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第3章75話:光の槍

俺は、倒れたアレクシアを静かに見下ろす。


「アレクシア様が……負けた……!?」


と男性騎士が驚きの声をあげた。


アレクシアの敗北。


動揺する兵士も多いようだ。


あちこちでどよめきが走っている。


俺は告げた。


「実力差は十分、理解できただろう?」


さらに続ける。


「お前たちでは俺に勝てん。死にたくなければ、降伏しろ」


神殿騎士団の兵士たちは、何も言い返してこない。


数の上では騎士団のほうが圧倒的に多い。


こちらは多勢に無勢。


しかし、たとえ俺が一人であっても、簡単に制圧できる相手ではないと理解しただろう。


俺に攻撃を仕掛けてくる者は、いなくなっていた。


――――ただ一人を除いて。


「……む?」


俺は胸騒むなさわぎを覚える。


総毛立そうけだつような……


全身の細胞が警戒を訴えてくるような、激しい焦燥感しょうそうかんが這い上がってくる。


次の瞬間。


視界の端で、光が弾けた。


一本の光の槍。


聖なる光をまとった黄金の投槍ジャベリンが、俺に向かって、矢のごとき速度で迫っていた。


「―――――――!!」


俺はミスリルソードで慌てて防御をする。


直後、ミスリルソードの腹に、光のジャベリンが直撃した。


激突の衝撃で凄まじい風圧が発生し、砂塵さじんが舞う。


サイコキネシスで強化したミスリルソード。


しかし、光のジャベリンに込められた魔力は凄まじく、ミスリルソードでは防ぐことはできない。


ミスリルソードにヒビが入り始める。


「なんだと!?」


俺は驚愕の声を上げる。


そして、いよいよミスリルソードの耐久が限界を迎え……


無残にも打ち砕かれた。


「くっ!!」


俺は慌ててジャベリンの軌道から逃れるように身をそらした。


間一髪かんいっぱつのところで避けることに成功するも、ジャベリンの余波たる聖なるオーラが、俺の身体にダメージを与える。


熱風を浴びせられたような痛みだ。


サイコキネシスの防護ぼうごですら、シャットアウトできなかった光の攻撃。


こんな強力な一撃を放つことができるのは、一人しかいない。


「精霊、ネア」


俺は、その名を口にする。


―――――光のオーブが、いた。


その光が、少しずつ形象けいしょうをなしていく。


ややあって、光のオーブは、女の姿へとへんげした。


身長165センチほどの女。


緑のロングヘア。


吊り目ながら、どこか物憂ものうげな印象を覚えさせる黄金の瞳。


すそが破れたボロのような衣服を身にまとっている。


しかし、もちろんそれはボロではなく、神聖な素材で作られていることがわかるものだった。


なお、靴は履いておらず、裸足はだしである。



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