第3章70話-2:精霊の命令
アレクシアは困惑しながら尋ねた。
「い、いったいどうして、そのように思われるのでしょうか」
「精霊の直感的なものだから、あなたに説明してもわからないわよ」
「ですが、アンリは――――」
「さきほどから、私の意に反する受け答えばかりね。あなたは神殿国の住人。ならば、精霊である私の指示にしたがっていればいいのよ」
冷たく言い放った精霊ネア。
次の瞬間。
光のオーブから、糸のような細い光芒が放たれる。
その光芒はアレクシアの額に突き刺さるように命中する。
アレクシアが目を見開き、やがて、目がうつろになっていく。
「もう一度言うわよ。アンリを討ちなさい」
「……はい」
とアレクシアが突然、ネアに対する反論をやめて、肯定しはじめた。
まるで自分の意志とは思えない、気迫の失せた声音だ。
ふむ、なるほど。
(洗脳の能力か……)
さきほど放たれた光芒。
あれによって、アレクシアが意志を喪失し、ネアの操り人形になったのだと、俺は推察した。
さらに精霊が宣言する。
『聞きなさい。神殿騎士団の皆々《みなみな》』
決して張り上げた大声ではないのに、遠くまで響き渡るような、浸透していく声の波。
それは、俺やアレクシアに向かって放たれた言葉ではなく、神殿騎士団に向けてのものだった。
精霊の声が命じる。
『私はネア。神殿国を治める精霊よ』
次の瞬間。
突如、アレクシアが動き始め、俺を蹴り飛ばしてきた。
「む……ッ」
俺は防御が遅れ、数十メートルほど吹っ飛ばされる。
雑木林から弾き出され、コルデリオ平原へと躍り出てしまう。
『ここに、神殿騎士団へと命を下す――――アンリをただちに討伐しなさい』
そう、精霊が命ずる。




