛連隊』程度が相手なら、分断さえしてしまえば時間がかかるけど押し返すことは出来ると思うよ。ただ、目撃者と相手のバックがね」

「なーる。堂々と国家権力笠に着て来られたら、完全に国家の敵。指名手配再びやね」

 その、特に最後の一言で、アルトの脳裏に嫌な記憶が蘇った。

 この世界に来た最初の頃、彼らは『ラ・ガイン教会』の新法王キャンベルの思惑に巻き込まれ、まんまと前法王ランドン暗殺者の濡れ衣を着せられた。

 結局は険しい道を踏み越えレギ帝国へ逃げ込んだことと、相手側が諦めた事で有耶無耶になった訳だが、ここで新たに手配されては元の木阿弥だ。

 あれから強くなり、多少の雑兵には怯まなくなったが、それでもまた追われる生活をするのは、気が休まらないし避けたいものだ。

 まぁ今の潜伏暗躍生活も似たようなものだが、それはそれ、なのだ。

 さっきはまだ夜だったし、相手も『盗賊』のレッテルを甘んじて受けたので、表立って批難される事はないだろう。

 だが、真昼間に市街で公国兵相手に立ち回れば、もうそれは公然とした、押しも推されぬ犯罪者である。

 その事態は、確かに避けねばならない。

 アルトはそう改めて、深く頷いた。

「せやけど、ほんなら街の外ならええの?」

 ふと、そこでモルトが素朴な疑問を投げかける。

 確かに、結局小麦に追っ手がかかるなら、外でも内でも公国兵を相手にするのは同じだろう。

 だがこれにはレッドグースが悪そうなニヤケ顔を晒した。

「なーに、市民の目が無いのなら、なんとでもなりますな」

 アルトたちは、その笑顔に少し嫌そうな半眼を向けた。


 さて、夜が明けるとニューガルズ市から西へ向かう大街道に繋がる市門が開く。

 開門はいつも日の出と共に成され、日の入りと共に閉門する。これはいつも変わらぬ仕儀であるが、開門時に出て行く様な者は居ても日に数人と言ったところだ。

 だがこの日は違った。

 夜明け前より準備していた小麦行商人の馬車が大挙して押し寄せたのだ。

 これにはさすがに、当番の門兵たちはギョッとした。

「こ、これはいったい何事だ?」

 当番兵のリーダーらしき一人が、行商馬車群の先頭にいた女商人の馬車を止め、慌てた様子で誰何する。

 女商人はもちろん、小麦商組合幹部のベネッセだ。

 ベネッセは慣れた様子で馬車を降りると、商売用の笑顔で兵士に答える。

「見ての通り行商に出るのよ。積荷は小麦だから早く調べてくれると助かるわ」

 いわれて、兵長はすぐに配下の者を積荷確認に回し、彼自身はそのままベネッセに問いを続ける。

「行商人が出て行くのも、この時間に出発するのも珍しくはないが、なんだってこんなたくさん一斉に出て行くんだ?」

 ベネッセは特に躊躇うでもなく、これに答える。

「門兵ならご存知の通り、もう行商シーズンには遅い時期だからね。その分、急いでいるのさ」

 この返答に兵長は納得顔で頷き、続けて首を傾げた。

「いや今の事情は判ったが、ではなぜこんな時期になったんだ?」

 これは任務とは違い、彼の興味から来る問いだった。ベネッセもそれは判っており、雑談に興じるかのごとく、おどけた素振りでウンザリとした表情を晒した。

「なに、宰相閣下のおかげさね」

「ああ」

 兵長もこの言葉で全て判ったと、言いたげに、溜め息をついた。おそらく彼らも、かの聖職者どもから難題を押し付けられているのだろう。

 かくしてベネッセ率いる行商人馬車群は、短い積荷検査を終えて無事出立した。

「えらく簡単だったな。もっと引き止められたり悶着あるかと思ったけど」

 市門からある程度遠ざかったところで、ベネッセの馬車の荷台に乗っていたアルトが御者台に顔を出す。

 御者台で自ら手綱を取っていたベネッセは、少し嫌味な笑いを浮かべながら応える。

「公国のあちこちに手が回ってないのさ。これが新宰相閣下の政治手腕って所ね」

 つまり、キャンベル新法王は、政治家としては無能だ、と暗に言っているのだ。

「『世界征服したは良いが、さてどうしよう』ってヤツですな」

「どういうことにゃ?」

 そんな様子に、レッドグースが冗談じみた表情で相槌を打つと、続いてマーベルが首を傾げた。

「よく物語で悪の秘密結社が世界征服を目標に掲げるけど、それ自体が目標で、成した後のビジョンが無いって事さ」

 レッドグースに代わりカリストがそう解説したが、マーベルはまだ良く解らなかったのかより深く首を傾げた。

 ところで、この大街道はといえばニューガルズ公国西端の聖都レナスに続く道であり、以前、アルトたちがニューガルズ市から逃げ出した際に通った道だ。

 なのでこのまま西へひたすら進めば聖都レナスに着く訳だが、馬車群一行はしばらく進んだ後、揃って北西へ向けて街道を逸れた。

 そもそも小麦を運ぶ先の寒村がどこにあるかと言うと、この街道の北側に広く分布している。

 そのため、いつもなら街道を進みつつ、各馬車が各目的地に向けて、バラバラと逸れて行くのが常道である。

 だが今回に限っては揃って同じ様に逸れた。

 全て、女商人ベネッセの、ひいてはアルト隊参謀部と化している、レッドグース・カリストコンビによる指示だった。



「接収に失敗しただと?」

「は、その、商人度どもも警戒していたようで、奴らの雇った冒険者に撃退されたそうです」

 『ラ・ガイン教会』本部大聖堂にある、まるで玉座の間と見紛うような絢爛な部屋で、兵糧調達を任されていた初老の司教は、唯一の上長である法王キャンベルへ事の次第を報告した。

 とは言え、現場に自ら赴いていたわけではないので全て伝聞だ。

 この報告を聞いたキャンベル猊下は、すぐに大きな溜め息をついて、初老の司教を怒鳴りつける。

「馬鹿者。失敗したで済む問題ではないわ。すぐ、もう一度、接収に向かわせろ」

 キャンベルは前法王ランドンとは違い、気力に満ち溢れたギラギラとした野望の男だ。その勢いで怒鳴られれば、初老の司教では縮こまるしかない。が、それでも再び失敗すれば、良くて降格、悪ければ処分されかねないので、声を絞り出す。

「し、しかし」

「なんだ?」

「そ、そう言えば気になる名を耳にしました」

 少しでも話題を逸らすべきだと判断した初老の司教は、取り急ぎ、と、思い出したことを述べることにした。

「なんだ勿体振りおって」

 幾らか苛立ち混じりに身を乗り出した法王キャンベルに、初老の司教は「釣れた」と心中でガッツポーズだ。

 そしてせっかく食いついた話題を腐らせる前にと、司教はすぐ口を開く。

「倉庫で防衛隊員を撃退した冒険者の一人が『キヨタ男爵』と名乗ったそうです」

「なに、キヨタだと?」

 その名を聞き、法王キャンベルは驚きと少しばかりの怒りをはらんだ表情を晒す。ただその怒りが自分に向いていない事を感じ、初老の司教はホッと胸を撫で下ろした。

 キヨタ男爵。キヨタヒロム。

 それは日本という、こことは違う世界において『メリクルリングRPG』というテーブルトークRPGをデザインした男であり、この世界の創造主・ヴァナルガンドに、『メリクルリングRPG』によく似た歪な世界を創造するよう吹き込んだ者である。

 しばらく前に、アルト隊の『魔術師(メイジ)』カリストの身体を乗っ取っていた、精神生命体の事でもある。

 彼はすでにこの世にいないが、カリストの身体を使っていた頃に、キャンベルをそそのかして法王に押し上げる手伝いなどもしていた。

「あの妖しい黒魔道士が生きておったのか。以前は役に立つヤツだと重用してやったが、いったい何のつもりか」

「さぁ、そこまでは」

 思わぬところで出て来た過去の名前で、その力を借りて今の地位に座った法王キャンベルとしては居心地の悪い気分になった。

 が、狂人の思惑など考えても仕方が無い、と思い直して頭を振った。

「気に止めておこう。さて、商人どもはどうしておる。再度接収に向かい、何とかなりそうか?」

 さっきに比べれば幾分落ち着いた様子でそう切り出した法王キャンベルに、初老の司教は応えて口を開いた。

 これなら「失敗したら死ね」などとは言われないだろう。

「商人どもも再襲撃を予見していたようで、すでに街道へと出てしまいました」

「なん、だと?」

 いっそ大軍で倉庫を包囲してしまえばよい、と思っていた法王キャンベルだったが、商人たちの、予想外の逃げ足ぶりに、一瞬、目を点にした。

「しかし、まだ遠くへ行ったわけではあるまい?」

 法王キャンベルは思案するような顔になり、解を導き出す為に必要な情報を問う。

 すると初老の司教は一転、得意気な表情に変わった。

「は、密偵に確認しましたところ、行商人どもは市門から2時間の場所で集結しているようです」

「ほほう、密偵か。よくやった」

「ははぁ」

 自分では思いつきもしなかったキャンベルは、密偵を紛れ込ませるという簡単な腹芸にたいそう感心した。初老の司教も司教で、恭しく頭を下げながらも鼻穴を膨らます。

「ではすぐに『首都防衛連隊』を向かわせろ。もちろん、先の接収隊より多くの者を送るのだぞ」

「猊下の仰せのままに」

 先の失敗から幾分『首都防衛連隊』に失望した法王キャンベルは、いかにも子供に言い聞かせるかの風に言い含め、初老の司教は再び深々と頭を下げた。



 未明に夜盗として突き出された後、待機を命ぜられていたノイマン伍長は、朝食の時間をしばらくすぎた頃に再び隊長室に呼ばれた。

「よく来たノイマン()()。座りたまえ」

 すぐに応接テーブルの席を勧められ、素直に従おうと歩を進めたところで気付いた。ノイマンの公国軍における階級は伍長のはずであると。

 ノイマン伍長改め、ノイマン軍曹の脳裏は、嫌な予感に占められた。

 軍曹といえば2階級の特進である。

 任務に失敗したというのに、名誉ある殉職を遂げた兵士並みの昇進では、単に「死地に向かわせる為の昇進前渡し」を疑いたくなるのも当然だった。

「いったい何処に2階級特進に相応しい前線があるのでしょう?」

 とは言え、とノイマン軍曹は疑問をすぐさま口にする。

 現状、タキシン王国内乱への派兵予定はあるが、そちらの派遣軍はすでに編成済みで、『首都防衛連隊』はその任からは外されていた。

 つまりそれ以外の戦場が待っていると思ったのだ。

「勘違いするな。人手不足でやむを得ん措置だ。代わりに当分は手柄を立てても昇進はないぞ」

 隊長のそんな言葉に、幾分、嫌な予感を晴れさせたノイマン軍曹だったが、それはそれとして、「人手不足」とやらが新たに気がかりとなった。

 先にも述べた通り、遠征派兵軍からは除外された『首都防衛連隊』なので、人員はそのままそっくり残っている筈であるし、昨日今日で大事件が起きたとも聞いていない。

 なら、今、起きているのだろうか?

 だがノイマン軍曹の予想とは外れた返答が、隊長の口から漏れ出した。

「今朝、ヤーコブ少尉が軍を辞めた。田舎に帰るそうだ」

「は?」

 ヤーコブ少尉とは、『首都防衛連隊』に属する中隊長の1人である。

 ここで簡単に『首都防衛連隊』の組織を説明しておこう。

 まずノイマンが率いていた様な6人の「小隊」が3隊束ねられ「中隊」となる。

 この「中隊」が2隊集まり「連隊」と呼ばれる。

 つまり先に「辞めた」と話題に出たヤーコブ少尉は、『首都防衛連隊』に属する2人の中隊長の1人だったわけだ。

「ヤーコブの野郎に先を越された!」

 思わず、ノイマン軍曹は声をあげてしまった。

 ノイマン軍曹も、ここ最近の宰相閣下決済の任務にはホトホト嫌気が差していたので、そろそろ辞めて、男爵である父の領地に引き篭もろうかと迷っていた矢先の話題だ。

 が、隊長は何も言わずただ頷くだけだった。彼にも思い当たるものがあるのだろう。

「そう言うわけで、ノイマン軍曹にはヤーコブ少尉の後任となってもらう」

「そんな」

 酷く落胆して、思わず復唱を忘れたノイマン軍曹に、無情にも隊長は再び繰り返す。

「ノイマン軍曹、ヤーコブ少尉の後を継ぎ、中隊長の任に当たれ」

「は、ヤーコブ少尉の後を継ぎ、中隊長の任に当たります」

 仕方なく、ヤケクソ気味に復唱したノイマン軍曹に、さらに追い討ちがかかる。

「続けて命ずる。ノイマン軍曹は中隊を率いて、市外に脱した行商人連中からの小麦接収に向かえ」

 さすがに、ノイマン伍長はその場で膝と両手をついて項垂れた。



 時を同じくして、列を成す行商隊から独り離れた黒魔道士カリストは、緒元魔法『パリオート』でひとっ飛びし、とある小屋でとある人物に会っていた。

「…という訳で、この仕事を頼むよ」

 暗がりでニヤリと笑ったその人物は、その胸をドンと叩いて応える。

 スラスラと人間社会で普通に使われるメリクル語で話すカリストだが、相対する小柄な人物の口から出るのは妖魔語だった。

「任せるゴブ。報酬分はゴブライ・ゴブルリッヒ3世の名の下に、キッチリ働くゴブ」




 5レベル緒元魔法の一つ『インテルプレス』。

 この魔法を使用すると、習得していない言語も自動通訳され会話する事ができる。

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