第3章68話-2:待ち構える者
「待て!」
と、そのとき女の声が挙がった。
声のしたほうに視線をやると、そこにいたのはアレクシアであった。
どうやら、俺を討伐する部隊に参加していたようだ。
アレクシアが前に出てくる。
「コーヘイ……。貴殿が、アンリだと? いったいどういうことだ?」
アレクシアは、信じられないような顔をしていた。
俺は答えた。
「どうもこうもない。俺がアンリだ。コーヘイというのは、昔に使っていた名だ」
「馬鹿な……」
アレクシアは唖然としている。
そのとき、騎士が尋ねた。
「アレクシア様。アンリとお知り合いなのですか?」
「……ああ」
とアレクシアはうなずく。
さらにアレクシアは言った。
「すまない。彼と二人きりで話したい。少々、時間をいただけないだろうか?」
「し、しかし……」
「頼む」
とアレクシアが騎士に懇願した。
騎士をたじろぎ、やがて、うなずく。
「わ、わかりました。しかし、相手はアンリです。お気をつけて」
「ああ」
騎士と話が終わったアレクシアが、こちらを向く。
彼女は告げた。
「すまない。コーヘイ……いや、アンリ。少し話そう」
「……いいだろう」
俺は肯定する。
そして、兵士たちとは少し離れた場所にある雑木林に、アレクシアと二人で入った。




